後日譚 第8話
さて、どこから見て回るか。
最大手の道具屋から向かい、買えなかったプレゼントを専門店で買うってのが一番効率は良いはずだが……今更効率なんて考えるのは馬鹿馬鹿しい。
「二人は行きたい場所とかあるのか?」
「私は特にありません。強いて言うのであれば、全てを見て回りたいですね」
「なんだそりゃ! 王都中なんて一日じゃ見られないだろ! 俺はやっぱメインストリートが見たいな! 基本的に避けて通っていたしよ!」
「ヘスターはどこでもいいみたいだし、まずはメインストリートから見に行くか」
「ちなみにクリスは見たい場所とかないのか?」
「俺は……俺も特にないな」
本音を言うのであれば闇市に行ってみたかったが、行ってみたい理由が買い物目的ではないからな。
絶対に今日行く場所ではないし、後で一人で行けばいいだけなため言葉を呑み込んだ。
俺もヘスターも特に行きたい場所がないということで、ラルフが提案したメインストリートを目指して歩を進める。
「まだ早朝なのに凄い賑わいですね。まずはどこの店から行きますか?」
「誰のプレゼントから買うかで決めよう。ルゲンツさんのから買っていくか?」
「いいですね。分かりやすいようにこれまでの軌跡を辿るように買って行きましょう」
「――の前に、まずは朝ご飯を食べようぜ! 腹が減って仕方がない!」
「確かに朝飯は食ってないが、時間的にまだ早くないか?」
「んなことないだろ! 昼も良いもの食べたいし、お腹が空くように早めに食べようぜ!」
店に向かおうってタイミングだっただけに、少しだけ渋るが……まぁ先に朝飯を済ますのもありといえばあり。
朝食を軽く済ませるため、俺達は近くにあった喫茶店に向かった。
扉を開けると心地の良い鈴の音が鳴り、この音だけで店が一回り良く見えるのだから不思議だ。
長年営業しているのか、レトロな感じで雰囲気の良い店内。
「クリスとヘスターは何を食べるんだ? 俺は……サンドイッチとミックスジュース!」
「私もサンドイッチと紅茶にします」
「俺はパンケーキと珈琲にする」
「よし、決まり! 早速注文してくるわ!」
ラルフが注文を行い、しばらく待っていると運ばれてきたサンドイッチとパンケーキ。
二人が頼んだサンドイッチも具材たっぷりで美味しそうではあるのだが、俺が注文したパンケーキは群を抜いて美味しそう。
ふっわふわのパンケーキの上にバニラアイスと蜂蜜がかかっており、更に数種類の果物まで乗っている。
ヘスターも朝食ということでサンドイッチにしたのだろうが、俺の頼んだパンケーキに釘付けとなっているのが分かった。
ここまで目を輝かせている訳だし、交換してあげることも頭に過ったが……このパンケーキに関しては俺も食べたい。
ヘスターとラルフの視線を感じながらも、俺は一口大に切り分けたパンケーキを口の中に放り込んだ。
「うんまぁ……。このパンケーキ、めちゃくちゃ美味しいぞ」
「うぅ、私も食べたくなってきました! 追加で注文していいですか?」
「昼も食べれるならいいんじゃないか?」
「えっ!? なら俺もパンケーキを注文する! サンドイッチも美味いけど、クリスの頼んだパンケーキが美味そうすぎる!」
我慢ならなくなった二人が追加でパンケーキを注文し、俺はパンケーキ一つと珈琲。
ラルフとヘスターはサンドイッチに加えてパンケーキも平らげ、ご満悦の表情で喫茶店を後にした。
たまたま目に止まった店に入っただけだったが、思わぬ美味しい料理を食べることができた。
珈琲も美味しかったし、メインストリートで長年営業できている理由がよく分かったな。
「はぁー、パンケーキが最高に美味しかった!」
「本当に美味しかったです。もう一枚食べたいぐらいにはドハマりしましたね」
「営業時間が長かったし、明日また喫茶店に行こうか。俺もあのパンケーキはもう一度食べたい」
「いいね! 何か色々と充実していて既にめちゃくちゃ楽しい! 良い気分の状態で買い物に行くとしようぜ!」
「ルゲンツさんへのプレゼントでしたよね? 何をあげたら喜んでくれるのでしょうか?」
「質屋だし、珍しい骨董品とかじゃねぇか?」
確かに珍しい物を欲しがりそうなイメージはあるが、流石に安直すぎる気もする。
仕事であって、本人が骨董品が好きかどうかは定かではないしな。
「酒とかは呑んでいるのか? 呑むなら高い酒が良いと俺は思った」
「んー、お酒を呑んでるところを見たことはありませんね。よくお茶なら飲んでいますが」
「多分、酒は呑まないぞ! 昔に金がもったいないから呑まないって言ってるのを聞いた!」
「なら酒も駄目か。マジックアイテムでも見てみるか? 珍しいものがあればそれを買えばいいし、需要の高そうな物ならそっちを買えばいい」
「いいね! エデストルでもマジックアイテムは見たけど、なんかパッとしないものばっかだったし俺も単純に気になる!」
「エデストルのは売れ残りでしたからね。ちゃんと売りに出されているものがどういうものなのか、私も気になります」
「なら決まりだな。マジックアイテムを売っている店に行こう」
向かう店が決まったため、マジックアイテムが売られている店を探すこととなった。
情報はほとんどないため手探り状態での捜索となるが、それもまた一興だろう。
マジックアイテムが売られていなくとも気になった店があれば、構わず入るつもりでいるしな。
三人で他愛もない会話をしつつ、メインストリートを歩きながら店の捜索を開始したのだった。
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