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第395話 ルアン


 街の中で聞き込みを行い、『ルアン』という店をようやく見つけたのだが……。

 店があったのはまさかのメインストリートの先で、王城がハッキリと見えるほどの距離にある場所。


 イザベルの家で寝泊まりしながら王都を見て回った時も近づいていなかったのだが、まさかこんな形で来ることになるとは思っていなかった。

 歩いている人も高価な服装や装飾品を身に着けていて、俺は場違いなのかすれ違う度に嫌な視線を感じる。


 居心地の悪さを感じながらも、俺はようやく見つけた『ルアン』の店の中へと入った。

 店自体はこじんまりとしていたが、内装は流石に王都奥に店を構えているだけあって煌びやか。


 服装も冒険者のような恰好をしてきてしまったため、完全に周囲から浮いているな。

 まぁ気にするだけ無意味だし、面倒ごとに巻き込まれたら暴力で解決すればいい――そんな心構えで俺はウェイトレスに声を掛けた。


「ちょっといいか? ここの店で知り合いと約束しているんだが、どうしたらいい?」

「待ち合わせでしょうか? ご予約はされていますでしょうか?」


 予約……? この店は完全予約制の店なのか。

 しているか聞いていないけど、グラハムならばきっとしているだろう。


「多分しているはずだ。待ち合わせの人物がグラハムって名前なんだが、予約は取られていないか?」

「グラハム様ですか……? えーっと、あっ!」


 グラハムという名前に何か気が付いたのか、急に大きな声を上げたウェイトレス。

 何がなんだか分からず俺は首を傾げると、急に手をこねながら下手な態度を取り出始めた。


「く、クロスランド家のお知り合いの方だとは知らず、失礼な態度を取って申し訳ございませんでした!」

「別に失礼な態度だとは思わなかったが……クロスランド家?」

「い、いえいえ! グラハム様はもう既にご到着されておりますので、すぐにご案内させて頂きます」

「ああ、よろしく頼む」


 俺にぺこぺことしながら先導して案内を始めてくれたウェイトレス。

 未だに何が起こったのか理解できていないが、グラハムが関係していることは間違いない。


 ウェイトレスはクロスランド家と言っていたし、もしかしたらかなりの良家の子息なのかもしれないな。

 ただ……俺もどこかでクロスランドという名を見た記憶がある。

 何とか思い出そうと頭を回転させていたのだが、結局思い出すよりも先に店の奥にある特別感あふれる個室へと案内された。


「この部屋でお待ちです。ごゆっくりどうぞ」

「案内ありがとう」


 俺は短くそう礼を伝えてから、個室の扉に手をかけて中へと入った。

 俺が名前を聞いたことがあるということは、基本的にクラウス関係が多い。


 そんなことから襲われることも警戒して中に入ったのだが、部屋の中には【生命感知】で感知した通りグラハム一人しかいなかった。

 俺が警戒しているなど知らないからか、いつものように爽やかな笑顔を浮かべている。


「到着が随分と早かったですね。待ち合わせの時間よりも大分早いですよ」

「店の場所を聞いていなかったから、早めに動いたんだよ。そうしたら予想していたよりも早く見つかっただけだ」

「そういえばお店の場所を伝えていなかったですね。こちらの不手際でお手数おかけして申し訳ございません」

「大した労力じゃないし別に構わない。……それよりも、この店の対応のが気になってる。グラハムはただの神父じゃないのか?」


 何食わぬ顔で会話を始めたグラハムに対し、何者なのかを尋ねた。

 部屋にいたのが一人だと分かった今でも、気になり過ぎて警戒せずにはいられない。


 教会で再会した時は【生命感知】のスキルを使っていなかったから気づかなかったが、グラハムの生命反応はブルーデンスに匹敵するか――それ以上のものがある。

 ただの神父にしては大きすぎる生命反応からして、ただの一般人ではないことは確か。


「やはり気づかれましたよね。ここは私の父がよく利用しているお店なんですよ。だから、その息子である私にも丁重すぎる扱いをしてくれるという訳です」

「父というのが誰か……教えてもらうことは可能なのか?」

「ええ、別に隠すことではありませんから。本当はゆっくりとご飯を食べながら話したかったところですが、相当警戒されているようですので今お話しますね。私の父はエドワード・キャロル・クロスランド――王国騎士団の団長を務めています」


 フルネームと役職を聞いたことで、ようやく忘れてかけていた記憶が完全に蘇った。

 レアルザッドでも何度か噂話のようなものを聞いたし、何ならエデストルでは銅像が建てられていたはず。

 それについ先日、王国騎士団の屯所でもその名前を見たし、なんで思い出せなかったのか不思議なくらい俺は様々な場所で目にしていた。

 

「なるほど。通りで聞き覚えのある名前だと思った。グラハムは王国騎士団の団長の息子だったんだな」

「ええ。ここまで特に自己紹介する機会もなかったので、隠そうと思っていた訳ではないのですが……隠していたような形になり申し訳ございません」

「別に謝らなくていい。俺だって色々と話していないことはあるからな。……ただ、王国騎士団の団長の息子がなんで神父をやっているんだ?」


 その事実を聞いて、まず浮かんだ疑問はそこだ。

 生命力の高さから考えても、実力がないということはありえない。

 コネもある訳だし、わざわざ神父なんかやらずともいい地位に就けそうなものだけどな。



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