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【完結】追放された名家の長男 ~馬鹿にされたハズレスキルで最強へと昇り詰める~  作者: 岡本剛也
8章

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第410話 フォロ・ニーム


 イエノス村で一泊した翌日の早朝。

 泊めてくれた村長に感謝の言葉と多少のお礼渡してから、俺達は『フォロ・ニーム』に向けて出発した。


 地図を見る限りではここからもうすぐ近くにあり、一時間もしない内に見えてくるはず。

 王都並みに大きな場所とシャーロットから聞いているため、近くまで行けばすぐに分かると思ったのだが……。


「地図を見る限りこの辺りなはずなんだが、どこにも見当たらない」

「その地図あってるのかよ! 古代遺跡なんかどこにもないぞ!」

「私も確認させて頂きましたが、確実にこの付近で間違いありません。もし存在しないということであれば、その地図が間違っていると思います」


 一瞬嘘の情報を掴まされたかとも思ったが、流石にこの期に及んでそんなことをする訳がないと思うし、イエノス村の村長の話からもクラウス一行がこの付近にいることは間違いない。

 イエノス村の人たちは『フォロ・ニーム』のことを知っておらず、シャーロットからも場所についての詳しい話は聞いていないのが完全なミスだな。

 遺跡内部の情報は事細かに聞いていたのだが、王都並みに大きなものと言われていたせいで地図さえあれば見つけられると高を括っていた。

 

「これ、完全に八方塞がりだよな! どうする、一度王都に戻るか?」

「戻る訳ないだろ。地図を信じるのだとしたら、この付近にあることは間違いない。ただ、肉眼で確認できないのだとしたら……」

「透明になっている――とかか?」

「その線もあり得ないとは言い切れないが、可能性として高いの……下だろうな」


 俺が下を指さすと、ラルフは素っ頓狂な表情で首を傾げた。

 

「下ってことは……地中ってことでしょうか?」

「俺はその可能性しかない思う。地中だったとしても何処かに入口はあるはずだ。生命反応を辿って探そうと思ったけど見つからないから、三人で手分けして探そう」

「地中に広がっているなら凄いな! ずっと緊張してたけどなんかワクワクしてきたわ!」


 俺、ラルフ、ヘスターとスノーで分かれ、入口がないかを調べることにした。

 広い遺跡なのだとすれば、そこまで苦労せず見つかると思うんだが……。


「クリス、ヘスター! 見つけたぜ! こっちに来てくれ!」


 そう思った矢先、ラルフが大声で俺を呼んだ。

 捜索を開始して約十五分くらいだし、ここまで早く見つかるとは思わなかったが、入口があったのなら読み通り地中に広がっているのは間違いない。

 俺は急いで声の聞こえた方向へと走り、地面に開いている大きな穴の前で立っているラルフと合流を果たした。


「ラルフ、お前大きな声を上げるな。広いから大丈夫だとは思うが、この先にクラウスがいることを忘れてるだろ」

「あっ、悪い。見つけた興奮で大声出しちまったわ。でも……入口だけでも凄まじくないか? 作り的には似ているのかもしれけどよ、オックスターの遺跡とは正直比べ物にならないぞ!」


 確かにラルフの言う通り、オックスター近くの遺跡とは全くの別物と言えるほどの造り。

 大きさもさることながら、寸分狂いもなく綺麗な正方形の穴が下へと続いている。

 階段も質感の良い石で作られているし、周囲の自然的な風景との差が大きすぎるのだ。

 

「昔はこの奥で決闘が行われていたんだもんなぁ! 王国一を決める武闘会なんかも開かれてたって王女様も言っていたし、剣や武術を極める者たちの憧れの場所だったのかな?」


 ラルフはキラキラとした目でそう呟いたが、決してそんな良いものではない。

 遺跡の造りからして莫大な金を掛けて作られたのは間違いないし、闘技者たちの憧れの場所というよりかは金持ちのための娯楽場に近かったはず。


 遺跡内部の地図を見てもそうとしか思えないし、金を賭けたり間近で生死を見ることで己の歪んだ欲を満たしていた醜い連中の集まる場所だったに違いない。

 これだけ広い闘技場を地中に作ったのも、バレないようにするためのカモフラージュだったのだろうと今更ながら思う。

 古代闘技場に夢見ているラルフの横でそんな現実的なことを考えると、ヘスターとスノーもラルフの声を頼りに戻ってきた。


「入口を見つけたんですね。本当に地中にあったとは……入口からして中は大分広そうですね。ただ、思っていたよりも老朽化が進んでいなさそうなのが救いです」

「崩れるのが一番困るもんな。闘技場なだけあって激しい戦闘を行っても、遺跡自体が崩れる心配をしなくていいのはありがたい」

「クラウスに勝ったとしても、崩れて生き埋めになっちまったら意味ないもんな! そこはシャーロットも考えてこの遺跡を選んでくれたんじゃないか?」

「だろうな。戦闘が行える上に激しく戦っても人目につくことがなく、古代遺跡という名目上誘い出すのも楽な場所。これほどまでに打ってつけな場所はないと思う」


 この場を用意してくれたシャーロットに感謝したところで、そろそろ遺跡の中へ入るとしようか。

 新鮮な空気を吸い込み吐き出してから――。


「それじゃ、クラウス達のいる遺跡の中に入るとしようか」


 ラルフ、ヘスター、スノーにそう告げ、俺は古代遺跡『フォロ・ニーム』へと足を踏み入れた。


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