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【完結】追放された名家の長男 ~馬鹿にされたハズレスキルで最強へと昇り詰める~  作者: 岡本剛也
8章

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後日譚 第33話


 久しぶりにオックスターの冒険者ギルドにやってきた。

 もちろんのことながら外観はほとんど変わっていないな。


「また冒険者に絡まれたりするかな? 初めて来たときは絡まれたんだよな!」

「グリースに絡まれた時か。もう懐かしい」

「あの時は本当に怖かったですね。大勢の冒険者相手でも、クリスさんが一歩も引かないんですもん」

「あそこは引く理由がなかった。というか、もう顔色を窺うのが嫌だった。二人にも付き合わせて悪かったな」

「その時も言っていたよな。俺達はずっと底辺這って生きてきたから、本当に衝撃的だったんだよ!」


 あの時に引かなかったのは今でも正解だったと思っている。

 二人には随分と怖い思いをさせたみたいだけどな。


 そんな懐かしい思い出を語りつつ、俺達は冒険者ギルドの中に入った。

 まだ昼ぐらいのため、そもそもの数が少ないが……前のような無法な感じに戻っている雰囲気は感じない。


 中に入り、副ギルド長がいないか探していると、俺に気が付いたであろう受付嬢が走って来てくれた。

 この受付嬢には見覚えがあり、俺がグリースから助けた受付嬢。


「クリスさん、お久しぶりです! オックスターに戻ってきていたんですね!」

「ああ、ついさっきオックスターに戻ってきたんだ。確か名前はスザンナだったよな? あれからは何か変なことはされなかったか?」

「はい! クリスさんのお陰で、今も元気に受付嬢をやらせてもらっています! あっ、ギルド長に会いに来たんですよね? 奥にいますのですぐに呼んできます!」

「元気にやっているなら良かった。呼んできてくれると助かる」


 走って駆けつけてくれたスザンナは、再び走ってバックルームへと消えていった。

 呼びに行ってくれるということで待っていると、一分もしない内にバックルームから副ギルド長が出てきた。


 服装も特に変わらないし、ギルド長っぽさは何もない。

 偉くなったことでの変化を楽しみにしていた半面、何も変わっていなくて少し安心した。


「クリスさん、お帰りなさい。戻ってくるのを待っていました」

「副ギルド長も元気そうでよかった」


 差し出された手を握り返し、固い握手を交わす。

 その握手の強さが、俺達を心の歓迎してくれているように感じられて嬉しくなる。


「それはこちらの台詞です。手紙の一つでもくれると思っていたのですが、何の音沙汰もなかったので心配していたんですよ?」

「手紙を送るなんて発想、頭の片隅にもなかったな。そもそも手紙の出し方すら知らない」

「いやいや、流石にヘスターさんが知っていると思います。比較的簡単に送れますし、ヘスターさんから提案して欲しかったですね」

「……すいません。私も手紙なんて出したことがないので、クリスさんと同じく頭の片隅にもありませんでした」


 ヘスターのそんな言葉を聞き、口をあんぐり開けて固まった副ギルド長。

 手紙ってそこまでメジャーなものだったのか。


 実家はアレであり、ちゃんとした家なんてオックスターでしか持ったことがなかったし、本当に手紙って発想がなかった。

 実際に俺は一通も手紙を貰ったこともない。


「それはちょっと衝撃でしたね。別れの際に伝えておくべきでした」

「まぁ手紙はもういいじゃんか! こうして無事で顔を見せに来たんだしな!」

「こればかりはラルフの言う通りだな。心配かけたのは申し訳ないと思うが、互いに元気ならいいだろ」

「……ははっ、それもそうですね。あまりにソワソワする日々を送っていたものですから、再会の喜びもほどほどに口うるさくなってしまいました」

「それより、冒険者ギルドの方はどうだったんだ!? シャンテルから聞いた話じゃ、凄い冒険者がオックスターを拠点にしたって聞いたけどよ!」

「凄さで言ったらクリスさん達には到底敵いませんが、非常に安定した冒険者パーティが来てくれたんです。言ったら驚くかもしれませんが、前ギルド長がノーファストで口説いてくれたんです」


 どういった繋がりで、プラチナランク冒険者パーティがオックスターに来たのか気になっていたが、前ギルド長繋がりとは考えていなかった。

 ただ、考えていなかっただけで特段驚きはない。


 俺は良い印象を持っていないが、前ギルド長がグリースに下手に出ていたのも、冒険者ギルドを思ってのことだと副ギルド長が力説していたからな。

 ギルド長という職を降り、オックスターを去ってから何か罪滅ぼしがしたかったのだとしたら、プラチナランク冒険者を説得するくらいのことをしていてもおかしくはない。


「へー、そうだったのか。俺は全く良い印象がないが副ギルド長が前に言っていた通り、本当に冒険者ギルドを思ってはいたんだな」

「はい、そうなんです。やり方は間違っていましたが、前ギルド長は本当にギルドを考えてくれていた人でした。クリスさん達に許してもらおうとは一切思ってませんが、完全な悪意があってやったことではないということだけは知っておいて頂ければと思ってます」

「当時はグリースと同じくらいムカついたが、副ギルド長にそこまで言われたら憎みきれない。俺達が貶めてやろうと思っていなかったって言葉は信じさせてもらう」

「ありがとうございます。そう言って頂けて私が嬉しいです」


 副ギルド長は俺に笑顔を見せて頭を下げてきた。

 一番近くで見て来たであろう副ギルド長がここまで言うのだから、本当に仕方なしの部分が大きかったんだろう。


「それより、その冒険者パーティを紹介してくれよ! 今、俺達が住んでいた借家に住んでいるんだろ?」

「そうですね。クリスさん達のことを話したことで、その冒険者パーティ……【翡翠の銃弾】はその借家に住むことを決めたんですよ。ですから紹介することはもちろん可能ですし、恐らく家にも入れてくれると思います」

「やったー! これならパーティーもできるんじゃないか!?」

「……本当にパーティーができそうなのが怖いな」

「今日は依頼を受けていませんので、きっとその元クリスさん達の家にいると思います。私が案内しますので早速行きますか?」

「よし、行こうぜ! すぐに行こう!」


 こうして【翡翠の銃弾】という冒険者パーティを紹介してもらうこととなった。

 まさかのパーティーも行いそうだし、ラルフとシャンテルが暴れるのを今の内から覚悟しておかないといけない。



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