後日譚 第10話
とりあえずルゲンツさんへのプレゼントは買えたし、次の人へのプレゼントを買いに行こうか。
順番的に言うと……グラハムになるのだろうが、グラハムは俺が個人的に世話になった人。
三人で買いに行くのは少し違うため、オックスターのギルド長こと副ギルド長だろうか。
次はシャンテルで、グラハムのプレゼントと共にオックスターの神父への土産も買っていきたい。
個人的には一番好きな教会だったし、神父の人柄も良かった。
オンガニールが生息していたことで散々世話になったため、土産を買っていくのは決定事項。
ただ最初に副ギルド長へのプレゼント選びだな。
「次はオックスターの面々へのプレゼントを買おう」
「副ギルド長とシャンテルか!」
「あと【銀翼の獅子】の皆さんへも買っていきたいですね」
「そうだな。花は枯れるから向こうで買うとして、四人が喜びそうなものを買って行こう」
「レオンさんに強くなったことを直接報告したかったなぁ」
「直接はもう無理だが、しっかりと報告しに行こう。俺もアルヤジさんにお礼も兼ねて報告したい」
アルヤジさんには返せないほどの恩を施してもらった。
スキルの無詠唱での発動方法から、戦闘での立ち回りまで丁寧に教えてもらったし、何より一番大きかったのはスキルをもらったこと。
【痛覚遮断】【疾風】【剛腕】【生命感知】【知覚強化】【知覚範囲強化】【隠密】【狂戦士化】の八個のスキルは、全てアルヤジさんが持っていたスキル。
どのスキルも汎用性が高く、フル活用したものばかりなのは今見直しても分かる。
特に【痛覚遮断】と【狂戦士化】のスキルは別格で、この二つのスキルがなければ俺はクラウスまで辿り着くことができていなかった。
俺もラルフ同様、直接会ってお礼を伝えたかったが……それが叶わない分、しっかりと墓前で報告したい。
「グリースにカルロと、戦った相手も濃かったよな! 本当にカルロを倒せたのは良かった!」
「その二人は思い出したくもない相手ですね。二人のことは頭から消して、プレゼント選びに行きましょう。次はどこのお店を目指しますか?」
「冒険者ギルドの副ギルド長だから、やっぱり武器が良かったりするのか?」
「武器は使わないんじゃないのか? 冒険者と揉めた時は使うかもしれないけどさ」
「なら、他のアイテムの方がいいか。とりあえず錬金術屋に行ってみよう。シャンテルへのプレゼントも見つかりそうだし、副ギルド長へのプレゼントも見つかりそうじゃないか?」
「良いと思います。順番がズレてしまいますが、『ガッドフォーラ』のトリシャさんへのプレゼントも見つけられそうですしね」
「俺も賛成! 王都で一番有名な錬金術師のところへ行こうぜ!」
二人も賛成してくれたため、錬金術屋へ向かうことにした。
王都一がどこかは分からないため、外観が一番良い店に入るとしよう。
『ノイスグレイブ』を離れてから約五分。
思っていたよりも近くで錬金術屋を見つけることができた。
外観はあまり好みではないが、近いしかなり賑わっているため入ってみることに決めた。
店内に入った瞬間に、突き刺すようなドギツイ臭いが鼻を襲ってきた。
『旅猫屋』も『ガッドフォーラ』も臭いはキツかったものの、植物を潰したものを凝縮させたような匂いで酷いというものではなかったのだが……。
この店の臭いは思わず鼻をつまんでしまうほど、強烈な異臭を放っている。
店内にいる客のほとんどが鼻をつまみながら物色していたため、俺達も遠慮なく鼻をつまみながら店内を見て回ることした。
この臭いということを考えると、相当繁盛している部類に入ると思う。
普通なら絶対に寄り付かない店なのにも関わらず、客が来るということは商品の質が高いということ。
かなりの期待を持ちながら、三人で気になる商品を選んでいった。
俺の目に止まるのは、やはりポーションの類。
『旅猫屋』でも『ガッドフォーラ』でも、ポーションの生成を頼んでいたしな。
ただ二人へのプレゼントとなると、ポーションではあまり喜ばれない可能性が高い。
個人的に気になる気持ちを抑え、他の売り場に目を向けた。
「クリス、これなんかどうだ? シャンテルが喜びそうだと思ったけど!」
「錬金術に使う鍋か。確かに喜びそうではあるが、持ち運びが大変そうじゃないか? あまりに大きいし、落としたら壊れそうなのも勘弁だな」
「えー、良いと思ったけど駄目かー!」
「錬金鍋が駄目なのでしたら、こちらはどうでしょうか?」
そう言ってヘスターが見せてきたのは、秘伝魔力油と書かれた瓶に入った油。
用途は一切分からないが、錬金で使うものなのか?
「よく分からないけどアリかもしれない。秘伝ってことはこの店でしか買えなさそうだしな」
「クリス! こっちの神羊の角粉ってのはどうだ? これも錬金で使うものみたいだぞ!」
「そっちもよく分からないが買ってみるか? シャンテルの分とトリシャはその二つでいいか」
「シャンテルは何か文句を言いそうな感じあるけどな!」
「プラスで何か王都っぽい土産を買えばいいだろ。そっちのが喜びそうなのは目に見えている」
シャンテルはベタなものが好きそうだし、錬金で使うであろう素材に加えてベタな土産を買えば喜んでくれるはず。
後は副ギルド長へのプレゼントも選ばないといけないな。
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