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第397話 立ち入った話


 美味しい料理を黙々と食べた後、食後に出されたコーヒーを飲みながら一息つく。

 余韻に浸っていたい気分ではあるが、食事中に全く話ができていなかったしせっかくなら会話したいところ。


「料理、本当に美味しかった。全ての料理のクオリティが高かった」

「喜んでもらえたみたいで良かったです。私も久しぶりに来たのですが、味を保ってくれていて助かりました」

「食事中に色々な話をしようと思っていたけど、料理が美味すぎてそれどころじゃなかったからな。もう少し滞在しても大丈夫なら、食後のコーヒーを飲みながら話さないか?」

「お店は私がいるので長居しても大丈夫だと思いますし、私もこれから予定がある訳でも明日が早い訳でもないので大丈夫ですよ。お食事をただ楽しむ会でも構わなかったのですが……互いに何をしていたかを話しにきたわけですし、折角ですからもう少しお話しましょうか」


 グラハムが大丈夫というなら、話を再開するとしよう。

 出会ったレアルザッドで神父をやっているところ――までは聞いたため、その後のことも気になるしな。


「なら、軽く話をしようか。まずはどっちから話すか?」

「先ほどは私が話をしましたので、次はクリスさんのことを聞かせてください。レアルザッドを発った後のことからと言いたいところですが……一つずっと引っかかっていることがあるんです。クリスさんは何故、何度も能力判別を行っていたのですか?」


 話のどこかで聞かれるとは思っていたが、まさか初っ端から聞かれるとはな。

 余程興味深いのか目をキラキラと輝かせているし、先ほどはグラハムの生い立ちを根掘り葉掘り聞いてしまった。

 誤魔化した方がいいんだろうが、グラハムになら本当のことを話しても構わないだろう。


「絶対に聞かれるとは思っていたけど、いきなり聞いてきたか」

「本当にずっと気になっていましたので。少し頭のおかしい人というのなら納得がいくのですが、クリスさんはそんな感じもしませんし何か明確な理由があったんですよね?」

「まぁ明確な理由はあった。色々と教えてもらったし、グラハムになら教えても構わない。俺が能力判別を行っていた理由は、植物を食べていてその植物の効能を調べていたから」


 俺がそう告げると、怪訝そうな表情を浮かべたまま首を大きく傾げた。

 流石に説明不足すぎたかと思い直し、追加で説明を行う。


「見つけたのは本当に偶然なんだが、植物に能力を成長させる効能があることに気づいたんだよ。植物を食べてから能力判別をすることで、植物の特定やどんな能力が上昇するのかを調べていたって訳だ」

「能力を上昇させる効能を持つ植物ですか……? それは一時的な能力上昇ではなく、永続的に能力を上昇させるのものなのでしょうか?」

「ああ、一時的じゃなくて永続的に上昇させるものだ」

「それって……世紀の大発見じゃないですか! しっかりと研究結果をまとめて、世に売りだせば億万長者ですよ!」

「研究結果をまとめるのも面倒だし、金もそこそこ稼げているからいらないな。何よりも能力を上昇させる植物には決まって大きな欠点があるんだよ」

「大きな欠点……ですか?」

「ああ。全ての植物が猛毒を持っている。それも、良い効能に比例するように植物の毒も強くなるんだ」


 その話を聞き、体を前へと乗り出し興奮していたグラハムは残念そうに席に座り直した。


「そうだったんですか。猛毒を持つ植物にしか存在しないとなると、確かに人間——いえ、生物には扱うことができませんね。……でも、クリスさんはどうやってその植物を摂取したのですか?」

「俺は天恵の儀で【毒無効】のスキルを授かったんだ。適性職業は【農民】だったが、【毒無効】のスキルのお陰で猛毒の植物も摂取することができた」

「そんなカラクリがあったんですね。猛毒を持っていたが故にこれまで発見されてこなかった植物を、【毒無効】のスキルを持つクリスさんが偶然口にしたことで見つける。まさに奇跡のような偶然の重なりようですね」


 自分で言うのはアレだが、本当に奇跡に奇跡が積み重なった結果だと思う。

 何か一つでも欠けていたら適性職業通り、【農民】として人生を終えていただろうからな。


「クリスさんが能力判別を頻繁に行っていた理由がようやく分かりました。スキルや適性職業のことなど話しづらいことだったと思いますが、話してくださりありがとうございます」

「いや、俺も色々と立ち入ったことを聞いたからお互い様だ。ただ他言はしないようにお願いしたい」

「分かっています。ここで聞いたことは絶対に漏らさないので安心してください。……お互いに違う話をしたので大分長くなりましたが、そろそろ本題であるレアルザッドを離れてからについてを話しましょうか」

「だな。まずは俺から話をさせてもらう」

「能力判別を行っていた理由も聞きごたえがありましたが、レアルザッドを離れてからのお話も楽しみです」


 こうして俺とグラハムは、コーヒーを飲みながら互いに何をしていたのかを話した。

 当たり前と言えば当たり前なのだが、過ごした時間の密度は圧倒的に俺の方が濃かったため大半は俺の話になりながらも……約二時間ほどでザッと報告を終えたのだった。



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