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後日譚 第65話


 ゴーレムの爺さんはいつものように部屋に籠って作業をしていた。

 作業中に声を掛けるのは躊躇うが、一区切りつくのがいつになるのか分からないため、俺は即座に声を掛けた。


「ゴーレムの爺さん、ちょっといいか?」

「……ん? なんじゃい、クリスか。随分と短い期間で訪ねてきたの。今日は何の用で来たんじゃ?」

「実はダンジョンで宝箱を拾いまして、その鑑定をフィリップさんにしてもらえないかをお願いに来たんです」

「鑑定? ……そんなものは商人にでもやってもらえばいいじゃろ」

「一番頼みやすかったのがゴーレムの爺さんだったんだよ。三個しかないからやってくれ。……そのメガネも使いやすいだろ?」


 そう。

 ゴーレムの爺さんは俺がプレゼントしたメガネをかけており、重宝しているのは聞かずとも分かった。


「貰ったものを使って何が悪い――と言いたいところじゃが、このメガネが想像以上に便利なのは事実。……仕方がない。三個だけなら鑑定してやろう」

「ゴーレムの爺さん、ありがとう! 助かるぜ!」

「よせ、抱きついてくるな」


 抱きついたラルフを鬱陶しそうに押し退けながら、鑑定の準備を始めたゴーレムの爺さん。

 

「よし、物を出してくれ。すぐに鑑定するからのう」

「この指輪なんだが……どんな効果があるか分かるか?」


 俺は鞄から指輪を取り出し、ゴーレムの爺さんに渡した。

 次の一言でこの指輪がゴミなのか、使えるものなのか分かると思うと緊張してくる。


「なんじゃ。三個と言っておったがどれも同じ物じゃな。…………ふむふむ。…………なるほど。……この指輪が何なのか分かったぞ」

「えっ! もう分かったのか!?」

「この指輪は従魔の指輪じゃな。鑑定前に言った通り三個とも同じ効果の指輪で、この指輪一個につき魔物を一体従魔にすることができる」


 タメもなく、あっさりと効果を告げてきたゴーレムの爺さん。

 魔物を従えることができる指輪って、効果としては相当凄いもの……だよな?


 スノーが特殊なだけで、他の魔物は俺達を見るなり襲ってきている。

 そんな魔物を自由に仲間にできるようになると考えたら、色々と夢が膨らんでくる。


「私たちはただの鉄の指輪だと思っていたのですが、この指輪ってレアなものだった――ということですか!?」

「んー、まぁ世間一般的に考えたらそうじゃろうな。魔物を従わせるには【魔物使い】の適性職業を持っていないと無理。そんな中、指輪を装備しているだけで魔物を従わせることができるのじゃから……喉から手が出るほど欲しいって人間もおるじゃろ」

「よっしゃあ! 完全な大逆転じゃん! ボルスさんの言葉を信じて良かった!」

「ですね! 気分が地の底まで沈んでいたので、本当に心の底から嬉しいです!」


 そんな結果を受け、ラルフとへスターは跳び跳ねて喜んでいる。

 正直俺も飛び跳ねたいくらい嬉しいが、ゴーレムの爺さんの前のため必死に抑えた。


「魔物を従わせる効果なら嬉しいが……本当に、本当にその効果で合っているんだよな?」

「疑うのなら他所のとこにも持っていけ。ただ、ワシの見立てでは間違いなく『従魔の指輪』じゃ」

「そうか、鑑定してくれてありがとう。ちなみにだが、どうやってこの指輪を使うのか分かるか?」

「そこまでは分からん。お主らは魔物を連れているんじゃから、試してみればいいじゃろ」


 その言葉を受け、俺達は一斉に振り返ってスノーを見たのだが……。

 スノーは小さく唸ってから、首を大きく二回振った。


「…………流石にスノーでは試せませんね。もう既に立派な仲間ですから」

「確かにそうだな! 一瞬でも試したいと思ってしまった俺が情けない!」

「一個は実験用として使う覚悟で、色々と試していくしかないだろうな。とにかく……ただの鉄の指輪じゃなくて本当に良かった」


 俺の心からの吐露に激しく頷いているラルフとへスター。

 宝箱を発見してから気持ちの乱高下が激しかったが、大勝利で終われると思うと最高に気分が良い。


「フィリップさん、とにかくありがとうございました。このお礼はまた別日に何か持ってきますね!」

「別にいらんぞ。クリスが言っておったように、このメガネとゴーレムの欠片は貰い過ぎておったからな。まぁまたどこかで、このメガネのような面白いアイテムを見つけたら買ってきてくれ」

「分かりました。改めて本当にありがとうございました!」


 へスターに続き、俺とラルフもゴーレムの爺さんに深々と頭を下げた。

 あまりこういった態度を見せないのだが、流石に今回ばかりは感謝しかない。


 それから俺達は軽い足取りで外へと出た。

 そして三人で顔を見合せて、呼吸を合わせたかのようにガッツポーズをする。


「やったー! 本当に嬉しい!」

「絶対に効果なしの指輪だと思っていた。まさかあそこから逆転があるなんてな」

「夢にも思っていませんでしたね! ボルスさんがいなければ鑑定をしていなかったかもしれませんし、絶対にお礼を伝えましょう!」

「だな。これでボルスさん達と【翡翠の銃弾】にワイバーンステーキを奢ることになったけど、対価が『従魔の指輪』三個って考えたら安すぎるくらいだ」

「確かに! あー、一刻も早く試したい!」


 今日ばかりはラルフと同意見で早く試したい。

 今からダンジョンへ行き、従魔にしたい魔物がいたら試すのはあり。


 試す用のものは強さよりも見た目採用になるだろうが、使い方が分かれば強い魔物を狙いにいってもいいな。

 例えばだが、ロザの大森林にいた化け物みたいな魔物も仲間にできるのであれば、更に夢は広がっていく。

 俺達は色々な妄想を膨らませながら、『従魔の指輪』を握り締めてダンジョンへと向かったのだった。




書籍第二巻、コミック第二巻が発売されております!

よろしければ手に取って頂けたら幸いです。

それからカドコミ(旧コミックウォーカー)にてコミカライズの連載されておりますので、よろしければお読み頂ければ幸いです!

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