第378話 殲滅
リーダーであるミルウォークがイタということもあってカ、建物内にいた全員が部屋の周辺ニ集まってくれていたお陰デ、十分とかからずに残党をほぼ殲滅スルことに成功。
向こうがパニックに陥っていたお陰で戦闘トいう戦闘はナく、まさに一方的な狩りのようナ感覚で楽しんダ。
『アンダーアイ』は一定以上の力を持つ人間ばカりなため、追い回スのに【生命感知】が本当に有用で――俺はこの建物内ニ残る最後の一人を壁際まで追い詰めていタ。
腰が抜ケタのか尻もちをつき、まるで悪魔でも見るカのように俺を見上げながラ必死に逃げようとシテいるが、背中が壁にぶつかり八方塞がリの状態。
トレードマークの黒ローブは半分脱げタ状態で、酷く怯えた情けなイ顔が良く見えル。
「た、頼む……。なんでもするから殺さないでくれ」
「無理ダな。お前らはそう言っテきた人間を今まで何人殺しテきたんダ?」
「ひっ、ひいいいいいいい!!」
背を向ケ、一縷の望みをかけて窓から飛ビ降りようトした最後の構成員の背中を一突きシた。
必死に逃げようと藻掻イていた力が抜けると同時ニ、口から血が噴き出る音が耳に入ってクる。
そして窓にかけた手が力なく離さレ、残っタ最後の一人モ無事に始末スルことに成功。
ミルウォークは期待以下だっタが、無駄に多かった構成員のお陰で非常に楽しむコトができた。
非常に満足のイく結果に気持ちよくなると同時ニ、俺の残り体力の少ナさが分かり――この最高ノ状態が終わリを告げることに悲しクなる。
そんな感傷ニ浸っていた俺に、後を追いかけて来たであろうミエルが声をかけてきタ。
「……酷い有様ね。この惨状だけを見るなら、どっちが悪党か全く分からないわ」
「黙レ、糞女。口を挟んでクるな」
「馬鹿王女って陰口を叩いているから大きなことは言えないけど、面と向かって言うのはやめた方がいいわよ。寛容な私じゃなければ魔法をぶち込んでいるから」
挑発的な態度でそう告げてきたミエルにイラッとくル。
「……まぁでも、普段のクリスとは違うんでしょうね。『迷惑をかけるだろうが、よろしく頼む』って言ってから急に態度が変わったし」
「ぐちゃぐチゃとうるさいな。お前も斬らレたいのか?」
「でも、どうやったら元に戻るのか聞いていないのよね。考えられるのは激怒状態とか混乱状態に近いものかしら? だとすれば……」
オレを無視し、ブツブツと独り言を話すミエルに本気でイライラしてきた。
斬ル……のは流石ニまずいが、殴るくらいならしテもいいだロう。
そう考えつき、近づこウとした瞬間――。
「【ディスペリアリク】」
ミエルは近づこうとしタ俺に向かって何かの魔法を放ってきタ。
慌てて回避したガ更に同様の魔法を三つ放った上に、計四つノ緑色の球体の魔法がオレを追尾スルように追ってくる。
必死に躱しているが先回りさレ、逃げ場を失っテから【アンチマジック】を思い出したガ……時既に遅かった。
四つ全ての魔法が俺にブチ当たリ、その瞬間に目の前ガ真っ暗となって意識が飛んだ。
「あっ、倒れた! やっぱり状態異常回復の魔法が効いたみたい」
薄れゆク意識の中そんなミエルの声ガ聞こえツツ、オレは完全に意識を手放しタ。
――そして意識を失った次の瞬間、俺は飛び起きるように目を覚ました。
【狂戦士化】を発動した後の記憶は完全に残っており、ついさっきまで暴れまくっていたのをミエルに見られていたのが恥ずかしくなる。
自分の意識外のこととはいえ、ミエルには大分迷惑をかけてしまったな。
「ん? ……もしかして、もう意識が元に戻ったの?」
「…………ああ。お陰様で完全に元に戻った。色々と迷惑を掛けてすまなかった」
「簡単に治ったし、お陰で命拾いしているから別にいいけど……どう元に戻すのかぐらいは言っておいてよ」
言っておいてと言われても、元に戻す方法なんて知らなかったからな……。
一回目は完全に自分の意識を持てていたし、二回目は記憶もなく気が付いたら元に戻っていた。
三回目の今回は薄っすらと意識は残っていたけど、自分でも治し方なんて知らなかったしミエルが治せたのが不思議なくらいだ。
「スキルの反動みたいなもので、どう治すのか知らなかったんだよ。逆にどう治したのか気になるくらいだ」
「えっ、ぶっつけ本番で使ったって訳? そんなスキルを使わないで欲しいんだけど。まぁ相手があのミルウォークじゃ仕方ない部分はあるけどさ」
「意識が飛ぶから自主的に使うことがほとんどない中、使わざるを得なかったからな。……まぁ迷惑をかけた」
「糞女連呼された時はなんだこいつとは思ったけど、まぁ無意識なら仕方がないか。狂気じみてたし、酒に酔っている時と似たような感覚でしょ?」
言われてみれば、酒に酔っている状態と似ているのかもしれない。
俺は酔ったことがないから分からないが、症状的にはかなり似ている気がする。
もちろん【狂戦士化】の方が圧倒的に人格が変わるけども。
「確かに泥酔状態と似ているかもな。記憶がなくなったり、薄っすらとしか覚えていなかったりとかも含めて」
「なんにせよ元に戻って良かった。体の方は大丈夫なの? 大丈夫ならすぐに外に出て他の応援に行った方がいいんじゃない?」
言われて思い出したが、ラルフとヘスターの方も気になるしすぐに向かいたい。
体は超がつくほどの激痛が走っているし、ダルすぎて動かしづらくもあるが……【痛覚遮断】でなんとかなるはずだ。