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第37話 交渉の報告


 気持ちが落ち着いたことにより、送り出した二人のことに思考が回り始める。

 王都へ向かったラルフとヘスターの方は、はたして大丈夫だっただろうか。

 

 レアルザッドから王都までは、地図で見る限りは半日ほど歩けば到着する距離。

 ブラッドを探す期間を含めても、流石に二人共もう戻っているはずだ。

 交渉の結果を楽しみにしつつ、俺はレアルザッドに向けて歩を進めた。


 入門検査を無事に突破し、俺はそのままの足で『シャングリラホテル』を目指す。

 本当は先に能力判別を行いたかったところだが、もう既に日は落ちているし怪我のこともあるため能力判別は別日にし、今日は二人の話をゆっくりと聞くことにしたい。


 部屋に入ると、くつろいでいる二人が目に入る。

 一週間前はテンションが低かったラルフも、流石に元に戻っている様子だな。


「クリスさん、おかえりなさい――って、大丈夫ですか!?」

「鎧がボロボロだし血もついてる……ってか、なんか色々と汚れすぎじゃないか?」

「ちょっと森で化け物みたいな魔物に襲われてな。泉で体を洗わずに逃げ帰ってきた」

「怪我は……怪我はないんですか?」

「ああ。ちょっと脇腹を痛めたが、大した傷じゃない」

「クリスが化け物っていうくらいだし、とんでもない魔物だったのか? もうその森には行けないじゃねぇか」

「俺の五倍は大きな魔物だったな。ただ、全然大丈夫だ。森にはまた行く」

「無理には止めはしないけど……絶対に死ぬんじゃないぞ。もう俺達はパーティなんだからな」

「簡単にくたばる気はないから安心してくれ。それより、串焼きを買ってきたからとりあえず食え」

「……ん? おおっ! 串焼き買ってきてくれたのか!」


 俺を心配そうに見つめる二人に、串焼きを手渡す。

 少し前までの心配そうな表情も何処へやら、ラルフは満面の笑みで串焼きにかぶりつき始めた。

 

 面倒くさい時もあるが、扱いが楽で本当にいいな。

 串焼きに夢中なラルフをよそ目に、俺はヘスターに王都でのことを聞くことにした。


「ヘスター。そっちはどうだったんだ? 無事にブラッドとは会えたのか?」

「はい。ブラッドさんとは会うことができました。闇市場と呼ばれる場所で暮らしていて、かなりお金には困っている様子でした」

「交渉の方はしたのか?」

「交渉もしっかりとしてきましたよ。最初は白金貨十五枚で請け負うと言ってきたのですが、断り続けていたら結局は、向こうから白金貨五枚でやらさせてくれとお願いされました」

「白金貨五枚か! これならなんとか目途を立てることが出来るぞ」


 白金貨二十枚は途方もなかったが、白金貨五枚ならば頑張れば貯めることができる額。

 懸念点があるとすれば、落ちぶれた医者に頼むため失敗の確率が高いことだが、このリスクは取らざるを得ない。


「私としては、白金貨五枚でも十分すぎるほど高いと思ってしまうのですが……。いいのでしょうか?」

「いいも何も、足を治すことを前提でお前達と組んだんだからな。ヘスターにも何としてでも魔法を覚えてもらうからな」

「…………はい。クリスさん、ありがとうございます!」

「後、ずっと思っていたんだが、そろそろ敬語やめてもいいんだぞ。俺達は同い年だし対等なパーティを組んだんだからな」

「いえ、敬語は続けさせて頂きます」


 ヘスターだけは未だに堅苦しい印象を受けていたため提案したのだが、あまりにもあっさりと断られてしまった。

 俺としても別にどっちでもいいため、ヘスターが敬語の方がいいと言うなら好きにさせよう。


「ぞれで、グリズの方はどうだっだんだ?」

「口に入れたまま喋るな」

「……んぐっ。クリスの方はどうだったんだよ! 化け物魔物に襲われて逃げ帰ってきただけなのか?」

「いや、かなりの収穫だったぞ。襲われたのは帰ろうとしていた前日だし、成果の方はばっちりと上げてきた」

「そうなのか。……ということは、既に俺らよりも強いのにまた先を行かれるのか?」

「そこは素直に喜べ。俺が強くならなきゃ、お前らをどうにかする金を稼げないんだからな」

「分かってるよ。気持ちの問題だ、気持ちの問題」


 ラルフ的には複雑な心境なのか、なんとも言えない表情を浮かべている。

 目の前の餌には喜ぶが、元々俺が全てを肩代わりすることをよしとしていない性格だ。

 同年代として、俺には負けていられないみたいな気持ちがあるのだろう。


「あ、そうだ。ヘスター、あのオブラートって奴めちゃくちゃ良かったぞ。教えてくれてありがとな」

「本当ですか。役立ったみたいで良かったです」

「あれさえあれば、毒草を食べるペースを上げることが出来る。よくあんなものを知っていたな」

「『七福屋』のおじいさんから教えてもらったんですよ」


 あそこの店主は本当に博識だな。

 質屋を営むってことは、知識が豊富でないといけないにしても博識だと思う。


「あの……話が変わるんですが、明日からはどう行動したらいいですか?」

「特に頼みたいことがないから、ゴブリン狩りを続けて金稼ぎだな。情報を集めてほしくなったら声を掛ける」

「分かりました。情報ならいつでも集めますので、困ったら声掛けてください」

「ああ、助かる」


 そんなこんな二人と会話をしつつ、採取してきたレイゼン草とゲンペイ茸を食してから、俺は明日に備えて布団に入った。

 明日から俺も冒険者業を再開するつもりでいて、初めての指定なしの依頼を受ける予定。


 狙いは、ヘスターに情報を集めてもらっていたはぐれ牛鳥。

 居場所の目星は既につけることができているため、数日以内には問題なく狩れると踏んでいる。


 ただ、またあの熊型魔物のような奴に襲われる可能性もあるため、絶対に油断だけはしない。

 襲われた時のことを頭の中で思い出し、今回行ったパターン以外の戦闘パターンを考えながら俺は眠りへと就いたのだった。


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