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【完結】追放された名家の長男 ~馬鹿にされたハズレスキルで最強へと昇り詰める~  作者: 岡本剛也
8章

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後日譚 第44話

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 カーライルの森の依頼以降も、パーティメンバーを変えながら依頼をこなして【翡翠の銃弾】と交流を深めつつ、懐かしのオックスターに滞在してあっという間に一週間が経過。

 あまりにも自然に受け入れてくれたため、借家はもはや俺達の家のようにもなってしまっている。


 改めて思うが街の空気感が良く、グリース達がいなくなったオックスターは治安も抜群。

 依頼の刺激自体は少々物足りないが、このまま永住したいと思えるくらいに最高の街。


「ルディ、改めて本当に世話になった」

「もう行ってしまうんですね。クリスさんから学べることは本当に多いですし、僕はもう少しこの街に残ってほしいんですけど……」

「ルディ、もっと強く言ってやってくれ! 俺ももう少し滞在してもいいって言ったんだけど、クリスが行くって言い出して聞かないんだ!」


 引き留めてくれるルディに乗っかる形で、ラルフはやいやい文句を言ってくる。

 イルダと波長が合ったようだし、初めての依頼で実力を認めさせたようで、初めて『師匠』と慕ってくれたから嬉しいのだろうが……。


 【銀翼の獅子】さん達にも報告がしたいし、エデストルにも報告をしなくてはいけない人がたくさんいる。

 一瞬で街を行き来できるのなら、別にどれだけ長く滞在しても構わないが、現実的にそんなことは不可能なのだから仕方がない。


「あまり文句を言うな。全ての街を巡り終わったら、また来ればいいだろ」

「随分と先になっちまうじゃん!」

「ししょー、大丈夫ニャ! 依頼を数回こなしたら私達もエデストルに行くニャ!」

「「……え?」」


 唐突なイルダの言葉に、俺とルディが一緒になって聞き返した。

 ルディも驚いているということは、イルダが勝手に言っていることだと思ったのだが……。

 どうやらカルビンとエイミーは把握していた様子。


「……あれ? イルダ、ルディに報告していなかったんですか?」

「今したニャ! ルディ、私たちもエデストルに遊びに行くニャ!」

「そんな急に言われましても……。お金とかはどうするですか?」

「帰りの交通費は向こうで稼ぐニャ! ダンジョンは稼げるって、ししょーが言っていたニャ!」

「そんな行き当たりばったりな……。稼げなかったらオックスターに帰ってこられなくなりますよ!?」

「大丈夫ニャ!」


 何が大丈夫なのかさっぱり分からなかったが、自信満々に大丈夫と言いきったイルダ。

 文句を言い出すラルフで大変だと思っていたが、やはりイルダのぶっ飛び具合は一つ先をいく。


「エデストルに来るなら、今度は俺達が色々と紹介するぞ」

「ちょ、ちょっとクリスさん! イルダが乗るようなこと言わないでくださいよ!」

「もし来たとしても大丈夫だってことだ。それじゃ俺達は一足先にオックスターを発たせてもらう。改めて本当に世話になった」

「【翡翠の銃弾】の皆さん、お世話になりました!」


 俺とヘスターは深々と頭を下げ、お礼を伝えた。

 スノーはエイミーに撫でられながら、別れを惜しんでいるように見える。


「ししょー、エデストルで待っててニャ! ダンジョンでの修行法を絶対に教えてもらうニャ!」

「おう、エデストルで待ってるからな! イルダも絶対に来いよ!」


 お馬鹿二人はガッチリと熱い握手を交わしており、その光景を見ているルディの目は死んでいる。

 もう止めることは難しいだろうし、結局イルダに押されて来ることになりそうだな。

 そんなことを思いつつ、俺達は【翡翠の銃弾】と別れてお世話になった借家を後にした。


 シャンテルと副ギルド長はこの間と同じように、門まで見送りに来てくれるとのこと。

 ゆっくりとオックスターの街並みを楽しみながら門の前までたどり着くと、先に来て待っていてくれていた二人の姿が見えた。


「クリスさん、こっちです!」

「シャンテルと副ギルド長。今回も見送りに来てくれてありがとな」

「見送りに来るのなんて当たり前じゃないですか! 素敵なプレゼントだって頂きましたし、またオックスターに遊びに来てもらうためにも全力でお見送りさせて頂きますよ!」

「……ん? プレゼント? ……あ、あれ、私はプレゼントを……い、いえなんでもありません」


 副ギルド長は自分はプレゼントをもらえていないことに、軽いショックを受けた様子。

 気まずくならないように皆まで口にはしなかったのが、何とも言えない哀愁を漂わせている。


「心配するな。ちゃんと副ギルド長のも買ってきてある。物が物だけに去るタイミングで渡そうと思っていてな。……これが副ギルド長へのプレゼントだ」

「えっ!! 私なんかにもプレゼントを買ってきてくれたんですね! クリスさん、ヘスターさん、ラルフさん、スノーさん、ありがとうございます!」


 自分だけないと思っていたからか、過去一番の嬉しそうな表情を浮かべた副ギルド長。

 

「早速開けていいですか? これは……ポーション……ですか?」

「ああ。能力覚醒ポーションっていう見たことも聞いたこともないポーションだ。珍しいから副ギルド長に試してもらいたいと思って買ってきた」

「凄いポーションだからとかではなく、分からないポーションですか?」

「ああ。どんな効果なのかも分からない。ただ金額は金貨七枚と高価だったから期待してもいいぞ」

「き、金貨七枚!? た、高すぎますよ!」

「ああ。だから、絶対に使ってどうだったかを教えてくれ。次にオックスターに来たときに報告を楽しみにしている」

「こ、これは絶対に使わないといけませんね……!」


 見るからに怪しげなポーションを握りしめ、わなわなと震えている副ギルド長。

 シャンテルに渡して効能を調べてもらうとかでも良かったのだが、実際に使ってみてくれた方が面白いしな。


「うわー、いいなぁ! 未知のポーションってワクワクしますよね!」

「ワクワクというよりかはドキドキって感じですね……。何はともあれ、本当にありがとうございます!」

「今回も世話になったし気にしなくていい。それじゃ二人共元気でな。また近い内に顔を出す」

「シャンテルさん、副ギルド長さん! 今回もありがとうございました。また遊びに来たときはよろしくお願いします!」

「絶対にまた来るから!」

「はい!! 絶対、ぜーったいに来てくださいよ! 待ってますからね!」

「いつでもお待ちしております! ポーションの効果報告をさせて頂きますので、必ずまた遊びに来てください!」


 シャンテルと副ギルド長に見送られ、俺達はオックスターを出発した。

 改めて良い街だと実感できたし、老後は絶対にオックスターでゆっくり過ごしたい。

 俺は心の底からそう思った。


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[一言] ポーションの効果気になり過ぎる!
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