後日譚 第44話
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カーライルの森の依頼以降も、パーティメンバーを変えながら依頼をこなして【翡翠の銃弾】と交流を深めつつ、懐かしのオックスターに滞在してあっという間に一週間が経過。
あまりにも自然に受け入れてくれたため、借家はもはや俺達の家のようにもなってしまっている。
改めて思うが街の空気感が良く、グリース達がいなくなったオックスターは治安も抜群。
依頼の刺激自体は少々物足りないが、このまま永住したいと思えるくらいに最高の街。
「ルディ、改めて本当に世話になった」
「もう行ってしまうんですね。クリスさんから学べることは本当に多いですし、僕はもう少しこの街に残ってほしいんですけど……」
「ルディ、もっと強く言ってやってくれ! 俺ももう少し滞在してもいいって言ったんだけど、クリスが行くって言い出して聞かないんだ!」
引き留めてくれるルディに乗っかる形で、ラルフはやいやい文句を言ってくる。
イルダと波長が合ったようだし、初めての依頼で実力を認めさせたようで、初めて『師匠』と慕ってくれたから嬉しいのだろうが……。
【銀翼の獅子】さん達にも報告がしたいし、エデストルにも報告をしなくてはいけない人がたくさんいる。
一瞬で街を行き来できるのなら、別にどれだけ長く滞在しても構わないが、現実的にそんなことは不可能なのだから仕方がない。
「あまり文句を言うな。全ての街を巡り終わったら、また来ればいいだろ」
「随分と先になっちまうじゃん!」
「ししょー、大丈夫ニャ! 依頼を数回こなしたら私達もエデストルに行くニャ!」
「「……え?」」
唐突なイルダの言葉に、俺とルディが一緒になって聞き返した。
ルディも驚いているということは、イルダが勝手に言っていることだと思ったのだが……。
どうやらカルビンとエイミーは把握していた様子。
「……あれ? イルダ、ルディに報告していなかったんですか?」
「今したニャ! ルディ、私たちもエデストルに遊びに行くニャ!」
「そんな急に言われましても……。お金とかはどうするですか?」
「帰りの交通費は向こうで稼ぐニャ! ダンジョンは稼げるって、ししょーが言っていたニャ!」
「そんな行き当たりばったりな……。稼げなかったらオックスターに帰ってこられなくなりますよ!?」
「大丈夫ニャ!」
何が大丈夫なのかさっぱり分からなかったが、自信満々に大丈夫と言いきったイルダ。
文句を言い出すラルフで大変だと思っていたが、やはりイルダのぶっ飛び具合は一つ先をいく。
「エデストルに来るなら、今度は俺達が色々と紹介するぞ」
「ちょ、ちょっとクリスさん! イルダが乗るようなこと言わないでくださいよ!」
「もし来たとしても大丈夫だってことだ。それじゃ俺達は一足先にオックスターを発たせてもらう。改めて本当に世話になった」
「【翡翠の銃弾】の皆さん、お世話になりました!」
俺とヘスターは深々と頭を下げ、お礼を伝えた。
スノーはエイミーに撫でられながら、別れを惜しんでいるように見える。
「ししょー、エデストルで待っててニャ! ダンジョンでの修行法を絶対に教えてもらうニャ!」
「おう、エデストルで待ってるからな! イルダも絶対に来いよ!」
お馬鹿二人はガッチリと熱い握手を交わしており、その光景を見ているルディの目は死んでいる。
もう止めることは難しいだろうし、結局イルダに押されて来ることになりそうだな。
そんなことを思いつつ、俺達は【翡翠の銃弾】と別れてお世話になった借家を後にした。
シャンテルと副ギルド長はこの間と同じように、門まで見送りに来てくれるとのこと。
ゆっくりとオックスターの街並みを楽しみながら門の前までたどり着くと、先に来て待っていてくれていた二人の姿が見えた。
「クリスさん、こっちです!」
「シャンテルと副ギルド長。今回も見送りに来てくれてありがとな」
「見送りに来るのなんて当たり前じゃないですか! 素敵なプレゼントだって頂きましたし、またオックスターに遊びに来てもらうためにも全力でお見送りさせて頂きますよ!」
「……ん? プレゼント? ……あ、あれ、私はプレゼントを……い、いえなんでもありません」
副ギルド長は自分はプレゼントをもらえていないことに、軽いショックを受けた様子。
気まずくならないように皆まで口にはしなかったのが、何とも言えない哀愁を漂わせている。
「心配するな。ちゃんと副ギルド長のも買ってきてある。物が物だけに去るタイミングで渡そうと思っていてな。……これが副ギルド長へのプレゼントだ」
「えっ!! 私なんかにもプレゼントを買ってきてくれたんですね! クリスさん、ヘスターさん、ラルフさん、スノーさん、ありがとうございます!」
自分だけないと思っていたからか、過去一番の嬉しそうな表情を浮かべた副ギルド長。
「早速開けていいですか? これは……ポーション……ですか?」
「ああ。能力覚醒ポーションっていう見たことも聞いたこともないポーションだ。珍しいから副ギルド長に試してもらいたいと思って買ってきた」
「凄いポーションだからとかではなく、分からないポーションですか?」
「ああ。どんな効果なのかも分からない。ただ金額は金貨七枚と高価だったから期待してもいいぞ」
「き、金貨七枚!? た、高すぎますよ!」
「ああ。だから、絶対に使ってどうだったかを教えてくれ。次にオックスターに来たときに報告を楽しみにしている」
「こ、これは絶対に使わないといけませんね……!」
見るからに怪しげなポーションを握りしめ、わなわなと震えている副ギルド長。
シャンテルに渡して効能を調べてもらうとかでも良かったのだが、実際に使ってみてくれた方が面白いしな。
「うわー、いいなぁ! 未知のポーションってワクワクしますよね!」
「ワクワクというよりかはドキドキって感じですね……。何はともあれ、本当にありがとうございます!」
「今回も世話になったし気にしなくていい。それじゃ二人共元気でな。また近い内に顔を出す」
「シャンテルさん、副ギルド長さん! 今回もありがとうございました。また遊びに来たときはよろしくお願いします!」
「絶対にまた来るから!」
「はい!! 絶対、ぜーったいに来てくださいよ! 待ってますからね!」
「いつでもお待ちしております! ポーションの効果報告をさせて頂きますので、必ずまた遊びに来てください!」
シャンテルと副ギルド長に見送られ、俺達はオックスターを出発した。
改めて良い街だと実感できたし、老後は絶対にオックスターでゆっくり過ごしたい。
俺は心の底からそう思った。





