後日譚 第39話
パーティーを行った日の翌日。
みんながまだ寝ている中、俺は一人起床して出かける準備を整える。
色々と仕事が溜まっていると言っていたし、副ギルド長だけは起こそうと思ったんだが、酒を飲み過ぎたからか一向に起きる気配がなかった。
まぁ一日くらいなら大丈夫だろうし、気持ちよさそうに寝ているし寝かせておくか。
俺はみんなを起こさないように慎重に外へと出て、神父に会いに教会へと向かった。
朝のオックスターの街並みを懐かしく感じながら、道中で適当な朝食を購入。
コーヒーと共に朝食を頬張りながら気分よく歩き、街の外れにある教会に辿り着いた。
相変わらずの神聖な感じが一切ない教会。
他の街が全てしっかりとした教会だったことからも、この教会の異質さをより感じる。
まだいない可能性もあると思っていたが、教会の扉の鍵はかかっていなかった。
教会の中も前と一切変わっておらず、素朴な温かみを感じる内装に少しホッとする。
「おはよう。覚えているか分からないが、久しぶりに遊びに来させてもらった」
「……んん? あっー! クリスさんじゃないですか! 戻ってきていたんですね!」
他の人と比べて関係値も薄いし、俺のことを覚えているか少し心配だったのだが、どうやら覚えてくれたみたいだ。
椅子から立ち上がると、神父は走って俺の下まで駆け寄ってきた。
「ああ、昨日オックスターに戻ってきた。神父には色々と世話になったから顔を見せないとと思ってな」
「嬉しいですよ! なんと言ってもクリスさんが一番のお客さんでしたから! ……お客さんと言っていいのか分かりませんが」
「能力判別しかしていなかったし、信仰心も一切ないから客で良いと思うぞ。とりあえず元気そうにしていて安心した。潰れているかもと思っていたしな」
「クリスさんのお陰でやっていけてます! 本当に数年間の維持費を短い期間で落としてくれましたからね! 今日も――能力判別をやるんですか?」
手をワキワキとさせながら、気合いを入れた様子でそう尋ねてきた神父。
正直もう能力判別をする必要がないのだが、この神父に会ったからには能力判別をしてもらうか。
「この教会には残っていてほしいから、能力判別をしてもらおうかな。三回連続で能力判別をすることは可能か?」
「さ、三回連続ですか!? ……だ、大丈夫だと思います。――いえ、絶対にやらせてもらいます!」
「そうか。しっかりと金貨三枚支払うから頑張ってくれ」
気合いを入れた神父にそう声を掛け、奥の能力判別部屋へと移動する。
埃っぽい部屋に水晶が置かれており、椅子だけが新しく新調されていた。
「椅子が少し豪華なものになっているな。買い替えたのか?」
「ええ! クリスさんのために少し良い椅子に買い替えたんです! まぁクリスさんのお金で買ったようなものですが」
「そうだったのか。金の出どころはどうであれ、俺のために買い替えてくれたのは素直に嬉しい」
その買い替えたという椅子に座り、神父と正面から向き合った。
今から戦いでもするのかと思うほど真剣な表情であり、その顔を見るだけで笑いそうになる。
「それでは能力判別やらせて頂きます。んっ、はああっ! ふぅー……。終わりました。冒険者カードをお返し致します」
「おっ、何か前よりも楽にこなせるようになったか?」
「そんなことはないですね。まだ一度目なのでこの程度で済んでいるだけです」
神父が呼吸を整えている間に、俺は冒険者カードの確認を行う。
―――――――――――――――
【クリス】
適正職業:農民
体力 :47 (+514)
筋力 :42 (+597)
耐久力 :37 (+397)
魔法力 :9 (+257)
敏捷性 :26 (+379)
【特殊スキル】
『毒無効』『自滅撃』『硬質化』『黒霧』『広範化』『英雄殺し』
【通常スキル】
『繁殖能力上昇』『外皮強化』『肉体向上』『要塞』
『戦いの舞』『聴覚強化』『耐寒耐性』『威圧』『鼓舞』
『強撃』『熱操作』『痛覚遮断』『剛腕』『生命感知』『知覚強化』
『疾風』『知覚範囲強化』『隠密』『狂戦士化』『鉄壁』『変色』
『精神攻撃耐性』『粘糸操作』『魔力感知』『消音歩行』
『自己再生』『身体能力向上』『能力解放』『脳力解放』
『脚力強化』『深紅の瞳』『野生の勘』『士気向上』『毒液』
『音波探知』
―――――――――――――――
おおっ! 特に何もしていないつもりだったが、思っていた以上に成長していてびっくりした。
最後に能力判別をしたのはエデストルを発った日で、それから能力強化等は一切していないつもりだったんだが……能力の方の成長が予想以上。
クラウスとの戦闘での成長が大きかったのだろう。
ただクラウスに勝利を収めて得た能力すら微々たるものに感じるほど、毒草による強化幅が大きすぎる。
改めて【毒無効】のスキルの強さと、毒草の効能の強さに驚く結果だ。
後はスキルも一つ追加されているな。特殊スキルで【英雄殺し】。
どんなスキルか全くわからないが、名前的に強そうなスキルな感じがある。
午後からルディと一緒に依頼を受ける予定のため、そこで使ってみるとしよう。
「確認したが問題なかった。このまま後二回連続でやってもらってもいいか?」
「うぇ”っ!? れ、連続でやるんですか?」
「難しいなら大丈夫だ。お布施のつもりで頼んでいるだけだしな」
「い、いえ! やらせてもらいます! それじゃ行きますよ! ――ふっはッ! うぐぅぐぐ……ああァ! ……はぁー、はぁー……お、終わりました」
「ありがとう。もう一度いいか?」
「ぜぇー、ぜぇー。……す、すいません、やっぱり三回は無理です! 休憩させてください!」
ほんの少し前までは凛々しい顔だったのに、情けなく休憩を申し出てきた。
相変わらずの息切れだったし、見たいものが見れたからひとまず満足。
休憩してもらってから最後の能力判別をしてもらうとして、その間に買ってきたプレゼントを渡すとしよう。
何を渡しても喜んでくれそうなため、俺は全く気負うことなくプレゼントを渡したのだった。
新作投稿致しました!
辺境の村に住んでいた最強の主人公が、おっさんにして初めて村を出て栄えている街で無双しながら成りあがっていくお話です。
こちらは苦戦とかもなくストレスフリーな内容で執筆していく予定ですので、無双するおっさん主人公が好きな方はぜひ読んで頂けたら幸いです!





