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第386話 話し合い


 倒れたゴーティエを見下ろし満足気にしていると、シャーロットがため息を吐いてから言葉を発した。


「また襲う形になってごめんなさいね。今回は事前に止めていたんだけど、危険やら何やら言ってたゴーティエが勝手に襲い掛かったのよ」

「別に構わない。俺は無傷だし、ゴーティエには一発叩き込むことができたしな」

「一応確認だけど……殺してはないわよね?」

「あまりにも軟弱だったら分からないが、死ぬような強さで攻撃していない。しばらくしたら目を覚ますと思うぞ」

「なら、放っといていいわね。それじゃ座ってくれるかしら」


 シャーロットに言われるがまま、倒れているゴーティエを無視して真向かいのソファへと腰かける。

 前回と同じようにシャーロットの後ろには、王国騎士団三番隊の三人とミエルの姿があった。


 アレクサンドラは俺に頭を下げた状態で、ブルースとギルモアは頭は下げていないものの申し訳なさそうな顔をしている。

 まだ体中包帯まみれで杖までついているし、万全ではない中わざわざ来てくれたようだな。


 そして結局、建物で別れたきり会っていなかったミエルはというと……。

 俺の方は一切見ておらず、顔から床に倒れたゴーティエを見て非常に嬉しそうにしていた。

 相変わらずというかなんというか……良い意味でも悪い意味でも何も変わっていないようだな。


「まずはお礼を言わせてもらうわ。ミルウォークに加えて幹部を二人倒した上に、王国騎士団の方のサポートまでしてくれたみたいね。命を助けられたとアーシャから聞いているわ」

「アレクサンドラにも言ったが、俺が巻き込んだ側だからな。先に片付いたのだからサポートぐらいするさ」

「理由はどうあれ感謝しているのよ。ここまで上手くいくとは思っていなかったし、『アンダーアイ』から潰すという作戦は大成功。ミルウォークまでキッチリと仕留めて、私からは賞賛することしかできないわ」


 ここまで手放しで褒められると気持ちが悪いな。

 いつものように適当な感じで褒めてくれた方が、こっちとしてはやりやすい。


「お抱えの治療師も寄越してくれたみたいだし、特に礼はいらない。あの治療師のお陰でもう完全に回復したからな」

「それは良かったわ。私ができるせめてものサポートだったから」

「怪我した時はまた治療してほしいぐらいには良かった」

「また国のために働いてくれたら喜んで貸すわよ? ……どうかしら。冒険者なんかやめて私のところで働かない?」

「残念だが無理だな。クラウスを倒すって目的で協力しているだけで、国のために働く気はこれっぽっちもない」

「それは残念ね」


 まさかの勧誘だったが、俺は即答で拒否する。

 その後チラッとゴーティエを見たのだが、まだ気絶しているみたいで良かった。

 シャーロットからの直々の勧誘なんて、ゴーティエが起きていたら面倒なことになりそうだったからな。


「話を戻させてもらうが、ミルウォークがアジトに戻るように仕向けてくれたのか?」

「んー。そうといえばそうで、違うといえば違うって感じかしらね」


 そんな曖昧な返答に思わず首を傾げてしまう。


「意図的ではなかったってことか?」

「ミルウォークがアジトに戻るのを仕向けたことは仕向けたけど、本当に戻ったのは運の要素が大きいってことね」

「なるほどな。なにはともあれ助かった。お陰でミルウォークごと『アンダーアイ』をぶっ潰すことができた」

「私としては色々と半信半疑だったけれど、クリスと組んで正解だったと今回の件で確信が持てたわ」


 俺もシャーロットという後ろ盾は大きいし、シャーロットとしても俺と組んで良かったと思ってもらえた。

 この関係を強固にするという意味でも、先に『アンダーアイ』の拠点を狙ったのは本当に大正解だったな。


「それで、いよいよ本題に入らせてもらうが……。クラウスは今どこにいるんだ?」


 俺がクラウスの名を口にした途端、互いに称え合って和やかだった部屋の空気が一気に張り詰めて緊迫した感じになる。

 特に俺の横に座っているラルフとヘスターがピリついた雰囲気を醸し出し、それに呼応するかのようにシャーロット側もピリつき始めた。


「クラウスは今王都にいないわ。正確に言うと四日前——つまり、『アンダーアイ』の拠点襲撃の前日に王都を発ったの」

「どういうことだ? 俺はクラウスを追って王都までやってきたんだぞ。……まさか俺達の情報を流して逃がしたんじゃないだろうな?」

「冷静になりなさい。仮にクリスが王都に来たと伝えたとして、クラウスがあなたから逃げると思う?」


 意味の分からない状況に突飛な考えとなり、つい怒気の籠った言葉をシャーロットにぶつけたが……その質問を受けて冷静に戻った。

 俺を探して色々と手を回していたクラウスが、俺が王都にいると知って逃げる訳がない。

 

 なんなら逆に殺しに来そうなものだし、王都を発ったという行動と矛盾を生んでいる。

 ――だとしたら、クラウスはなぜこのタイミングで王都を発ったのだろうか。


「……確かに逃げるとは思えない。カッとなって悪かったな。ということは、クラウスは偶然王都を発ったということか?」

「いえ、偶然ではないわ。王都の中心地で戦闘が行われるのを避けるために、お父様にお願いしてクラウスを遠征に向かわせたのよ。――つまり、そこが決戦の地となるって訳」



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