第385話 回復
イザベルの家へと戻ってから、あっという間に三日が経過した。
この三日間何をしていたかというと、本当に何もやっておらず横になってゴロゴロしていただけ。
久しぶりに自堕落な生活を送っていたのだが、そのお陰もあって体は完全に回復した。
痛みや疲労感も一切なく、もう普通に戦うこともできる。
バハムートの洞窟の時と違って大きな怪我がなかったというのも大きいだろうが、やはりシャーロットの寄越してくれた治療師の影響が大きいのではないかと思う。
目が覚めた時から既に体の調子が良かったし、その後の疲れの取れ具合いも段違いだった。
ともかく俺の体調は万全となり、ラルフとヘスターの方はだが……。
二人はそもそも楽に戦闘をこなしていたようで、イザベルの家に戻ってきた段階で既に元気が有り余っている様子だった。
ラルフは屯所でも言っていた通り、すぐにスノーの様子を見にペイシャの森へと向かい、俺と一緒に王都に残ったヘスターもイザベルと共に色々と買い物に出ていた。
ちなみに『アンダーアイ』を実質的に壊滅させた今、逃げ隠れする必要がなくなったためイザベルの家ではなく普通の宿屋に泊まっても大丈夫なのだが、俺が移動する気力がなかったせいもあって好意でまだ寝泊まりさせてもらっている。
今日の夜に控えているシャーロットとの話し合いが終わり次第、イザベルの家は後にするつもりだが、お礼の金は多めに包まないといけないな。
布団で仰向けになり、そんなことを考えていると……家の扉が開いた音が聞こえてきた。
イザベルとヘスターはリビングにいるため、もしかしたらラルフが戻ってきたのかもしれない。
寝転がりながら耳を澄ませていると、俺の予想通り向こうの部屋からラルフのやかましい声が聞こえてきた。
「おーい、戻ってきたぞ! クリスは元気になったかー?」
俺が寝転んでいる寝室を勢いよく開け、満面の笑みで声を掛けてきたラルフ。
スノーがどうだったかが気になるし、すぐに聞こうと思っていたが……ラルフのこの態度を見れば聞かずとも問題なかったことが分かるな。
「ああ、もう完全回復した。ラルフは帰ってくるのが随分と遅かったな。距離的には頑張れば日帰りで帰ってこられるだろ?」
「スノーが寂しがってたからギリギリまで一緒にいたんだよ! ちなみにスノーは元気モリモリだったぞ! 友達もできたみたいで比較的楽しそうに過ごしてたわ!」
元気なのは良かったけど……友達?
魔物の少ないペイシャの森で、友達ができたってのは疑問しか浮かばない。
まぁカーライルの森ではリスと仲良くしていたし、小動物とでも仲良くなったかもしれないな。
それか俺がデュークウルスを狩ったことで、ペイシャの森の生態系が崩れたかのどちらか。
後者だったとしたら悪いことをした気持ちになるが、生き物が豊かな森な方がいいだろうしし悪いことではないのか。
「なんにせよ元気にやってたなら良かった。今日の話し合いが終わり次第、すぐにスノーを迎えに行く」
「俺もついて行くぜ! スノーにすぐ迎えに来るって約束したしよ!」
「まぁどっちでも構わない。ヘスターはリビングにいるから聞かせてやってこい」
「それもそうだな! ヘスターも気になってるだろうし話してくるわ!」
ラルフはそう言うと部屋から飛び出し、ヘスターのいるリビングへと向かっていった。
心配事の一つだったスノーも大丈夫だったし、後は夜まで待つだけだな。
体調は万全だが夜の話し合いに備えてもう少しだけ寝ることに決め、俺は眠りへとついたのだった。
それから夕方くらいまで眠り、準備を整えた俺達は時間通りに『レモンキッド』へとやってきた。
もう慣れた感じで店の中へと入り、奥の隠し応接室へと向かう。
部屋の中からは複数人の生命反応が確認でき、人数とその生命反応の感じからして前回と同じ面子だと思う。
例にも漏れず扉の真横に誰かが待ち構えているのが確認でき、扉を開けた瞬間に襲ってくるのが目にみえているな。
対応しなくてはならないことにうんざりしつつも、仕方がないことだと割り切り……扉を開けた瞬間に俺もヴァンデッタテインを引き抜いた。
案の上、部屋に入るなり襲い掛かってきたが、来ると分かっていれば何も問題ない。
斬りかかってきた剣を受け止め、返しに前蹴りをみぞおちに叩き込んでやった。
襲ってきたのは馬鹿騎士のゴーティエで、みぞおちを抑えながら腰を曲げているところを間髪入れず、顎先目掛けてハイキックをかます。
【脚力強化】と【強撃】を乗せた蹴りは顎先をかすめ取り、脳みそが綺麗に揺れたことで気絶したのかゴーティエは顔から床へと倒れ込んだ。
シャーロットが静止の声を出そうとしていたのが分かり、急いで仕留めにかかったが上手くコンビネーションが決まって一安心。
起きているとイライラとするし、ゴーティエには鬱憤も溜まっていたから大満足の結果だな。





