後日譚 第50話
ブルーオーガを討伐し、エデストルへ戻ってきた後はみんなで飯を食べた。
ボルスさんおすすめの大衆食堂で料理を食べながら、持ってきたプレゼントを渡してその日はお開き。
ボルスさん達にもダンジョンを潜ることを伝えると、三人も一緒に行きたいとのことだったので、【翡翠の銃弾】がエデストルに到着次第、一緒にダンジョンに潜ることになると思う。
ダンジョンの方も色々と楽しみではあるが……とりあえず今日はゴーレムのじいさんのところに行ってから、『ガッドフォーラ』に行く予定。
昨日は丸一日ボルスさん達に使ってしまったため、今日は確実にこの二人の下へ向かう。
朝食を食べた後、魔法屋も『ガッドフォーラ』もスノーは入れないため、今日は宿屋で留守番していてもらい、三人で回ることに決めた。
「まずはどっちから行くんだ? というか、俺はあんま面識ないけどいいのかな?」
「顔は知ってるんだし大丈夫だろ。まずは……ゴーレムの爺さんの方からだな」
「近いのはフィリップさんのお店ですもんね。お元気だといいのですが……」
「絶対に元気だろ。そう簡単に体調を崩すようには見えない」
そんな会話をしながら、ゴーレムの爺さんの店に向かった。
相変わらず怪しい店構えなのにも関わらず、朝から人が入っている。
そんな客を見ながら店内へと入り、従業員に声を掛けた。
「すみません。フィリップさんはいますか?」
「え? フィリップさんですか? たぶん、奥にいると思いますが……アポを取っていますでしょうか? 事前に言って頂かないと、フィリップさんはお会いにならないと思います」
「へスターとクリスが来たと伝えてもらえませんか? 多分ですが、通してくれると思います」
「へスター様とクリス様ですね。……分かりました。お伝えさせて頂きます」
店員だからへスターの顔を知らないようで、かなりよそよそしい対応をされてしまった。
ただ、話さえ通してくれれば、フィリップも流石に会ってくれるだろう。
丁寧な対応をしてくれた店員が戻ってくるのを、店の商品を見ながら待っていると……。
先程の店員が慌てた様子ですぐに戻ってきた。
「し、失礼致しました。フィリップさんのお弟子さんだったんですね。すぐに案内するように言われましたので、私が部屋まで案内致します」
「仕事中のところ悪いな。どうせ研究室に籠ってるんだろ?」
「はい。今日も作業をしていますね」
従業員しか入れないバックルームを進んでいくと、怪しい煙がもくもくと吹き出ている部屋が見えてきた。
「なんだ!? あの部屋、見るからに怪しい!」
「あそこでゴーレムの爺さんは作業してるんだよ。ラルフは来るの初めてだもんな」
「入って大丈夫なのかよ! 完全にヤバい臭いしかしないぞ?」
「へスターが入って大丈夫だし、ラルフが入っても大丈夫だと思うぞ」
「怪しいだけで特に毒ではないから大丈夫です」
「本当かよ! 紫色の煙なんて、クリスが食べてた毒草からしか見たことないぞ!」
怪しすぎる部屋を前に渋っているラルフを説得しつつ、部屋の中に入った。
薄暗い部屋の中にはゴーレムの爺さんがおり、何かのポーションを作っている様子。
「フィリップさん、へスターさんとクリスさんをお連れ致しました」
「ありがとのう。もう戻ってよいぞ」
「分かりました。失礼致します」
「案内ありがとう」
俺がお礼を伝えると、案内してくれた女性の店員はニコッと笑ってから戻っていった。
さて、なんて話しかけようか。
「なんじゃい。クリスもおったのか」
「いや、さっきの店員から聞いていただろ。それにしても……ゴーレムの爺さんは相変わらずだな」
「ああ、ワシは変わらずやっとる。お主らも随分戻るのが早かったな」
「はい。無事に全てが終わりましたので、その報告をしに来たんです。フィリップさん、改めてありがとうございました」
心の込もった言葉と共に、深々と頭を下げた。
へスターは本当に師として、ゴーレムの爺さんを心から敬っている。
実際にへスターを育て上げたのは、ゴーレムの爺さんだもんな。
「ほれ、クリスも何かないのかのう?」
「ありがとう。爺さんから教わった魔法は……まぁそこそこ役に立った」
「なんじゃそこそこって。クリスも素直に感謝したらどうなんじゃ?」
「それは俺の台詞だ。俺も同じ弟子なんだから、もう少し良い対応をしたらどうだ?」
「なんてワシから優しくしなくちゃならん――」
「まぁまぁ、フィリップさんもクリスさんも落ち着いてください」
ヒートアップし掛けたところで、へスターが止めに入った。
俺とゴーレムの爺さんは軽く睨みあった後、互いに顔を背けた。
「えっ? なんでそんなに仲が悪いんだ?」
「別に仲が悪いとかじゃない。態度が気にくわないだけだな」
「そりゃこっちの台詞じゃ!」
「ほら、またすぐに始めないでください! それより今日はフィリップさんにプレゼントを持ってきたので、ぜひ受け取ってください」
「プレゼント? ワシにか?」
「ええ。クリスさんが主体で選んだプレゼントです」
俺を立てながら、フィリップへのプレゼントを取り出したへスター。
フィリップへのプレゼントは、【翡翠の銃弾】と共に遺跡へ行き、取ってきたゴーレムの残骸。
中は空ではありそうだが、魔力核も拾ってきたため多分喜ぶはず。
「うおおお!! こ、これは……ゴーレムの体!」
「びっくりした! 急に奇声を上げないでくれ!」
「それに魔力核まで! これはよくやったと言わざるを得ん!」
「やっぱり喜んでくれましたね! 後、このメガネも買ってきたので受け取ってください」
この眼鏡はルゲンツさん用に購入したものだが、ゴーレムの爺さんにも買っておいた。
遺跡でゴーレムの残骸が拾えるか分からなかったしな。
「メガネはいらんが……せっかくのプレゼントじゃし受け取ろう」
「その眼鏡は自動で視力の調整をしてくれる優れものだぞ。かけてみてくれ」
ゴーレムの爺さんは俺を一度見た後に、眼鏡を掛けてからゴーレムの残骸に視線を落とした。
「うおっ! ……いらんと思っておったが、こりゃ凄いのう。目が若返った感覚じゃ」
「ふふふ、喜んでくれて良かったです! 遺跡にまで行って良かったですね」
「まぁそうだな。態度は気にくわないけど、俺も世話になったし喜ぶものを渡せて良かった」
マジックアイテムの眼鏡を使って、ゴーレムの残骸見て喜ぶゴーレムの爺さんを見ながら、俺とへスターは頷き合って笑ったのだった。
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