後日譚 第27話
前日に買い出しを終え、朝には王都を出立。
予定通り、昼前にはレアルザッドに着くことができた。
「もう何度も往復してるから、めちゃくちゃ近く感じるわ!」
「実際に二時間ちょっとで着くからな。王都とレアルザッドは近いだろ」
「ですね。でも、この距離でも最初に王都に行った時は本当に長く感じました」
「俺も! クリスから当時にしては大金を預かって見知らぬ街に行くって、ワクワクもあったけどそれ以上にめちゃくちゃ怖かったもんな!」
「王都という街を自分の中で大きく見てましたね。そんな緊張もあって、レアルザッドから出てからずっと心臓が高鳴っていたのを今も鮮明に覚えています」
二人が懐かしむようにそんな思い出を語った。
俺も今考えると、俺から盗みを働こうとした二人によく金を預けて王都に行かせたと思う。
ただその選択が大正解だった訳だし、あの時の選択が俺の運命を決めたといっても過言ではない。
「レアルザッドには色々と思い出があるな。俺にとっても、ラルフとヘスターにとっても始まりの街だもんな」
「だな! 俺はこの街で色々と終わって、そして始まった! スノーがいなかったのだけが少し残念だわ!」
「思い出の共有ができませんもんね」
スノーは名前を呼ばれたことで反応を示したが、何を言っているかは理解できなかったようで小首を傾げた。
ヘスターはそんなスノーに抱き着き、ワシワシと撫でまわしている。
「そろそろ街の中に入ろう。『七福屋』のルゲンツさんに挨拶してから、今日はレアルザッドでゆっくりしよう。そして明日の朝一で出立だな」
「そんな忙しいスケジュールなのか? せめて三日くらいは休んでいいと思うけど!」
「レアルザッドは特に報告する必要がないからな。言っても、最近帰ってきたばかりだし。オックスターとかノーファスト、エデストルでは長めに滞在するつもりではある」
「王都から近いですし、レアルザッドはいつでも来れますもんね。『七福屋』のおじいさんにだけ挨拶を済ませるだけでいいと思います」
「二人がそう言うなら、これ以上言うつもりはねぇけどよ!」
ラルフはまだ納得していないようだったが、渋々ながらも了承はしてくれた。
レアルザッドは思い入れの割りに知り合いが少ないからな。
グラハムも王都にいるし、俺にとってはルゲンツさんだけが唯一の知り合い。
長年住んでいたため二人には知り合いが多いようだが、それはまた別の機会ってことで勘弁してもらおう。
「それともう一つ気になったんだけど、クリスは自分の家に戻らないのか?」
俺がレアルザッドのことを考えている中、唐突にラルフがそんなことを切り出してきた。
クラウスとの決着はつけたし、親父や母さんに一応でも報告するのが筋というものだが……。
「戻るつもりはないな。両親共に二度と会うつもりはない」
「そうなのか。てっきり親にも復讐しようと考えているのかと思ってた!」
「それは――考えていない。もう会いたくもないしな」
考えていないと言ったが、クラウスを殺したことで両親への復讐も完了している。
自分の夢をクラウスに託した親父と、自分以上にクラウスを可愛がっていた母親。
クラウスを帰らぬ人にしたことが、何よりの復讐になったと俺は思っている。
「今日泊まる宿を探しましょう! その後に『七福屋』に向かいましょうね!」
「急に大きな声出してどうしたんだよ! 俺はもう少しクリスの話――」
「いいから宿屋探し! スノーもいるんだから、普通の宿屋じゃ駄目だからね!」
俺に気を遣ってか、ヘスターは柄にもないテンションで無理やり話を変えてくれた。
俺としては別に話しても良かったのだが、今更無理に話を戻す必要はないため乗らせてもらおう。
「そうだな。宿を探すとしよう」
「宿を探すって言ったって、この間泊まったところでいいだろ! 表通りにあるペット可のところがあったじゃん!」
「じゃあすぐに宿屋に向かおうよ。先にラルフが部屋空いているか確かめてきて」
「なんで俺が一人で行くんだよ! ヘスターが行ってこい!」
そこから二人の訳分からない言い争いを聞きながら、俺達は全員で以前泊まった宿屋に向かった。
値段が高めの宿ってこともあって部屋は空いており、無事に部屋を取ることができた俺達は、荷物を置いた後スノーには留守番してもらい『七福屋』へと向かった。
「相変わらずのボロい店だな! 結構お金は落としたはずなのに何にも変わってない!」
「まぁ前に来た時からそんなに時間は経ってないしな。それに店が変わったら何か嫌だろ」
「同感です。『七福屋』には思い入れがありますし、このままで残っておいてほしいです」
「確かにそうか! でも、爺さんが死んじゃったら潰れちゃうんじゃないか? 家族はおろか、他に従業員らしき人もいないしさ!」
「大丈夫だろ。高い買い物をするときは毎回小躍りするくらい元気だからな」
そんな会話をしながら、俺達は『七福屋』の中に入る。
店内も特に変わった様子はなく、勘定場で何かを磨いているルゲンツさんの姿があった。
「爺さん! また帰ってきた!」
「おお、ラルフにヘスターにクリス! 無事に戻ってきたのか」
「お陰様で無事だ。今日は報告も兼ねて寄らせてもらった」
「それは良かったのう。心配しておったから、こうして元気な姿が見れて何よりじゃ」
何かを磨いていた手を止め、満面の笑みで俺達の下に近寄ってきた。
そのままルゲンツさんと握手を交わし、俺達は王都で起こったことについてを話してから、改めて感謝の言葉を伝えたのだった。
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