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第366話 決行の日


 闇市場の前に着き、身を潜めながら王国騎士団が現れるのをジッと待つ。

 東通りは昼の内は本当に人通りが少なく、無駄に警戒する必要がないのが気持ち的には本当にありがたい。


「……来たぞ。かなりの人の気配がこっちに向かってきている」

「えっ、どこにいるんだ? 全然見えないぞ!」

「気配を感じ取っただけだから姿はまだ見えない。あと数分もすれば見えると思う」


 キョロキョロと周囲を探すラルフを宥め、王国騎士団の姿が見えるまで身は隠しておく。

 俺が気配を感じ取ってから約五分後。

 予想通り、アレクサンドラを先頭にして闇市場へと向かって来ている王国騎士団の隊が姿を見せた。


「おお、すげぇ数だな! 数なんて想像もつかなかったけど、百人くらいはいるんじゃないか?」

「王国騎士団が何番隊まであるのか分からないが、三番隊だけでこの人数だと確かに多いな。ただこの人数だと隠密行動はできないだろうし、不意打ちを仕掛けるのは無理だと思っていた方がいい」

「この数を見て逃げられたりしませんかね? 攻め込んだ時には既にも抜けの殻だったら意味がなくなってしまいます」

「昼間で見通しもいいし、闇市場の入口に隊の半分ほどを残しておいてもらえれば逃げることは不可能だと思う。王都の外に続く、裏道のようなものがあったらお手上げだけどな」


 闇市場に侵入したからこそ分かるが、東地区の端っこで入口も出口もここしかない。

 俺が侵入した時のように有刺鉄線のバリケードを登るにしても、警戒していたら容易に見つけることができるし、そもそも【痛覚遮断】持ちである俺でなければ登り切ることは不可能なはず。


「でもよ、王都の外に逃げてくれるなら好都合だろ! クラウスを攻める時の邪魔者がいなくなるってことだしな!」

「それもそうだな。個人的には『アンダーアイ』はぶっ潰しておきたいが、逃げられてもクラウスを討つって目標にはちゃんと近づく。……それじゃ、アレクサンドラに話しかけるとしよう」


 俺は一糸乱れぬ動きで行進している隊の先頭を歩く、アレクサンドラの前に立った。

 シャーロットは当日まで何も言わないと言っていたし、俺のことも当然聞いていないのか、急に現れて邪魔をするような形で前に立った俺達に王国騎士たちはザワザワとし始めている。


 そんな様子を見ていたアレクサンドラは機敏な動きで片手を上へあげ、握り拳を作ると――その瞬間に騎士たちのザワつきはピタリと止んだ。

 流石に隊長なだけあって、指揮はキチンと取れるようだな。


「クリスさん、今日はどうかよろしくお願いします」

「こちらこそよろしく頼む。早速指示を出すという訳ではないが……提案があるから聞いてもらってもいいか?」

「おい、図に乗るなよ! 王国騎士団の指揮を執れるのはアレクサン――」

「ブルース、黙りなさい」


 ギルモアと共に後ろに控えていたブルースがこれ見よがしに突っかかってきたのだが、アレクサンドラに殺意の籠った目で睨まれ怒鳴られた。

 露骨にシュンとした表情を浮かべながらも、アレクサンドラにバレないように俺を睨みつけている。

 ……本当に実力者なのか疑問に思うほど、やることなすこと全てがかませ犬っぽいな。


「ブルースが申し訳ございません。それで提案というのは一体何でしょうか?」

「隊の半分を入口に待機させておいてほしいってだけだ。逃げ道を塞ぐという意味もあるし、これだけゾロゾロと引き連れていても邪魔になるからな」

「そういうことでしたら構いません。私もクリスさんと同じく、半分は入口で待機させる予定でしたので」

「そうだったのか。なら、余計なお世話だったな」

「いえ。私が隊長という立場にあるため、こういった提案をしてくれる人が少ないのでありがたいです」


 そう言うと、頭を下げて俺にお礼をしてきたアレクサンドラ。

 王国騎士といえば、なんとなくプライドの高いイメージがあるのだが、アレクサンドラは一切そんなことなく接しやすいな。

 ……まぁ他の騎士連中は、俺がアレクサンドラにタメ口を聞いていることにイラついているみたいだけど。


「それじゃ、向こうに勘付かれる前に急いで攻め込むとしよう。『アンダーアイ』の拠点までは先導をお願いしても大丈夫か?」

「何も問題なければ先導しますが、恐らく難しいと思います」

「……?」


 恐らく難しいという言葉の意味が分からなかったが、アレクサンドラが闇市場の入口を塞ぐ門番のような男たちの前に立った時、その言葉の意味が理解できた。


「私は王国騎士団三番隊隊長のアレクサンドラだ。この先に『アンダーアイ』の拠点があると聞いてやってきた。通らせてくれ」

「それはできねぇ相談だな。ここから先は無法地帯。国の命令だか知らないが通用しないんだわ」

「それにしても王国騎士団の隊長さんは女の子なのか。げへへ、どうだ? やることなくなって暇なら俺達と遊ぼうぜ。最高に気持ち良い遊びがあるんだわ」


 ゲハゲハと品のない笑いを浮かべながら、アレクサンドラを取り囲み始めた。

 もっと効力があると思っていたが、闇と付くだけあって王国騎士団だろうが通してもらえないらしい。

 アレクサンドラの先ほどの発言から考察すると……強行突破しか考えられないな。



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