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第373話 仲間殺し


 ヴァンデッタテインを構えた状態である程度近づいた段階で、ようやく視線をミエルから俺へと戻した。

 それから先ほどのレイピアを構えるのかと思いきや、鞘に納めて今度は素手で構えだした。


「今はお前よりも後ろの女を殺したいんだけどな! 邪魔するってんなら先に殺すしか――」


 そこまで言いかけた時に、俺達の後ろから息を切らしながら一人の構成員が部屋に飛び込んできた。

 恐らくこの部屋から一番近い場所にいて、真っ先に駆けつけてきた一人が辿り着いたのだろう。


 ここで挟まれるのは嫌なため、まずは駆けつけてきた構成員からすぐに始末しようと動き出そうとしたのだが……。

 俺よりも先に動いたのは、まさかのミルウォークだった。

 

 ミルウォークは少し大回りするように俺の横を素通りして入口まで向かうと、部屋に辿り着いた構成員の頭を片手で握り――地面に投げるように叩きつけた。

 勢いよく床に叩きつけられた頭はパンッと不快な音を立てて潰れ、黒のローブを自身の血で真っ赤に染めた構成員はそのままピクリとも動かなくなった。


 今の行動の全てが理解できずに思わず固まる。

 攻撃を仕掛けようとした矢先だったこともあり、一瞬戦意が削がれかけたが首を軽く横に振ってから、再びミエルとミルウォークの間に位置を取り直してから剣を構えた。


「邪魔すんなっつってんのに、どいつもこいつも邪魔ばっかしやがって! ……なぁお前もそうは思わないか?」

「………………」

「返事をしないってことは同意したことだよな? ならよ、先にお前の後ろにいるその女を殺らせてくれよ! 気になって戦闘どころじゃねぇんだわ!」

「言っておくが、俺を殺さなきゃ殺させないぞ」

 

 一言忠告すると諦めがついたのか、血濡れた指をむしゃぶりながら俺の方へと向かってきた。

 ……改めて、このイカれた男をパーティの一員として迎え入れたクラウスもぶっ飛んでいると再確認できたな。


 【剣神】のパーティに加入することに国王が大反対したのも当たり前だし、その反対を無視してパーティに引き入れたクラウスを仕留めるのに、シャーロットが全面的に手を貸してくれる理由もようやく理解できた。

 国の宝である【剣神】を守るよりも『アンダーアイ』……いや、ミルウォークという毒を見過ごす方が国としての損失が大きいと判断したのだろう。


 クラウスが今どうなっているのかの想像が俺にはつかないが、このミルウォークを従えているとなると化け物に成長していそうだな。

 最終決戦であるクラウスとの戦闘を考えて憂鬱になりながらも、今は駆けつけた仲間をも躊躇なく殺したミルウォークが先。


「クリス、絶対にその男を殺してよねっ!? 後ろを通したり、殺されたりしたら絶対に許さないから!」


 俺以上にミルウォークの行動に危機感を覚えたであろうミエルの心からの叫びに、俺は無言で親指を立てて返事をする。

 イカれすぎている行動に戦意を削がれかけたものの、お陰で素手でのミルウォークの戦いが少しだけ見ることができた。


 短剣にレイピアと、使用している武器から考えて非力かとも思っていたが、今の一連の動きから単純な力も相当持っている。

 ただ鍛錬を積んだ感じではなく、生まれ持っての純粋な力だけであくまでも“相当な力”程度。

 

 一撃で頭を潰したのは体の使い方が抜群に上手いからであり、全身の力を余すことなく腕に集め、その集めた力を一切の無駄なく打ち込めるため。

 レイピアよりも素手の方がより柔軟に戦えるだろうし、動きを見る限りミルウォークの一番得意な戦闘方法は素手で間違いない。


 多種多様な動きや攻撃を仕掛けてくるだろうが、間合いが極端に短くなったことを利用する。

 ミルウォークとどう戦うかを決めた俺は、近づく速度を少し早めた。


 速度を早めたことで距離はすぐに縮まっていき、ミルウォークが拳を構えたのを見てから――俺は先手を取って【粘糸操作】を発動。

 部屋中に飛び散るように粘糸を張り巡らせ、第一の仕掛けは完了。


 ミルウォークも一瞬だけ俺の放出した粘糸を警戒した素振りを見せたが、すぐに粘着質な糸だと気づいたようでそのまま粘糸を無視して距離を縮めてくる。

 このまま戦闘を開始し、【硬質化】を発動させるだけでミルウォークの動きに極端な制限をかけることができるのだが……まだ罠を仕掛けていく。


 【広範化】を発動させ、更に【毒液】を口内に溜め込む。

 強力な毒ではないが体の痺れと痙攣を引き起こし、呼吸をままならなくさせるぐらいの毒はある【毒液】のスキル。


 間合いに入った瞬間に、この溜め込んだ毒液を飲み込めばミルウォークも巻き添えにできる。

 唯一心配なのがミエルに影響を及ばさないかだが、もし【広範化】の範囲内に入っていたとしたら申し訳ないが少しだけ我慢してもらうしかない。

 心の中でミエルに謝罪しつつも、これで第二の仕掛けが完了。


 最後の仕掛けは即座に看破された【黒霧】のスキルだが、性懲りもなくまた使う。

 俺とミルウォークとの距離が縮まり、【広範化】の範囲に入ったと思った瞬間に――【黒霧】を発動。

 最初に仕掛けた時と同じように部屋の中は再び真っ暗になり、辺りは一瞬にして深い闇に包まれた。



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