後日譚 第20話
スノーへのプレゼントを購入し、パーティを行った翌日。
昨日は夜中まで騒いでいたため、寝起きはかなり最悪な状態。
重い瞼を必死に擦り無理やり目を覚まし、なんとかベッドから転がるように起きた。
まだ早朝だが、今日の午前中は一人で個人的に世話になった神父たちへのプレゼントとアレクサンドラへのプレゼントを買いに行く予定。
午後からは早速プレゼントを渡して回りたいし、特に時間に追われている訳ではないが休んでいる暇はない。
まだ眠っている二人とスノーを起こさないようにシャワーを浴びてから、俺は一人で宿屋を後にした。
みんなとの買い物も良かったが、一人でこうしてゆっくりと街を歩くのも悪くない。
ちなみに向かう場所は既に決まっていて、昨日最後に訪れた魔法専門店。
変装魔法の道具を探している時にタリスマンが売られていたのを見て、三人へのプレゼントはこれにしようと心の中で決めていた。
昨日既に決めていたのであれば今日わざわざ訪れることはないように思えるが、あのおばあさんとももう一度話がしたいと思っていたからな。
できれば何か効果が付与されているタリスマンが良いと思ってたし、時間がある今日訪れたという訳だ。
そうこう考えごとをしている内に、昨日訪れた魔法専門店に辿り着いた。
店の扉に掲げられている看板は『OPEN』となっており、朝早い時間でも営業している様子。
開いていなかったら王都を散歩しつつ、闇市にでも行こうと思っていたのだが……開いているなら先に買い物を済ませてしまいたい。
古びた木造の扉を押し開け、俺は店の中に入った。
商品の補充をしていたのか、昨日とは違って売り場で腰を下ろしているおばあさんが俺の目に飛び込む。
「おんや。昨日の今日でまた来てくれたのかい? それにしても随分と早い時間から来てくれたんだね」
「早起きしたから来てみたら、営業していたから入ったって感じだ。こっちこそ昨日の今日で尋ねてきて悪いな」
「悪いってことはないさ。商品に不満があって返品——って訳ではないんだよねぇ?」
「ああ。ちゃんと今日も買い物をしに来た」
俺がそう伝えると、嬉しそうに微笑んで頷いてくれた。
店の雰囲気だけではなく、店主のおばあさんもどことなくルゲンツさんと似ているんだよな。
「昨日いっぱい買ってくれたのにありがたいねぇ。それで今日は何を買いに来たんだい?」
「タリスマンを買いに来た。身に着けて効果が出るものがいいんだが、この店に売られているタリスマンはそういった類のものか?」
「私の店に売っているのは全て効果が付与されるものだよ。でも、それ故にちょっと値段が張るんだが大丈夫かい?」
「ああ、もちろん大丈夫だ。三つほど購入したいと思っている」
「あれま! 三つも購入してくれるのかい」
「プレゼントで渡す用のものだからな。神父二人に一つずつと王国騎士団の人に一つ。ちなみに効果はどれも同じものなのか?」
「いいや、それぞれ別の効果があるものだよ。今は暇だし説明してあげるから来てくれ」
腰を上げたおばあさんについていき、タリスマンが並べられている売り場についた。
この店では珍しくショーケースの中に陳列されており、盗まれないような対策が施されている。
それだけで高価な商品だと分かるし、そのことからも何か特別な効果を持つものだと睨んでいた。
結果として特殊な効果を持つタリスマンだということだったし、読みは間違っていなかったみたいだ。
「私の店で取り扱ってるのはこの五種類だよ。右の二つは回復魔力を上昇させるタリスマン。正確に言うと一番右のものは状態異常回復を上昇させるもので、右から二番目のものは単純な回復魔力を上昇させるものだねぇ」
回復魔力を上昇させるものも決して悪くはないが、オックスターの神父やアレクサンドラは恐らく回復魔法を使えない。
グラハムもグラハムで使う機会が少なそうな感じがする。
「回復魔力の上昇効果はあまり欲していないな。左の三つはどんな効果なんだ?」
「一番左のものはリジェネの効果があるものだね。効果は薄いけど体力が回復していくタリスマンだよ。左から二番目は単純に体力を上昇させるもの。真ん中のは一番右のものと似ていて魔力を回復させる効果があるよ。まぁどれも気持ち程度の効果だけどねぇ」
なるほど。追加で紹介されたものの方が魅力的に感じるな。
とりあえずオックスターの神父へのプレゼントは、真ん中のタリスマンがいいだろう。
正直、タリスマンをプレゼントするほど親しくしてもらった訳ではないが、応援したくなるような人柄だしな。
アレクサンドラには一番左のリジェネの効果があるものがベストなはず。
単純に体力を上昇させるものも良いとは思うが、俺は【自己再生】のスキルで勝手に回復されるありがたみ知っている。
これからも前に出て戦うであろうアレクサンドラには、リジェネ効果があるタリスマンが良いと思う。
問題はグラハムへのプレゼントだが、枢機卿を殺したせいもあって何かと大変そうだし、体力を上昇させるタリスマンがいいかもしれない。
無難に魔力回復も良いと思うが……それぞれ別のものの方が気分的にもいいし、グラハムには左から二番目のタリスマンを買うとしよう。
「説明してくれてありがとう。左から三つを一つずつ買わせてもらう」
「おおー、本当に買ってくれるんだねぇ。一つ金貨五枚だけど、サービスして合計で金貨十二枚でいいよ」
「いいのか? 豪遊しているが金はあまり持ち合わせてないから、遠慮なくサービスしてもらうつもりでいるが」
「もちろん構わないよ。これだけ売れることなんてないし、まとめて買ってくれるならありがたい限りだからねぇ」
「それじゃ遠慮なく金貨十二枚で買わせてもらう。ありがとう」
おまけしてくれたおばあさんにお礼を伝えつつ、金貨十二枚でタリスマンを三つ購入した。
これで本当にお金がほぼなくなってしまったが、非常に良い買い物ができた気がする。
喜んでくれたらいいのだが……こればかりは渡してみない限り分からないな。
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