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【完結】追放された名家の長男 ~馬鹿にされたハズレスキルで最強へと昇り詰める~  作者: 岡本剛也
8章

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第422話 死体操作


 その魔法が唱えられたと同時に、死んだはずのエリファスの体に魔力が戻り始めた。

 最初は一体何をしているのか分からなかったけど、今のこの状態を見てエリファスが何をしたのか私は理解した。


 私が【魔力回復】での魔力を貯めているように、エリファスも魔力を貯めてから自死。

 そして死んだと同時に魔力が解放され、自動的に黒い塊のような魔法が発動されるようにしていた。


 つまりエリファスは自らが死体となることで、得意とする死体操作の魔法を自らにかけたということ。

 行動全てがぶっ飛んでいるし勝敗がどうであれ、短剣を心臓に突き立てて死んだことには変わりない。


 私との戦闘が終わって魔力が尽きた段階で、エリファスは二度と目を覚ますことはないと思う。

 自死も含めて躊躇いもせず実行したということに――エリファスの尋常ならざる覚悟と、完璧に成功させたということに圧倒的な魔法の才を感じた。


 感心と共に畏怖の念を覚えてしまっているけど、ここで躊躇している猶予は私にはない。

 【魔力暴走】ももうすぐ解除されてしまうだろうし、エリファスが死んだことで覚醒した今、【魔力暴走】が切れてしまったら私に勝ち目はなくなる。


 短期で勝負をつけるため、高火力の上級魔法をエリファスに向けて放つことを決めた。

 まずはエリファスの頭上に浮いている、黒い塊を狙って攻撃する。


「【バーンライトニング】」


 両の手で魔力を練り込み、全てを焼き尽くす炎雷魔法。

 目にも止まらぬ速さの閃光が、狙い通りエリファスの頭上に浮かぶ黒い塊目掛けて一直線で飛んでいった。


 【魔力暴走】のお陰で威力も速度も桁違いになっており、この【バーンライトニング】を無傷で防ぐことはラルフでも不可能。

 実体があるなら確実に吹っ飛ばすことができる――そう確信していたのだけど……。


「【ソウルプロテス】【ガイアアームド】」


 またしても耳障りの悪い口調で魔法を唱えた……いや、唱えさせられたエリファス。

 エリファス自身に青いオーラのようなものを纏ってから、土属性魔法により全身を岩の達磨のようにし、私が放った【バーンライトニング】に体ごとガードしに動いた。

 

 頭上に浮かぶ黒い塊を、エリファスが身を挺して守るその姿は形容し難い不快感があり、術者であるはずのエリファスが完全に手駒として動かされている印象しかない。

 もちろんのこと、【バーンライトニング】を受けてエリファスの体が無事なはずもなく、青いオーラや岩の鎧も意味をなさずに後方へと吹っ飛ばされていった。


 ただ一定の距離まで飛ばされると、全身に繋がっている糸によって勢いは完全に殺されて止まった。

 黒い塊が糸を引くように動かすと、空中で止まったエリファスはすぐに先ほどの定位置に戻り、何事もなかったかのようにだらりと宙吊りになっている。


 既に死体ではあるのだが体の損傷は激しく、腕や足はあらぬ方向に曲がっていて頭部もかなりの部分抉れている。

 いくら糸で動かされているとはいえ、まともに動くことは出来なくなるんじゃないかと思っていたけど……。


「【シングスリペア】」


 エリファス自身が唱えた魔法により、損傷していた部分がみるみると修復されていった。

 決して“治癒”といったものではなく、完全に“修復”といった感じ。


 エリファスを早いところ楽にさせてあげたいという気持ちが芽生えるものの、意味不明な能力すぎてどう戦うかが見えてこないのが現状。

 魔法も見覚えのない魔法ばかりだし、魔法が意思を持っているかのように動いて術者を操るなんて噂でも聞いたことがない。


 やはり最初に決めた通り、高火力魔法で修復される前に押し切るのがベストだと思う。

 分析した上でその結論に至った私は、引き続き上級複合魔法をエリファスに向けて放つことを決めた。


 そこからは高火力魔法でエリファスを仕留めにかかる私と、防御魔法で防ぐエリファスとの戦いが始まった。

 ボロボロになっては【シングスリペア】という魔法で修復し、再び身を挺して黒い塊を守るエリファスに魔法を打ち込む。


 いつか押し切ることができると思っていたのだけど、押し切れるどころか次第に慣れ始めている様子を見せ、返しに魔法で反撃を入れてくる始末。

 そして、あと一歩仕留めきれないまま――私の魔力は底を尽き、【魔力暴走】が解除されてしまった。


 倒れると同時に貯めていた【魔力回復】のお陰で、再び体を動かせるぐらいの魔力は戻ったのだけど、【魔力暴走】が切れてしまった今は完全に手詰まり状態。

 エリファスの頭上を浮かんでいる黒い塊はまだ魔力を帯びているし、形勢は逆転して私が不利な立場に立たされている。


 エリファスをゆっくりと歩かせながら近づいてくる黒い塊に、じりじりと後退しながら頭を必死に働かせたけど……何も思い浮かばない。

 そんな私を今度はエリファスが仕留めようと動き、魔法の詠唱を開始し始めた。


「【サーブルスター】」

 

 吹き荒れる砂の突風が私目掛けて飛び込んでくる。

 逃げるか、再び【魔力暴走】で応戦するか。

 何が正解なのか分からずにいると――颯爽と現れたスノーが、私の前に立った。



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