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後日譚 第76話


 ヘスターの案内の下、人気のない道を選んで進むこと約半日。

 ここまでは誰とも出会うことなく、王都へ向けて進むことが出来ている。


 ……が、人気のない=魔物が多いということでもあり、予想以上に魔物と接敵しているため進み具合でいうと過去最低。

 決して苦戦を強いられている訳ではないが、それでも一々戦わないといけないとなると時間を食ってしまう。


「ちゃっちい魔物が多すぎるだろ! スノーが積極的に倒してくれてるけど、ダンジョンよりも接敵している気がする!」

「そういう道を選んでいるからな。何より、これだけ多い魔物よりも人間の方が警戒しないといけないのが意外と辛い」

「人とは出会ったら終わりですもんね。止まらずに進むことはできていますが、半日かけて普通のルートの二時間分くらいしか進めていませんし」


 順調に進めているのに、この進行速度。

 過去一で大変な旅になりそうな予感がプンプンしている。


 前も追われる身ではあったけど、顔を指されるような感じではなかったからな。

 今はイバンがとにかく目立ちまくる指名手配犯のような感じのため、必死に隠しながら進まないといけない。


「こういう時にイバンの背中に乗って、一気に王都まで行けたらいいんだけどな!」

「それは無理って分かってるだろ。何なら、人一人も乗せられないみたいだからな」

「見た目だけなら全員運べそうなのに! 見掛け倒しすぎる!」

「……ぐるる」


 文句を言われているのが分かったのか、ラルフに対して少し威嚇するように喉を鳴らしたイバン。

 勝手に期待されて、好き勝手言われているのだから怒るのも無理はない。


 ……が、人一人も運べないのはラルフの言う通り、ちょっと見かけ倒しすぎたな。

 イバン自体が重く、そもそもイバンだけでも長時間空を飛ぶことができない。


 そこに人一人分の重さが加わると、バランスを崩して飛べすらしなくなってしまうらしい。

 まぁ折角、ドラゴンを仲間にしたのに空を飛べないというのは考えもののため、いずれゴーレムの爺さんに協力してもらって、人を乗せて空を飛べるようにする計画を密かに企んでいるのだが……今はまだ心の内に秘めておく。


「まぁ一人でも運べるのなら、先にイバンだけを王都に連れていくこともできたんだけどな」

「ラルフもクリスさんも、どうにもならないことを話すのは止めて、とにかく足を動かしましょう。地図を見る限りでは村までもう少しかかりますので、少しペースを上げないといけません」


 ヘスターに促されるまま、進むペースを上げていく。

 正直、この山道の先に村があるようには思えないのだが、ヘスターの言葉を信じて進むしか選択肢はない。


 それから更に山道を進んでいき、日が暮れ始めてきたころ。

 前方に村のようなものが見えてきた。


「あっ、見えてきました。あそこが今回の目的地の村です」

「本当にあったのか! 日が完全に暮れる前に見つけられて良かった!」

「ちなみに泊まれはしないぞ。イバンが村の中に入れないからな」

「……えっ? イバンはお留守番で、俺達は村に泊まるんじゃないのか?」

「流石にずっと留守番じゃ可哀想だろ」

「俺達が野宿をするのも可哀想だって!」


 ゴツゴツとした山道だし、ラルフが野宿したくない気持ちも分かるが、ここは一緒に寝泊まりする。

 まだ指輪の力で従えさせている節があるし、スノーのようにちゃんと親交も深めたいしな。


「王都までの辛抱だ。お風呂とかは村にあれば借りよう」

「うわー、マジなのかよ! 野宿だと思っていなかった!」

「アウッ!」


 絶望した様子のラルフを、スノーが体を寄せて慰めている。

 めんどうくさいラルフの相手はスノーに任せておいて、早いところ村に行こう。


 できれば食料の調達とお風呂を借りたい。

 そんな願いを込めながら、見えた村に向かって歩いていく。


「よかった。廃村ではなさそうですね」

「だな。明かりが見える」


 日が暮れてきたこともあり、村に火が灯ったのが見えて一安心。

 こんな山の中にある村とは思えないほど、結構広い村のようだし、問題なく食料の調達はできそうだ。


 特に身体検査なんかを行われることもなく村の中に入った俺達は、まずは道具屋から探す。

 広いだけでなく意外としっかりとした村のようで、道具屋だけでなく、宿屋に武器屋と多種多様な店がある。


 エデストルが近いこともあって、俺達のような冒険者が結構立ち寄るのだろう。

 村民ではないのに変な目で見られることもなかったし、何事もなく道具屋まで来ることができた。


「おっ、いらっしゃい。冒険者さんか?」

「ああ、そうだ。実は食料が欲しくて尋ねてきたんだが、売って貰えることはできるか?」

「もちろん。イノシシ肉とかのジビエになるけど大丈夫か?」

「ああ。ありがたい」


 俺は早速交渉を行い、イノシシ二頭分の肉を購入させてもらった。

 値段も比較的リーズナブルで、良い買い物ができたと思う。


 あと道具屋の店主の話によれば、風呂は宿屋に行けば借りることができるらしい。

 食料に加えて風呂の確保もできたと言っていいだろうし、目的は達成といえる。

 後はラルフを呼んできて、風呂だけ入らせてもらい――みんなで野宿だな。




書籍第二巻、コミック第二巻が発売されております!

よろしければ手に取って頂けたら幸いです。

それからカドコミ(旧コミックウォーカー)にてコミカライズの連載されておりますので、よろしければお読み頂ければ幸いです!

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― 新着の感想 ―
ラルフ、空気読めないのは元からだけど、段々性格自体も悪くなってる
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