後日譚 第66話
転生石から四十一階層へと飛び、俺達は従魔の指輪を持って探索を開始した。
宝箱も忘れずに探しつつ、従魔にしたい魔物をメインに探していく。
「どんな魔物がいいんだろうな? 指輪が使いきりなら、かっこいい魔物がいいけど!」
「私は可愛い魔物がいいですね。この雪山エリアで遭遇した魔物ですと……スノーラビットとか従魔にしてみたいです」
「スノーラビットよりブリザードタートルの方がいいだろ! 強いし、甲羅の氷がかっこいいし! クリスは何の魔物がいいと思ってるんだ?」
「俺は便利な能力を使える魔物がいい。本当はとにかく強い魔物がいいが、これくらいの階層じゃまだ強い魔物はいないからな」
「便利な能力……? あんまりピンと来ないぞ!」
簡単なので言えば、荷物持ちになるような魔物とか空を飛べる魔物。
欲をいうのであれば、俺達の能力を底上げできる強化スキルを持った魔物が好ましい。
「三十階層のボスみたいな感じですか? 単体では強くありませんでしたが、アンデッドを産み出して強化も行う的な感じで、強さとは別の厄介さがありました」
「あー、そうだな。流石にあそこまで高いレベルのものは求めていないが、空を飛べて背中に俺達を乗せることができる――とかでもいい」
「それいいな! 俺も魔物の背中に乗って飛んでみたい!」
「まぁ大きな飛行できる魔物がいるのかって話はあるけどな」
飛行する魔物はかなりいるのだが、人を乗せられるような大きい魔物にはまだ出会っていない。
もしかしたら、強い魔物よりも希少な存在の可能性は充分にある。
「それで言いますと……五十階層の魔物が空を飛べる大きな魔物ですよね?」
「あっ、アイスワイバーンだっけ! 名前の響きからかっこよさそうだし、強さもそれなりのものがあるんじゃないか!」
「でも、流石にフロアボスは従魔にできないだろ。できるなら、俺もアイスワイバーンを狙いたいけどな」
「私もできない可能性の方が高いと思います。……ただ、試してみる価値はあるんじゃないでしょうか?」
時間の無駄なような気がしてならないが、別に時間に追われている訳ではないし試してみるか。
「確かにそうだな。面倒くさがらずに試してみよう。それじゃサクッと五十階層まで向かうとしようか」
「了解! と言っても、この雪山エリアじゃスノー頼りで俺達何もしないけどな!」
「それは言わなくていいだろ。……というわけで、スノーよろしく頼む」
「アウッ!」
元気よく返事をしてくれたスノーの後についていき、俺達はペースを上げて五十階層を目指して歩を進めた。
道中ではフリーズジャイアントやゴールドスライムといった、従魔にしてみたい魔物が現れもしたが、フロアボスであるアイスワイバーンまでは指輪を試すこともせずに攻略を行った。
「ふぅー。長かったけどようやく五十階層に到着! ようやく指輪を試せるぜ!」
「ずっと楽しみにしていたので、フロアボスに挑むというのにワクワクしています」
「俺も柄にもなくワクワクしている。それに……今回のダンジョン攻略は五十階層までって決めていたし、せっかくならフロアボスを従魔にして終わりたいな」
俺のそんな呟きに対し、ラルフは酷く驚いた表情を見せた。
「あっ! そういえば五十階層で止めるんだった! ゆっくり攻略しようと思って宝箱探しを提案したのに、宝箱を見つけた喜びで完全に忘れて最速で来ちまった!」
「そんな姑息な考えから宝箱を探すことをていあんしていたのか。まぁ宝箱も見つけられたし、早めの攻略もできたから結果的には良かったが」
ラルフのそんな呟きに苦笑いしながら返答しつつ、いよいよアイスワイバーンのいる五十階層へと降りる。
本来ならダンジョン攻略の大ボスであり、集大成を見せる場――のはずなのだが、今の俺達の頭には従魔の指輪を試すことしかない。
実際に様々な困難を越えてきた俺達には、アイスワイバーン自体は大した相手ではないだろうしな。
そんな軽い気持ちで降りると、五十階層は氷の世界となっていた。
人によっては感動するほど綺麗な場所なのだろうが、足場が悪くて戦いにくそうだなというかんそうしか抱けない。
そして、一面綺麗な氷のフロアのド真ん中で眠っているのは紛れもない翼竜。
氷を身に纏ったその姿には、流石の俺も少年心を擽られるかっこよさがある。
ワイバーンステーキのせいで美味しそうという不躾な感想も抱いてしまっているが、気を取り直しつつ戦いに挑むとしようか。
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