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【完結】追放された名家の長男 ~馬鹿にされたハズレスキルで最強へと昇り詰める~  作者: 岡本剛也
8章

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第419話 ネクロマンサー


※この話からヘスター視点となります。



 クリスさんとラルフと分かれた私は、エリファスがいるという左側の道を慎重に進んで行く。

 不思議と緊張はしておらず、間違いなく英雄として後世に名を残すであろうエリファスと全力で戦えることに期待感で胸がいっぱいなほど。

 

 クリスさんと出会う前の私だったら絶対にありえない心境だし、盗みで生計を立てているような――人としての最底辺から、ここまで引っ張り上げてくれたクリスさんに対して感謝の気持ちで溢れてくる。

 そんなクリスさんへの最初で最後で最大のお礼を行えるチャンスであり、私はこのために力を磨いてきた。


「アウッ!」


 握る拳の力が徐々に強くなっていたところで、スノーが吠えたため正面を向いてみると……。

 一瞬、闘技場かとも思うほど広大な部屋が正面に広がっていた。


 ただ確実に闘技場ではなく、地面は動きやすいようにか土が敷き詰められており、至るところにボロボロのカカシが立てられていた。

 非常に殺風景だけど、動きやすさが第一に考えられた広いスペースなことを考えると、ここは恐らく闘技者達の訓練場だった場所。


 そして、その訓練場の真ん中に佇んでいる一人の女性の姿があった。

 私もそれなりの装備で身を整えているんだけど、二つくらい抜けて質の良さそうな赤基調で金の装飾が施された派手なローブ。

 

 手に持たれているのは複数の樹が捻じられた太い両手杖で、先端は砂時計のような感じの変わった見た目をしている。

 見たことすらないほどの装備で身を包んでいることからも、この女性がエリファスで間違いないはず。


 私は更に近づいていき訓練場へと足を踏み入れたのだけど、エリファスは一切動く気配がない。

 近づいたことでようやくその顔を拝めたのだが、派手なローブや両手杖とは全くの真逆の印象を受ける。


 髪色は私のくすんだ赤色の髪とは違って発色の良い赤髪なんだけど、半分以上は白髪となってしまっていた。

 色の付き具合から染めたものではなく、自然と白髪になってしまったような感じ。


 家柄が良いためか顔立ちは非常に整っているのに、表情は無表情で感情が抜け落ちている。

 肌つやも悪く、目元は心配になるほどの酷いクマ。

 正直、戦闘どころではない体調なのではと心配しかけたが――エリファスは一言も発することなく、無表情のまま私に両手杖を向けて来た。


「会話もなしにいきなり戦闘を行う気ですか?」

「……会話なんていらないよ。あなたはすぐに死ぬのだから。【アニメイトデッド・アビス】」


 か細い声で小さく呟くと、間髪入れずに魔法を発動させてきた。

 闘技場の地面が蠢き始め、地中から大きさの違う三体のアンデッドがゆっくりと這い出てくる。


「スノー、アンデッドは任せても――」


 クリスさんの指示通り、アンデッドはスノーに任せてエリファスへの攻撃を開始しようと思ったのだけど……。

 這い出て来たアンデッドを見た瞬間に、その戦い方では駄目だと理解した。

 

 一体目は、スノーの三倍は大きい羽の生えた四足獣——メランキマイラのアンデッド。

 二体目は、遥か昔に帝国の一都市を壊滅させた最悪のアンデッド――ノーブルリッチ。


 そして三体目は……ここまでの二体とは違い、聞いたことも見たこともないごく普通の人間のアンデッドなのだが、圧倒的に危険で強烈な死の臭いを放っている。

 間違いなく一番危険なのはこの人間のアンデッドであり、スノーだけに任せたら簡単に殺される――そう確信するほどの圧倒的な存在感を漂わせていた。


 どう動こうか必死に頭を回転させている中も、エリファスは私の心境なんて一切考えていない様子で新たなアンデッドを生成している。

 流石に道中で戦ったような低級アンデッドだけど、ただでさえ危険なアンデッドが三体もいるのに数が増えたら対処しきれなくなってしまう。


「スノー、あの一番後ろにいる人間のアンデッド以外を倒してくれる?」

「アウッ!」


 とりあえず一番危険な臭いを発している人間のアンデッド以外を指さし、スノーには戦ってもらうことにした。

 メランキマイラの生きている状態のものはミスリルランク。

 ノーブルリッチはダイヤモンドランク以上の討伐難度はあるだろうけど、スノーならば倒してくれると信じている。


 そして私が対処するのは、エリファスが現在進行形で生成している低級アンデッドと一番危険な人間のアンデッド。

 じっくりと様子見しながら、能力を分析した後に戦闘したいところだけどそんな余裕は一切ない。


 いつも私を守ってくれていたクリスさんがいなければ、ラルフもいない。

 スノーも別の魔物を相手しているということで、ここは私一人で打開しなければならないのだ。


 頭を必死に回転させて立ち回りを考えつつ、まずは人間のアンデッドに高火力魔法を放つことに決めた。

 体全てが漆黒で何も見えず、唯一分かるのは身に着けている鎧と剣。


 随分と古いもののようで鎧は色々な箇所が剥げているが、ラルフが装備している『アイドスカルナ』と似た強力な力を感じる。

 手に持たれている剣の方は普通のものに見えるけど、とにかくトップクラスの剣士であることは間違いない。

 近づかれたら私に勝ち目はないため、近づかれる前に高火力の魔法で押し切る。

 

「【メテオフレイム】」


 土属性と火属性の複合魔法である【メテオフレイム】。

 火炎を纏わせた岩石を飛ばす魔法で、打撃攻撃と自然現象によるダメージを与える非常に優秀な魔法なのだけど――。

 人間のアンデッドは、高速で飛んでくる岩石をいとも簡単に拳で砕いてしまった。


 火炎によるダメージもなさそうだし、岩石を砕いた拳もなんともなさそう。

 急ぐ気配を見せず、淡々と私に向かって近づいてくる姿が逆に恐ろしい。


 そんな姿を見て頭に浮かんだのは、「クラウス達は英雄の墓を掘り、その死体を使ってアンデッドを作成している」というクリスさんの言葉。

 恐らくだけど、あの人間のアンデッドは元英雄なのだと思う。


 アンデッドのせいで火や氷といった自然現象によるダメージが与えられず、物理による攻撃も軽々と防がれてしまうと勝つビジョンが見えない。

 元英雄のアンデッドは諦め、エリファスを倒すことだけを考えるのが正解なのか?


 一瞬だけ逃げの思考が頭を過ったけど、エリファスを仕留める前に私がやられるのは明白。

 こうなったら……最後の切り札を使うしかない。


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