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【完結】追放された名家の長男 ~馬鹿にされたハズレスキルで最強へと昇り詰める~  作者: 岡本剛也
8章

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第423話 エリートVS雑草


 凄まじい勢いで迫ってくる砂の突風を、氷属性のブレスであっさりと防いだスノー。

 そのまま猛スピードでエリファスの下へと駆け寄ると、額の部分の氷柱を伸ばし突き刺した。


 スノーの一撃は心臓部を完璧に突き、普通の生物なら一溜まりもないはずなんだけど……。

 相手は既に死んでいて、心臓はとうの昔に自分で刺している。

 エリファスは両手に魔力を帯びさせると、貫通させた状態から動けずにいるスノーに魔法を放った。

 

「【ツイングレネード】」


 スノーを捕まえるようにして、ゼロ距離から放ってきた爆発によって攻撃する火属性魔法。

 氷属性を得意とするスノーにとって火属性は相性の悪い属性のため、まともに食らっていたら大ダメージを負ってしまう。


 爆発によって起こった煙によってどうなったか見えない中、私は心配してスノーの行方を必死に探す。

 最後の光景から倒れていてもおかしくないと思っていたけど、空中を駆けるように走るスノーの姿が目に入ってきた。


 どうやら体に纏っていた氷を解除し、ギリギリでエリファスから逃げ延びた様子。

 ヒヤヒヤしたけど、とりあえず致命傷は負っていないようで一安心。


「スノー、大丈夫? 守ってくれてありがとう」

「アウッ!」


 一度私のところまで戻ってきたスノーを撫でながら労いつつ、傷がないかの確認を行う。 

 体の至るところに浅い傷は負っていたものの、大事に至る傷は負っていなさそうだ。


「メランキマイラとノーブルリッチは倒してくれたんだね。スノーはやることを果たしてくれたのに、守ってもらって本当に情けない」


 情けなさからそう言葉を漏らすと、スノーは私を慰めるように手をペロペロと舐めてきた。


「ごめん、弱気になっている暇はないね。ここからは私一人で戦うから。スノーは私が倒れた後に運び出すための力を取っておいて」

「……アウ」


 少し不安気な表情を浮かべつつも、小さく返事をしてくれたスノーに背中を預け――私は再びエリファスの下へと近づいていく。

 もしかしたら共闘した方がいいのかもしれないけど、物理攻撃も氷結ダメージが入らないエリファスは、スノーにとって致命的なほどに相性が悪い。

 

 それならば、私が後のことを考えずに全力を尽くして戦った方が勝ち目がある。

 残り少ない魔力の中、【魔力暴走】を発動させる覚悟を決めた私は一歩ずつ近づいていき、エリファスとの最後の戦いに挑む。


「【魔力暴走】」


 本日二度目の【魔力暴走】。

 この短いスパンでは【魔力回復】も貯まりきらないだろうし、ここで絶対にエリファスを仕留めなくてはいけない。

 そんな私がとった行動は――エリファスが行ったものと同じような自傷行為に近いもの。


「【ライジング・アクセラレート】」


 両腕を抱くような形で魔法を発動させ、私自身に雷魔法を打ち込む。

 強烈な痺れが全身を駆け回り、痛みで悶えそうになるけど……唇を噛み切る勢いで力強く噛み、痛みを気力だけで堪える。


 ――こんな痛みよりも、ゴールの見えない泥の沼で泳いでいるような裏路地暮らしの方が何倍も苦しかった。

 私は昔を思い出し、そしてクリスさんに出会ってからのことを思い出して、ニヤリと笑う。

 

 うん、もう痛みには慣れた。

 腕を伸ばしながらアキレス腱を伸ばし、準備運動も完了。

 ここからは――エリファスに何もさせずにブチのめす。


 【ライジング・アクセラレート】は電気を体に流し続けることで、体にかかっているリミッターを解除させる魔法。

 無理やり解除させるため戦闘を行うどころではない痛みが常に伴うし、クリスさんやラルフがいるから使う機会すらなかったけど、この場面は完全な使い時。


 自分の体とは思えないほどの速度で駆けながら、一気にエリファスに近づいていく。

 なんだかレアルザッドで盗みを働いていた時のことを思い出しながら、私はエリファスの懐へと潜り込み、体に流れている魔法をぶっ放す。


「【ライトニングボルト】」


 フェシリアさんの得意魔法で、初めて見た時からひっそりと影で練習していた魔法。

 超至近距離でまともに食らったエリファスは、体の大部分を黒こげにしながらも反撃に出ようとしている。

 

 魔法を唱えられる前にもう一発【ライトニングボルト】を打ち込み、完全にエリファスの機能を停止させた。

 ここまでボロボロにしても【シングスリペア】で元通りになってしまうため、エリファスが修復する前に黒い塊に高火力魔法を放つ。


 地面を蹴り上げ、逃げられないような距離まで近づき――私は魔法の詠唱の開始した。

 後ろでは修復したエリファスが、ジャンプした私の背中目掛けて魔法を唱えているけど、ここまできたら一切気にせずに黒い塊を倒すことだけに意識を向ける。


「“世界を創造する四神の二神。この世を照らし悪を焼却する裁きの光と、この世に慈愛を届ける命の息吹。血の流れよりも紅きもの、時の流れよりも速きもの、昏きものに光指す道を示さん。我が身を糧にその力と為せ――”【プロミネンスボルテックス】」


 【魔力暴走】によって極大魔法となった【プロミネンスボルテックス】が、エリファスを操っていた黒い塊に直撃する。

 それと同時に背中に強烈な熱さが襲うけど、気にせず打ち込み続ける。


 黒い塊は一生耳に残るような不気味な叫び声を上げながら、私が放った太陽よりも眩い炎雷撃によって――綺麗さっぱり消え去ったのを確認。

 安堵と共に全身の力が抜け、強烈な痛みも襲ってきた。

 

 魔力も切れ、体力もなくなり、背後から放たれた魔法と自分で打ち込んだ魔法でボロボロ。

 受け身の体勢も取れないまま地面へと落下していき、このまま落ちたら死ぬと思っていたのだけど……私を受け止めてくれたのはモフモフの体。


「スノー、ありがとう」


 見えていないけどスノーが支えてくれたことは分かったため、感謝の言葉を伝えた。

 それから私は最後の力を振り絞り、スノーを支えになんとか立ち上がってエリファスに目を向ける。


 【シングスリペア】がかけられたお陰で体は綺麗な状態。

 ただ、糸の切れた人形のように横たわったまま、一切動く気配はない。


「……違った形で出会えていたら、もしかしたら仲良くなれたかもしれない。色々と辛かったね、本当にお疲れ様。ゆっくり休んで」


 白髪の混じった髪の毛。

 表情は一切変わらず無表情のまま、躊躇うことすらなかった自死。


 エリファスが思い詰めていたのは、初めて会った私でも分かった。

 安らかに眠るように死んでいるエリファスに労いの言葉をかけてから、私もスノーの背中に倒れるように眠ったのだった。



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― 新着の感想 ―
やっぱり最後は優しいな
[一言] ドラグスレイブ
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