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【完結】追放された名家の長男 ~馬鹿にされたハズレスキルで最強へと昇り詰める~  作者: 岡本剛也
8章

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後日譚 第9話


 メインストリートを回ること約二十分。

 様々な店に目移りしながらも、ようやくマジックアイテムの売られている店を見つけた。


「クリスさん、この店なんかいいのではないでしょう? 店頭にマジックアイテムが置かれていますよ」

「俺、この店の名前を聞いたことがあるぞ! エデストルのダンジョンに潜っている冒険者が名前を出していたはず!」

「へー。遠く離れた街にも名前が届くくらいの店なのか」


 店の名前は『ノイスグレイブ』。

 規模もそこまで大きくないように見えるが、ラルフの言っていることが本当なら良い店であることは間違いない。


「ノイスって有名な人の店って聞いたぞ! なんでも元ヒヒイロカネ冒険者でありながら、引退後はマジックアイテムを作りまくったらしい!」

「その話を聞くと期待してしまうな」

「元冒険者が作ったマジックアイテムなら、ルゲンツさん以外のプレゼントも見つかるかもしれませんね」

「だな。ボルス達やエリファスへのプレゼントも探してみようか」


 ラルフの前情報で期待度が更に上がっている中、俺達は『ノイスグレイブ』の店内へと入った。

 店の外からでも賑わっているのは分かったが、中は思っていた以上に混雑している。


 トラブルにならないよう、店の中を回るルートが決まっているようなのだが、それでもゆっくりと見ていられないぐらいに人がいる。

 規模が大きくないことが影響していて、ちゃんと吟味するには何周もしなくてはいけないな。


「すっげぇ人だな! 落ち着いて探せないけどどうする?」

「一際目を引いたものを手に取ろう。流石にこの店だけに時間は費やしたくない」

「分かりました。コレというものがあれば、迷わず購入させて頂きます」


 運よく並ばずに入れたが、俺達の後ろには軽く列ができ始めているため誰々へのプレゼントとかを考えず、判断基準を高くしてマジックアイテムを購入することに決めた。

 流されるように進む中、俺は一つだけマジックアイテムを手に取った。

 

 正直、どんなアイテムなのか分からず手に取ったが、良さそうなものに見えたというだけ。

 このアイテムだけ持って会計を済ませ、逃げ出すように店外へと出てきた。


 ラルフもヘスターもげんなりしており、僅か数分しか店にいなかったのだが疲弊した気がする。

 人気店というのは分かったが、人気すぎるのも考えものだな。


「なんとか一個だけ買えたぜ! 人多すぎるだろ!」

「外から賑わっていることは分かっていましたが、店内は異次元でしたね。一周じゃ見きれないから何周もしている人が多かった印象です」

「俺も一つ買えたし、『ノイスグレイブ』での買い物はもういいだろう」

「私は何も買えなかったのですが、ラルフとクリスさんは何を買ったんですか?」


 ヘスターは何もピンとこなかったようで手ぶら。

 ラルフはというと、小さな眼鏡のようなものを持っていた。


「俺はより遠くのものが見えるというマジックアイテムを買った! 爺さんは目が悪いだろうし、気に入ってくれるだろう!」

「遠くのものが見えるってどれくらいのものなんだ? あと、近くのものも見えやすくなってるのか?」

「詳しいことは分からねぇ! 全然見る時間なかったしな! ちょっと試してみてもいいかな?」


 人に渡すプレゼントを使うってのはどうかと思うが、効果が曖昧なまま渡す方が失礼なのは間違いない。

 ラルフに頷いて返事をし、早速買った眼鏡を装着した。


「……うーん。特に変わらないぜ? 不良品かもしれねぇ!」

「そんな訳ないだろ。ちょっと貸してくれ」


 ラルフに着けさせたはいいものの、何も分からず仕舞いなため俺が着けることにする。

 奪うように眼鏡を手に取り、早速装着してみたのだが確かに何も変わらない。

 

 ……いや、マジックアイテムだから魔力を流せばいいのか。

 そう結論付けた俺は、眼鏡に魔力を流してみると――肉眼じゃ絶対に見えない遠くのものがハッキリとこの目に映った。


「魔力を流したら遠くのものまではっきりと見えるようになった。しかも……魔力の量によって、見たい距離を自由自在に変えられる」

「それ凄いですね。私も見てみてもいいでしょうか?」

「もう一回使ってしまったしいいと思う」


 ラルフが購入した眼鏡をヘスターに手渡し、俺が教えた通りに使用したようで感嘆の声を漏らした。

 売れ残りではないどころか、人気店の商品なだけに非常に使える逸品。


 ルゲンツさんが魔力のコントロールができるのであれば、これをあげてもいいかもしれない。

 というか、【視覚強化】のスキルを持っていないため俺も欲しいぐらいだ。


「直感で買った割りにはいいアイテムを選べたんじゃないか!? クリスは何を買ったんだ?」

「俺は……ちょっとよく分からない」


 購入したのは黒いローブのようなもの。

 ルゲンツが愛用しているローブに似ていたのと、直感的に良いと思っただけで効果は何も分からない。


「分からない? 効果を見て買ったんじゃないのか?」

「ああ。これだと思ったのを直感的に手に取った。ちょっと羽織ってみてくれ」


 またしても試すべく、ラルフに身に着けるよう促した。

 怪訝そうな表情を浮かべながらも羽織ったラルフは、羽織った瞬間にその効果が分かったのか声をあげた。


「このローブ、薄いのに寒くないぞ!! 耐寒ローブかもしれない!」

「金貨五枚だったし、耐寒ローブなら期待外れだな。他に何か効果がないのか?」

「分からねぇけど……もしかしたら暑くもないかも?」


 要領が得ないコメントなため、またしてもラルフからアイテムを奪い取り、俺が実際に身に着けてみることにした。

 過ごしやすい気温だから分かり難いが……確かに耐寒ローブではありそう。


「ヘスター、【ファイア】の魔法を使ってみてくれないか?」

「分かりました。【ファイア】」


 周囲に気をつけつつ、ヘスターに魔法を使ってもらって試すことにした。

 結構な大きさの火を近づけたのだが、やはり一切熱さを感じない。

 このローブは耐寒耐熱ローブで間違いなさそうだ。


「一切暑くないな。魔力も必要なさそうだし、こっちも中々いいアイテムっぽい」

「爺さんだし、寒くも熱くもならないのは喜ぶかもな! 似たようなローブを愛用しているのもポイント高い! 俺のとクリスの、どっちをプレゼントするんだ?」

「んー、とりあえず全て出揃えてから決めよう。ルゲンツさんになら両方あげてもいいしな」


 とりあえず良いアイテムを二つ買えたし、幸先の良いスタートを切れたと思う。

 二の二で当たりだし、もう一度『ノイスグレイブ』で購入しても良さそうだが……別の店も見たいし移動するとしようか。


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