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後日譚 第64話


 手にとって見てみたが、結局何だかよく分からない。

 若干錆びつき具合にばらつきがあるものの、三つとも全く同じ指輪ということだけは分かる。


「プラチナの宝箱だから期待したのに変な指輪が三つだけ!? そりゃないだろ!」

「珍しい金属で作られているとか、宝石がはめ込まれている――とかでもないのですか?」

「見てみたが、特に何の変哲もない指輪だな。錆び付き具合から見ても、ただの鉄で作られたものだと思う」


 そこからは三人ともに黙り混み、各々手にした指輪をくまなく観察した。

 ただ、それ以上に見て分かることは何もなく、普通の指輪であるということしか分からない。


「…………おいおい! 静まり返らないでくれ! 俺が気まずすぎるだろ!」

「確かにボルスさんには迷惑をかけたな。わざわざ部屋に誘って、ハードルを上げに上げてこれじゃ反応にも困るよな」

「ドヤ顔したのが恥ずかしい! だけど、見せたのがボルスさんだけだったのは良かった! 他の人がいたら、もっとお通夜状態になっていたもんな!」

「それはそうですね。不幸中の幸いってところでしょうか」


 ボルスさんだから何とかなっているが、ルディだったら気まずさに耐えきれなかっただろう。

 そういった点でも、二人の言うように不幸中の幸いだった。


「いやいや、ちょっと待て! この宝箱は間違いなくプラチナの宝箱なんだろ? なら、まだ諦めるのは早すぎだろ! なんかとんでもない力を秘めているかもしれないし、超希少な指輪の可能性だってまだある!」

「可能性がないとは言えないが、限りなく低いだろうな。魔力も込められているには込められているが、大した量の魔力ではない」

「いたずらの線が一番高いだろうな! 頑張って掘り出したのに本当にムカつくぜ!」

「まぁプラチナの宝箱自体に価値がありますし、それで納得しましょう」

「おいおい! 三人としてそんな冷めたこと言っているなら俺がその指輪を貰うぞ! 価値がないんだったらいらないよな?」


 ボルスさんのそんな一言に対し、俺を含めた三人とも『yes』とは言えずに固まった。

 ショックが大きすぎたこともあり、自衛のために大したものではないと言い聞かせていたが……ボルスさんの言葉でまだ期待していることを自覚させられた。


「ほらな! まだ諦めきれてないなら、しっかりと鑑定して貰った方がいい! きっと良いものに違いないぜ! 俺が言うんだから間違いない!」

「……そこまで言うなら、この指輪がただの指輪なら俺達にワイバーンステーキを奢ってくれ」

「もちろんいいぜ! その代わり、その指輪が凄い指輪だったら俺に――いや、『翡翠の銃弾』含めた全員に奢ってくれよ! んで、ステーキを食いながら、どんな指輪だったのか教えてくれ!」


 ボルスさんはニカッと眩しい笑顔を見せてそう言った。

 お陰でこの指輪がゴミでも嬉しい状況になった。

 俺も結構本気で落ち込んでいたし……本当にボルスさんには感謝だな。


「その賭けに乗らせてもらう。……ありがとう。ボルスさんのお陰でどう転んでも嬉しくなった」

「別にクリス達のために言った訳じゃないぜ? 俺の目に狂いはないと思ったから言い出しただけだ! ってことで、俺はもう帰らせてもらう! 三人とスノーが強いことは知っているけど、あまり無茶はするなよ!」

「ボルスさん、心配して来てくれてありがとう!」

「ありがとうございました。鑑定結果が出ましたらお伝えしますね」


 片手をひらひらとさせながら、部屋から去って行ったボルスさん。

 何度も思うが、本当に優しい人だな。


「もう遅いし俺たちももう寝るか。それで、明日の朝一で指輪の鑑定をしに行こう」

「いいね! どこの道具屋で鑑定するんだ?」

「フィリップさんのところはいかがでしょうか? 道具屋ではありませんが、魔道具も扱っていますしきっと鑑定できると思います」 

「なら、ゴーレムのじいさんの店で決まりだな。近くに大きな道具屋もあったし、ゴーレムのじいさんが分からないようだったらそっちに持って行こう」


 既に風呂にも入っており、飯も済ませているため、俺たちはすぐに就寝した。

 そして――翌日の朝。


 寝て時間を置けたこととボルスさんのお陰もあって、昨日の宝箱の件は無事に切り替えることができている。

 俺たちはダンジョンに潜れる準備を行ってから、ゴーレムのじいさんのところに向かった。


「この指輪が良いものだといいですね」

「だな。まぁ駄目だったとしても、また宝箱を見つければいい。ボルスさんからワイバーンステーキを奢ってもらえるしな」

「そうそう! スノーがまた見つけてくれるはず!」

「アウッ!」


 深い階層まで潜ることができれば、他の冒険者に見つかっていない宝箱を見つけられる可能性が高いことは分かった。

 宝箱がどういうものかも分かったし、次はもっと簡単に見つけられるはず。


 ……と、次の宝箱のことを考えてしまってはいるが、まだ指輪を諦めたわけではない。

 根拠のないボルスさんの言葉を信じ、宝箱から出た指輪の鑑定をゴーレムのじいさんにお願いしたのだった。




書籍版二巻が7/25日から発売されております!

よろしければ手に取って頂けたら幸いです。

それからコミカライズもカドコミ(旧コミックウォーカー)にて連載されておりますので、よろしければお読み頂ければ幸いです!

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