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【完結】追放された名家の長男 ~馬鹿にされたハズレスキルで最強へと昇り詰める~  作者: 岡本剛也
8章

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後日譚 第47話


 ノーファストでの観光を終えた俺達は、ラルフの強い希望で急いでエデストルに向かうこととなった。

 ノーファストからエデストルへは二つのルートがあり、一つは前回と同じ平坦で安全な舗装されたルート。


 そしてもう一つは、山を突っ切る最短ルート。

 道は険しいものの、平坦なルートに比べて二日早く着く。


 わざわざ山道なんか進まず、進みやすい道で行きたいというのが本音なのだが……。

 ラルフが購入した剣を、少しでも早く使いたがっているからな。

 購入を勧めたのは俺だし、ラルフの希望に沿うことにした。



「ふぅー、エデストルでも山に登りましたが……何度登っても大変ですね」

「足元が不安定なのがいちいち気になってしまう」

「文句を言わずに足を動かそうぜ! 早くエデストルに行って、ダンジョンに潜りたいだろ?」

「いや、別にそんなことないけどな」

「私も別に……なんですが、ちょっとスノーが早いです!」


 スノーはラルフ以上にテンションが高く、軽快に山道を進んでいる。

 元々スノーウルフは山に住んでいた魔物だし、平坦な道よりも好きなのかもしれない。


 ラルフというよりも、軽快に登るスノーにつられてペースが早くなっていき、俺達はあっという間に山越えに成功。

 デッドリッチーを倒した荒野を越え――早くもエデストルが見えてきた。


「わー! もう着いちゃいましたよ!」

「結構な距離があるイメージだったんだが、直線で進めば意外と近いんだな」

「だろー!? 山道を進んで正解だった!」

「いや、正解とは断じて思わない」


 精神的にもかなり疲れたし、休憩できる場所が一つもなかった。

 少しでも手間取ったら、道中で野宿をするはめになっていたし、帰りは絶対に平坦なルートでの大回りを選択するつもり。


「もう真っ暗ですねー。着いたらすぐに挨拶したかったのですが、挨拶回りは明日でしょうか?」

「だな。今日は適当な宿を取って、明日の朝から挨拶回りをしよう」

「了解! 明日にはダンジョンに潜れるかなー?」


 俺達は入門検査を行ってから、エデストルの街に入った。

 エデストルは流石に懐かしいとかの感情はないが、単純に一番ワクワクする街。


 出現する魔物の強さはもちろん、ダンジョン都市なだけあって腕自慢の冒険者も集まってくるからな。

 前に来た時はダンジョンが目的ではなかったため、俺とへスターは何の交流も持たなかった。


 今回はせっかくだし、色んな冒険者と交流してみたいと思っている。

 ……まぁ人見知りだから、交流が持てるかどうかは分からないが。


「よーし! 久しぶりのエデストルだー!」

「俺達の挨拶回りの最後の場所だな。ダンジョンにも潜るつもりだし、他の街よりも滞在期間は長くなりそうだが」

「ダンジョンに潜るのに目標とかあるんですか?」

「特には決めていないが……クラウスが達成した五十階層を目標にしてもいいかなとは思ってる。経験者のラルフもいるしな」

「いいね! 五十階層を目標にしよう!」


 そんな話をしつつ、従魔可の宿を取って疲れきっているスノーを寝かせてから、俺達は再び街へと出てきた。

 やはり……エデストルに来たからには食べなくてはいけないものがある。


「よしっ。準備も整ったし……ワイバーンステーキの店に行こう」

「賛成! 実はエデストルって聞いたときから、ワイバーンステーキが食べたくて仕方がなかった!」

「私も山に登ってる最中から、ずっと食べたかったです」

「みんなの気持ちが一緒でよかった。本当ならボルスさんと一緒に来たかったが、明日までは絶対に待てない」

「同感! ボルスさんとはまた来ればいいだけだし、今日も行っちゃおうぜ!」


 全員が全員、ワイバーンステーキのことを考えてくれていてよかった。

 唯一ネックなのが、予約をしていないってことだが……この時間なら大丈夫なはず。


 俺達は一直線でお店へと向かい、訪ねてみることにした。

 看板は出ているが客の気配はなく、やっているか分からない状態。

 普段の俺なら引き返しているが、今回は軽くノックをしてから店の中に入った。


 気配がなかった通り店内に客の姿はなく、片付けの作業している店主さんの姿。

 店内には微かにワイバーンステーキの匂いが残っており、もう食べないと眠れないくらい舌がワイバーンステーキを欲してしまっている。


「すまないが、もう店は閉まって……ん? お前さん達はボルスが連れてきた人達か?」

「覚えていてくれたのか? どうしてもワイバーンステーキが食べたくて、エデストルに着くなり来たんだが……食べさせてはくれないだろうか?」

「店が閉まっているのは分かっているが、本気で食べたい!」

「…………断りたいところだがボルスの知り合いだし、そこまで食べたがっているなら断れねぇな。席に座ってろ。焼いてやる」

「ありがとうございます! やったー! ワイバーンステーキが食べられますよ!」

「……本気で嬉しい。思わず泣きそうになった」

「俺もだ! もうワイバーンステーキを食べないと寝られない体になっていたからな!」


 店主の計らいで、俺達はワイバーンステーキを食べられることになった。

 ワクワクしながらステーキが来るのを待っていると、奥から肉塊を持って戻ってきた店主。


 すぐに切ってくれ、俺達の前で焼かれ始めた。

 匂いからして爆発的に美味く、以前食べたときの記憶がフラッシュバックしてよだれが止まらない。


「や、やばい。腹が減っておかしくなりそう!」

「わ、私も……。この匂いは凶悪すぎます!」

「もう少しで食べられる。もう少しで食べられる」


 呪文のように呟きながら待っていると、皿に綺麗に盛り付けられて提供された。

 出された瞬間に俺達は一斉に肉を頬張りーー。


「やっぱり美味すぎるだろ!」

「まさしく至福ですね」

「幸せだ。本気で幸せだ」


 各々感想を漏らしながら、旨味の塊であるワイバーンステーキを食べていく。

 味変の塩をつけたり、わさびという香辛料をつけて楽しみながら、あっという間にステーキを完食。


 エデストルといったらこのワイバーンステーキであり、いきなり食べることができて本当によかった。

 エデストル滞在初日にして、ピークを迎えてしまった感はあるが……幸せな気持ちでいっぱいになりながら、俺達はワイバーンステーキの余韻を楽しんだのだった。


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