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後日譚 第67話


 俺達が近づいたことで、眠っていたアイスワイバーンは目を覚ました。

 伸びをするかのように氷を纏っている翼を羽ばたかせ、俺達を睨み付けると咆哮を上げた。


 ドラゴン種の中では最小の部類に入るだろうが、それでも腹の底が震えるほどの音量。

 この咆哮一発で生物としての負けを認めてしまい、戦闘前から戦意喪失してしまうことも多々あるようなのだが……。


 俺はもちろんのこと、ラルフもへスターもスノーも一切怯えている様子はない。

 修羅場を潜ってきた――というよりも、頭の中が従魔の指輪のことでいっぱいというのが大きそうなのが少し面白いな。


「流石はフロアボスだな! めちゃくちゃかっこいい!」

「背中にも乗せてくれそうですし、アイスワイバーンを従魔にする方向で動く……で問題ないですよね?」

「ああ、その方向で戦っていこう」


 背中に乗るには少々冷たそうだし、纏っている氷のせいで乗れないまであるが、従魔にするという目的は変えずにいく。

 まずはこれまでと同じように、スノーにアイスワイバーンの相手を務めてもらおう。


 四十一階層からスノーの負担が大きいが、アイスワイバーンを一人で相手取れるのは、俺かスノーのみ。

 防御を徹底するだけなら、ラルフもへスターもやれはするだろうけどな。


「スノー、とにかく翻弄してくれ。危ないと感じたらすぐにサポートをするから心配はいらない」

「アウッ!」


 やる気満々な様子で返事をしたスノーは、いきなりアイスワイバーンに突っ込んでいった。

 アイスワイバーンも近づいてくるスノーに対し、氷結ブレスで攻撃してきたのだが、スノーはそのブレス攻撃を楽々とかわしながら、胴体部分をいとも容易く爪で切り裂いた。


 その初撃でアイスワイバーンのヘイトはスノーに向き、そしてそんなスノーは冷静に俺が指示した通り、怒り狂っているアイスワイバーンの攻撃を嘲笑うかのようにいなしている。

 完全に魔物としてスノーの方が格上だということは分かったため、俺達は従魔の指輪のことだけを考えて良さそうだ。


「やっぱりスノーって凄いな! フロアボスを一匹だけで対応しているぞ!」

「かっこいいし、可愛いし、強いって……スノーは最強ですね」

「だな。そんなスノーに負担をかけすぎないためにも、さっさと従魔の指輪を試そう」

「まずは何からやってみる? 指輪を直接触れるとか?」

「まず思いつくのはそれだな。そんな簡単に従魔にできるとは思えないけど、指にはめたこの指輪を当ててくる」

「クリス、任せた!」

「魔法でのサポートはします」


 俺は従魔の指輪を人差し指にはめて、アイスワイバーンの下に一気に近づく。

 攻撃の当たらないスノーに夢中になっているため、近づく俺には一切気づいていない。


 【隠密】と【瞬足】のスキルを発動させ、気づかれないように懐に潜り込んだ俺は、アイスワイバーンの足に指輪を当てた。

 しっかりと触れさせたはずだが、アイスワイバーンの動きが止まることはなく、スノーに攻撃し続けている。


 念のため、胴体、翼、尻尾。

 最後は顔面をぶん殴るようにして当てたのだが、アイスワイバーンを従魔にすることはできなかった。


 ダメージを与えていないとはいえ、俺にも意識が向き始めたし、ここは一旦後方へと戻ろう。

 スノーの攻撃、それからへスターの魔法が放たれている内に俺は後ろに退いた。


「色々な当て方を試したが駄目だった」

「やっぱりそんな単純じゃないよなぁ! なら、魔物に指輪をはめさせるとか、指輪を飲み込ませるとかか?」

「それはないだろ。完全に人形の指輪だし、その形式じゃ誰に付き従うのか分からないしな」

「それでしたら、状態異常にさせるとかですかね? 眠り、麻痺、毒、幻惑、怒り――とかの状態異常にさせてから指輪を当てるとかどうですか?

「その可能性はあるが、状態異常にさせるのはハードルが高いな。俺が持っている毒草を食べさせれば何かしらの状態異常にはなると思うが……アイスワイバーンはブレス攻撃を持っているからな」


 食べさせるというのはほぼ不可能と考えるべき。

 どうしても状態異常にさせるというなら、一度出直し、アイスワイバーンを状態異常にさせるためのアイテムを作り出すしかない。


 そこまでやった上で、従魔にできない可能性は大いにあるし、そもそもフロアボスを従魔にできるのかどうかの疑問もまだ払拭できていない。

 色々なことを考えても、専用のアイテムを作成するというのはなしだな。


「状態異常にさせるのは難しそうですね」

「一応【毒液】のスキルを持っているから、毒状態にはできる可能性はあるけどな」

「いや、状態異常が条件の時は諦めようぜ! ということで、体力を削ってから指輪を試そう! で、それで駄目だったらフロアボスは従魔にできないって割りきればいいでしょ!」

「……うーん。仕方ないが、そう割り切るのが正しいな。弱らせることに注力するとしようか」


 色々と考えたが相手が相手。

 ラルフの言う通り、割り切って対処するのが正解だろう。


 もし弱らせても従魔にできなかった時は、従魔にする条件がかなり複雑か……当初から考えていた通りフロアボスは従魔にできないのだろう。

 そうなってくると、他の魔物で試せば良かったと思い始めてしまっているが、まだ従魔にできなかった訳ではない。

 集中し直し、アイスワイバーンを弱らせることだけを考えることにした。



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よろしければ手に取って頂けたら幸いです。

それからカドコミ(旧コミックウォーカー)にてコミカライズの連載されておりますので、よろしければお読み頂ければ幸いです!

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