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【完結】追放された名家の長男 ~馬鹿にされたハズレスキルで最強へと昇り詰める~  作者: 岡本剛也
8章

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第393話 喜びの表現


 王都の入口へと辿り着くと、一人で立っているヘスターの姿があった。

 姿が見えないことから、ラルフとスノーはまだ戻ってこられていないようだな。


「ヘスター、待たせてしまったか?」

「あっ、クリスさん。全然待っていませんよ。私も先ほど到着したばかりです」

「それなら良かった。宿の方はどうだった? 見つかったか?」

「はい。『ギラーヴァルホテル』は駄目でしたが、魔物可で良さそうな宿屋を取ってあります」

「流石ヘスターだな。ラルフはまだ戻って来ていないよな?」

「この場にいないということはそうだと思います。距離的なことを考えても、もう到着していてもおかしくないと思うんですけどね……」


 ヘスターと合流し、そんな会話をしていると――遠くから聞き覚えのある鳴き声が聞こえた気がした。

 二人で鳴き声の聞こえた方角を見てみると、門を潜り俺達の下へと走って近づいているスノーの姿が見えた。


「あれは絶対にスノーですね!」

「スノーの後ろで必死に走ってるラルフも見える。どうやらちゃんと迎えに行けたようだな」


 凄まじい勢いで駆け寄ってきたスノーはそのままの勢いで俺に突っ込んできた。

 瞬時に【要塞】【鉄壁】を発動させて受け止めるが、毎度のことながらもう少し威力を弱めてほしいところ。


「スノー、元気だったか? 迎えに行けずに悪かったな」

「アウッ!」


 ベロベロと舐めまわしてくるため、顔を中心にベットベトになっていく。

 白いフワフワな毛並みは変わっていないが、ずっと森で過ごしていたからか臭いが少々キツくなっているため、ある程度で止めてほしいのだが……食べられるのではという勢いで舐めてくる。


「スノー、嬉しいのは分かったから落ち着いてくれ。メロンも買ってあるから」


 メロンという単語に耳をピンと立てると、急にお座りをして舐めるのを止めたスノー。

 それでも口はハァーハァーと言っており、尻尾も地面を叩くように振っているため、なんとか本能を理性で抑えているといった様子。


「スノー、元気にやっていましたか? あとで一緒にお風呂に入りましょう」

「アウッ!」


 俺には遠慮なく突っ込んでくるのに対し、ヘスターには対応が優しいんだよな。

 最大の嬉しさを見せつつも、舐めるのも手だけだし。


「ぜぇーはぁー。……す、スノー速すぎるだろ! てか、いきなり走り出すなよ! それも王都が見える前からだしさぁ!」

「随分とお疲れみたいだな。迎えに行ってくれて助かったよ」


 俺達の下に辿り着くなり、膝に手をついて肩で息をしているラルフに労いの言葉をかける。

 この様子だとラルフを置いて走り出したようだし、一般人から見たら凄まじい勢いで襲い掛かってきた魔物。

 ラルフが必死に後を追いかけてくれて良かった。


「あ、ああ。俺が行きたいって言ったんだし礼なんかいらん! それよりもちょっとだけ休ませてくれ! 汗がだっくだくだし風呂も入りてぇ!」

「それじゃ宿屋に向かうとしよう。食材はあるし、宿屋にキッチンが付属してるなら飯も作れるからな」

「ついてますよ! お風呂とトイレ、それからキッチンもついてます」

「流石はヘスター! 気が利くぜ!」

「だな。早速案内を頼む」


 こうしてスノーとの久しぶりの再会を喜んだ後、俺達はすぐにヘスターが取ってくれた宿屋へ向かうことにした。

 案内されるがままついていき、辿り着いた宿屋は以前宿泊した『ギラーヴァルホテル』にも負けないくらいの大きさの建物。

 名前は……『スカイトップ』と書かれている。


「もしかしてこの宿屋か!? いいのかよ、めちゃくちゃ高いだろ!」

「別に構わないだろ。金ならあるし、あと三日……いや実質二日しか滞在しないんだからな。最後の決戦前くらいは豪勢にいこう」

「確かに……そう考えたら良い宿屋に泊まるべきなのか!」

「そう言われていましたので、私も魔物可の一番良い宿屋を探してこの宿屋を見つけたんです。もう既にお部屋も取ってありますので、私が案内しますね」


 ヘスターを先頭に宿屋の中に入ったのだが、入った瞬間から既に普通の宿屋とは一線を画していた。

 闇市場のように下ももちろんあるが、やはり上は飛びぬけているのが王都。


 教会とはまた違った豪華な造りの内装で、金がふんだんにかけられているのが馬鹿な俺でも分かる。

 汚れた服装で中に入るのが悪い気がしてくるが、それだけの金は払っているため堂々と歩いて部屋へと向かった。


 俺達の部屋はこの建物の最高層である四階にあり、この宿屋で一番広い部屋らしい。

 魔物可なだけあって扉からまず大きく、隣の部屋との間隔から相当広いのが入る前から分かる。


「このお部屋です。鍵を開けますね」

「くぅー、ワクワクしてきた!」


 ラルフはそわそわとヘスターが扉を開けるのを待っており、スノーもそんなラルフに触発されて尻尾をぶんぶんと振り回している。

 かく言う俺も非常に楽しみで――鍵を開けた瞬間に部屋へと飛び込んでいったラルフとスノーの後を追い、俺もすぐに部屋の中へと入った。


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