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【完結】追放された名家の長男 ~馬鹿にされたハズレスキルで最強へと昇り詰める~  作者: 岡本剛也
8章

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第420話 切り札


 エリファスとの戦いまでとっておきたかったけど、エリファスよりも危険なのは確実に元英雄の方。

 そう判断した私は、実戦では一度も使わずいた最後の切り札を切ることに決めた。


 フィリップさんの前でしか使ったことはなく、そのフィリップさんから使用を直々に止められていたスキル。

 常人が使ったら死に至る可能性の高い危険なスキルと言われたけれど、影でずっとこのスキルを使えるように練習をしてきた。


 そんな危険なスキルとは――【魔力暴走】。

 フィリップさんから教えてもらうまでは、【魔力暴走】の発動のさせ方すら分かっていなかったスキルで、発動させると同時に空気中に満ちている魔力を吸い上げて自分の魔力として使用することができる。


 これだけ聞くとデメリットのないスキルのように聞こえるけれど、【魔力暴走】は全ての魔力を使い切るまで解除することができないスキルなのだ。

 スキル発動者を死に至らしめることもある強大なデメリットがあるからこそ、特殊スキルではなく通常スキルなのだと思う。


 クリスさんの【自滅撃】以上の自爆スキルなのは間違いなく、なんとか自分の意思で解除できるように特訓を積んできたのだけど……結局自力での解除は不可能なまま。

 そこで私が考え出したのは、特殊スキルである【魔力回復】の方を上手く使う方法。


 【魔力回復】は常に発動しているスキルで、魔力の自然回復速度が上がるといった内容のスキル。

 私はなんとか【魔力回復】のスキルをコントロールし、回復する魔力を貯めることができないかに焦点を当てて密かに練習していた。


 複数のスキルを自在に操るクリスさんからのアドバイスもあって、猛練習の末【魔力回復】のスキルをコントロールすることに成功。

 【魔力暴走】を発動させた後、魔力が切れて【魔力暴走】のスキルが解除されてから、【魔力回復】で貯めた魔力によって一気に回復させるという手法により、【魔力暴走】は実戦で使えるレベルにまで達している。


 ただ最後の切り札と言ったように、回復できる魔力量というのはたかが知れており、その後の戦闘には大きな影響を及ぼしてしまう。

 周囲の魔力も使ってしまっていることから、自然魔力回復量も極端に減るし、敵が最後の一人となった時に使うのがベストなのは分かっているけれど……。

 思考している間にも近づいている元英雄のアンデッドを見て、ここが使い時だと私は判断した。


 大きく息を吐き、そして私は小さく言葉を呟く。


「【魔力暴走】」


 スキルを発動させたと同時に周囲の魔力を一気に取り込み、体の内から力が湧いてくるような感覚。

 今ならなんでもできそうな気がするけど、あくまで冷静に元英雄のアンデッドを仕留めにかかる。


 まずは小手調べで初級魔法から放ってみようか。

 さっきまで感じていた恐怖心は消え去っており、どう倒そうかしか私の意識は向いていない。

 【暴走魔力】の使用前と使用後の変化を調べるためにも、まずは初級魔法で様子見を行う。


「【ストーンアロー】」


 溢れ出る魔力を練り込み、詠唱によって魔法に変えて解き放つ。

 普通ならこぶし大の大きさにしかならない【ストーンアロー】だけど、先ほど放った【メテオフレイム】と同等以上の大きさの岩が練り上げられ――。

 詠唱が終わると同時に、元英雄のアンデッドに向かって飛んで行った。


 元英雄のアンデッドは先ほどと同じように、飛んでくる【ストーンアロー】を拳で砕こうと腕を振り下ろしたのけど、砕いたは砕いたようだけど威力を殺し切れなかったようで、砕けた一部の【ストーンアロー】が頭部に直撃。

 軽くよろめき、ここまで淡々と進んできていた足がようやく止まった。


 ダメージとしては全然だと思うけど、さっきは上級魔法をいとも簡単に防がれたのが初級魔法でダメージを与えることに成功。

 こうしている間にもドンドンと周囲の魔力を巻き上げ、私の体内に溜まっていっている。


 動きを止めた元英雄のアンデッドを見て、好機と見た私はすかさず上級魔法の詠唱を始めた。

 アンデッドとなって完全にエリファスに支配されながらも、歴戦の戦士としての経験がそうさせたのか、私が上級魔法の詠唱を始めた瞬間に駆け出した。

 魔法が放たれる前に仕留める――高速で近づいてくる元英雄のアンデッドの動きから、そんな意図を読み取りつつ私は冷静に魔法を切り替える。

 

「【エアロボール】」


 短縮詠唱ができない上級魔法から短縮魔法が可能な中級魔法に切り替え、駆け寄ってくる元英雄のアンデッドに魔法を放った。

 身に着けていた超良質な盾を構え、私の放った【エアロボール】を防ごうとしてきたけど……。


 【エアロボール】の大きさは、縦横四メートル強の暴風球。

 更に、元英雄のアンデッドが砕いた【メテオフレイム】と【ストーンアロー】の破片を巻き込んでいるため、大量の岩の欠片が高速で飛び交っている状態。


 どんな攻撃も防ぐ超良質な盾であろうが、四方八方から飛んでくる攻撃を全て防ぐことは不可能。

 巨大な【エアロボール】は元英雄のアンデッドを一瞬にして包み込むと、大量の岩の欠片と風によって起こる鎌鼬によって、無数の攻撃を浴びせていった。


 【エアロボール】が通り過ぎ、次に肉眼で元英雄のアンデッドの姿が見えた時には、体の至る箇所が削げ落ちており片膝をついている状態。

 頭部の一部も岩の欠片で削り取られていたが、アンデッドだからかまだ体は動いている。


「できることなら、生きていた頃のあなたと会ってみたかったです。安らかに眠ってください。――【エレキトニトルス】」


 名も知らない元英雄のアンデッドにそう声をかけ、私は今度こそ上級魔法を打ち込んだ。

 強力な雷撃はまだ僅かに動いていた体に直撃し、その雷の眩い光りと共に跡形もなく消え去った。


 本当に強かったし、実際に最後の切り札である【魔力暴走】を使わなければ倒すことはできなかったと思う。

 仮にアンデッドではなく、生きていて自ら思考できていたのだとすれば、【魔力暴走】を使ったとしても勝ち目はなかっただろうし……。

 そういった意味も込めての、生きていた頃に会いたかったという気持ち。


 生前に過酷な戦いをこなし英雄として名を馳せたであろう人物が、墓から掘り起こされて死してなお戦わされていたことに対し、少しだけ嫌な気分になりつつも気持ちを切り替えてエリファスに目を向ける。

 エリファスが生成していた雑魚アンデッドは、元英雄のアンデッドに放った魔法の巻き添えを食らって大半が消え去っている状態。


 まだ【魔力暴走】も切れていないし、魔力を使い果たす前にエリファスと決着をつけてしまいたいところ。

 チラッと横目でスノーを見るとまだ戦闘を行っており、メランキマイラのアンデッドを圧倒しつつ、ノーブルリッチの魔法を軽くあしらっていた。


 この調子ならスノーは二体のアンデッドを倒してくれるだろうし、私はエリファス相手に全力を割くことができる。

 超エリート対元最底辺。

 私としては絶対に負けることができない戦いがいよいよ始まる。



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