第47話 自信
「すげぇぞ俺達! 指定されていた討伐数は二十匹だったのに、合計で三十匹も狩れたぜ!」
「えーっと、一匹につき追加で銅貨二枚だから……。報酬は銀貨六枚だよね? 一人当たり銀貨三枚の稼ぎだよ!」
田畑に見えていたラウドフロッグを全て討伐し終えた二人は、報酬の額を計算すると手を合わせて喜び始めた。
これまでは一日の稼ぎが生活費を抜いて銅貨五枚だったのに、今日はその十倍以上の銀貨六枚を稼いだのだから、俺も同じ道を歩んだ身として二人の気持ちが痛いほど分かる。
「だから言っただろ? 二人の実力なら余裕だってな」
「……なぁクリス。…………俺、強くなっているかもしれない!」
戦闘が始まる前はビビり散らかしていたラルフだったが、今回のラウドフロッグとの戦闘でかなりの手ごたえを掴んだのか、剣の柄を握る手を見ながらそう力強く呟いた。
やっぱり経験させることが、一番自分の実力を実感することできる。
まぁラルフに至っては、なんでそこまで自己評価が低かったのか謎すぎたけれども。
「俺が指導しているんだから、強くなってもらわなきゃ困る。こっちからしたら、なんであんなにビビッてたのか不思議なくらいだ」
「そりゃあよ! ……お前にボロカスに負け続けたからだろ。どれだけ特訓を繰り返しても数十回に一回の確率でしか勝てなかったんだ。あの戦績で自信をつけるって方が、どう考えたって無理な話だろ!」
「お前は俺を舐めすぎだろ。能力値では確かに負けているし、俺の適性職業は【農民】だが、曲がりなりにも幼少期からずっと剣術を叩き込まれてきたんだぞ。足を怪我している奴が、そう簡単に勝てると思うな」
「――ああ、大丈夫だ! 今日ので分かった。俺が弱いんじゃなくて、クリスが強かったんだってな!」
「…………まぁそういうことだ。少しは自信を持て」
一瞬、俺なんかよりも強い奴はゴロゴロといるけどな――そんな言葉を発しかけたが、ここでラルフを落ち込ませても意味がないと思い直し、励ましの言葉をかけた。
バカだが、意外と考えすぎてしまうのがラルフ。
調子に乗りすぎても面倒だし、落ち込みすぎても面倒くさいため塩梅が難しい。
「ヘスターも魔法の調子良かったんじゃないか? 初めて魔物相手に使っているのを見たが、あの威力ならシルバーランクでも通用すると感じたぞ」
「いえ、まだまだです! 確かに魔法に関しては、上のランクでも有効なのは確信できましたが……。あの時、クリスさんが声を掛けてくれなければやられていました。私自身の戦闘経験が足らなさすぎるので、ブロンズランクで色々な魔物と戦いながら経験を積んでいきたいと思います」
ヘスターは真面目すぎる気もするが、調子に乗ってヘマする心配がないのは大きい。
魔法の習得も早いし、自己分析もしっかりとできている。
ラルフと違って、俺が目をかけなくても着実に強くなっていく気がするな。
「とりあえず次回からは付き添いはしないから、二人でどんどん依頼をこなしていってくれ」
「今日の感じでいければ、バリバリ依頼をこなしていける!」
「そうですね。油断だけはしないようにしつつ、依頼をこなしていきます」
「俺達の当面の目標は白金貨五枚だからな。そして白金貨五枚貯め終えて、ラルフの怪我を治したら……いよいよ本格的にパーティとして活動していく」
「俺の怪我が治ったらいよいよなのか。一日に銅貨五枚しか稼げなくて、白金貨五枚なんか絶対に貯められないと思っていたけど……。俺にもしっかりその未来が見えてきた!」
「三人で力を合わせて頑張りましょうね。私も全力で頑張らせて頂きます!」
西南の田畑で談合した俺達は、当面の目標である白金貨五枚を貯めることを目指し、気合いを入れなおした。
白金貨五枚まではもう少し時間がかかるだろうが、この調子ならそこまで苦労せずに貯め切ることができるはず。
二人の成長も確認できたことで、俺はそう確信を持つことができたのだった。