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後日譚 第63話


 予想以上に時間がかかってしまったが、何とかエデストルに戻ってくることができた。

 ここまでダンジョン攻略は一切キツいとかもなく、楽しい思い出しかなかったのだが……今回は流石に疲労を感じる。


「ふいー、ようやく戻って来られたな! 寒さもあったし、すぐにでも風呂に入りたい!」

「私も同じですね。下着が濡れてしまっていて気持ち悪いので、すぐにお風呂に入りたいです」

「すっかり暗くなってしまっているし、今日は寄り道せずに宿に戻ろうか。どうせならボルスさん達や、ルディ達に宝箱を手にいれたことを自慢したかったが……俺もいち早く風呂に入りたい」

「あー、それは確かに! 一緒に宝箱の中身を確認したかったけど、流石に未開封のまま眠ることはできないもんな!」

「適当に夜ご飯を買って、お風呂に入ってから宝箱の開封ですかね? 中に何が入っているのか今から楽しみです!」


 体が濡れている上に疲労が溜まっているというバッドコンディションだが、宝箱の中身を確認するという最大級のお楽しみがあるお陰で体はまだまだ動く。

 結果的に宝箱の中を濡らすことなく持ち帰ることもできた訳だし、喜びそのままにその場で開けなくて本当に良かった。


 三人共にワクワクしながら歩を進め、道中で適当な夜飯を買ってから宿に帰ってきた。

 それから順番に風呂に入っていき、それぞれが待っている間に夜ご飯を済ませていると……部屋の扉がノックされた。


「……んぐ。こんな時間に客? ……クラウス関連の敵じゃないよな?」

「いや、それはもう流石にないだろ。ちょっと探ってみる」


 俺達は強くなるまで常に逃げ続け、追われる立場だったからラルフが警戒する気持ちも分かる。 ただその可能性は限りなく低いし、それに敵がわざわざ扉をノックするとも思えないしな。


「――やっぱり敵なんかじゃない。生命反応からしてボルスさんだな。多分、ダンジョンから戻ってこなかった俺達を心配して様子を見に来てくれたんだろう」

「ボルスさんなら良かった! まだ中身を確認していないし、せっかくなら一緒に見てもらおうぜ!」

「だな。心配をかけてしまったお礼も兼ねて誘おう」


 そんな会話をしてから、俺はわざわざ訪ねてきてくれたボルスさんを出迎えに行った。

 扉を開けると、【生命感知】で察知していた通り、心配そうな表情をしたボルスさんが立っていた。


「おお!クリス! 無事に戻っていたんだな! ダンジョンから全然戻ってこなかったから先に帰っちまったんだけど、心配だったから様子を見に来たんだわ!」

「ちょっと色々あって遅くなっただけで、この通りピンピンしているから大丈夫だ。心配かけて悪かった」

「いやいや、無事なら何でもいいんだ! まぁそういうことだから、早いが俺はもう帰らせてもら――」

「ボルスさん、ちょっと待ってくれ。見せたいものがあるから中に入ってほしい」


 安堵の表情を見せた後、早々に帰ろうとしているボルスさんを呼び止める。

 何のことだか見当もついていないようで、首を傾げて困惑した顔をしている。


「俺に見せたいもの? 一体なんなんだ?」

「それは実際に見てのお楽しみだ。すぐに済むからとりあえず中に入ってくれ」


 引っ張る形で部屋の中に招き入れると、ボルスさんが来ることを先読みしていたラルフが、宝箱を背中に隠してドヤ顔して待っていた。


「クリスも変だと思ったが、ラルフも大分変だな! なんだその微妙にムカつく顔は!」

「ボルスさん、これを見たらきっと驚くぜ! クリス、もう見せていいよな?」

「ああ。見せてあげてくれ」


 俺のその言葉と同時に、ラルフは背中で隠していた宝箱をボルスさんに見せた。


「……ん? は、箱? ――って、もしかしてその箱って……た、宝箱か!?」


 最初は何だか分かっていない様子だったか、よく見たことで宝箱だということに気づいた様子。

 想像していた以上の反応を見せてくれたため、サプライズで見せた甲斐があるというもの。


「その通り! 俺達、宝箱を見つけたんだぜ!」

「この宝箱を持ち帰ることに苦戦して、今日はダンジョンから帰還するのが遅くなったって訳だ」

「う、羨ましすぎるだろ! 結構潜ってるのに痕跡すら見つけることができてなかったから、宝箱なんてないものだと思ってたわ! 本当に実在するんだな!」


 ボルスさんは俺達以上に興奮しており、目を輝かせながら宝箱を凝視している。

 俺とラルフはそんなボルスさんを見ながらニヤニヤしていると、タイミング良くへスターが風呂から戻ってきた。


「あれ? ボルスさん、来ていたんですか?」

「ああ。俺達を心配して様子を見に来てくれたんだ。それで、まだ宝箱を開ける前だから誘った」

「そうだったんですね。……ふふ、子供みたいに目を輝かせていますね」

「――おい、クリスッ! こ、この宝箱って鉄じゃなくないか!?」

「今、気づいたのか。ああ、察しの通りプラチナの宝箱だ」

「ぷ、プラチナだとぉー!? どんな強運の持ち主だよ! プラチナの宝箱なんて、売れば白金貨百枚くらいなるだろ!」


 プラチナということに今気づいたようで、目が飛び出るのではと思うほど見開いて叫んでいる。

 というか……宝箱の詳しい価値は知らなかったが、白金貨百枚で売れるものなのか。

 まぁ金の宝箱以上は市場出回らないもいうのは聞いていたし、希少性も考えたら妥当な値段なのかもしれない。


「一切売る気はないけどな。ちなみに今から開けるからボルスさんも一緒に確認してほしい」

「お、俺も一緒に見ていいのか!?」

「もちろん。そのために中に入れたんだし、ここで帰ってくれと言ったって中身が気になって帰れないだろ?」

「開けるというなら……確かに中身は死ぬほど気になる」

「俺達もめちゃくちゃ気になっているからもう開けよう。やはり……見つけたスノーが開けるべきだな」


 全員の目が爛々と輝かせてガンキマっている中、あまり興味なさそうなスノーを呼び、宝箱を開けてもらうことにした。

 既に解錠はしてあるため、後は開けるだけなのだが……スノーはタメを一切作らず、鼻を使ってすぐに開けた。


「はっや! もう少しタメろよ!」

「中には何が入っていますか!?」

「これは何だ……? 古びた指輪……?」


 宝箱の中に入っていたのは、古くて若干錆びている指輪が三つだけ。

 丁寧な梱包はされていて一見凄そうなものにも見えなくもないが、正直ガッカリしたのは否めないな。



書籍版二巻が7/25日から発売されております!

よろしければ手に取って頂けたら幸いです。

それからコミカライズもカドコミ(旧コミックウォーカー)にて連載されておりますので、よろしければお読み頂ければ幸いです!

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