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第363話 腕試し


 地面に頭をつけたまま動かないゴーティエを無視し、俺達はシャーロットが座っているソファの対面に腰を下ろした。

 向かいのソファにはシャーロットのみが座っており、その後ろにはミエルと見たことのない人間が二人控えている。


「いきなり襲ったこと、改めて謝罪させてもらうわ」

「少しも悪いと思っていない奴の謝罪なんていらん」

「なら撤回させてもらうわね。これっぽっちも悪いと思っていないので」


 目を細めながら、指と指の間を少しだけ開けてそう言ってきたシャーロット。

 一切悪びれる素振りのない謝罪も気に食わなかったが、ここまで開き直られると形だけでも謝罪を受けていた方がマシだったかもしれない。


「でも、襲った理由はちゃんとあるから怒らないでほしいわ」

「護身のためだろ? 入ってきた人物がクラウスの手の者だったら終わりだからな」

「もちろんその理由もあるけど……明確な理由は別にあるのよ」


 シャーロットはそう言うと、後ろに控えさせていた二人の人間を指さした。


「なるほど。俺が手を組むに値するかのテストのようなものだったのか」

「そういうこと。私は何度も実力に関しては大丈夫だと説明したんだけど、この目で見ない限りは信じられないって言われてしまったからね」

「それで俺は合格なのか?」

 

 無言のまま立ち尽くしている二人に言葉を投げかける。

 まだ挨拶もされていないし、不意打ちで襲う提案をしてきたからには名前ぐらいは聞いておきたい。


「申し遅れました。私は王国騎士団三番隊の隊長を務めさせてもらっているアレクサンドラと申します。先ほどのギルモアとの戦闘を見て、実力は申し分ないと判断できました。ご無礼を謝罪させて頂きます」


 ビシッと腰を直角に曲げて謝罪してきたアレクサンドラと名乗った騎士。

 部屋が暗い上に兜を着けていたため顔が見えなかったのだが、声からして女性のようだな。

 そんなアレクサンドラに背中を叩かれ、隣で立っていたもう一人の騎士も名前を名乗った。


「……同じく三番隊の騎士のブルースだ。ちなみにだが俺はお前を認めていな――いてっ!」


 認めていないと言い切る前に、隣で頭を下げていたアレクサンドラが思い切り尻を蹴り飛ばした。

 鎧を身に着けているものの、物凄い音が部屋に響き渡ったことから相当な力で蹴られたことが分かる。


「まぁアーシャがこう言っているから、実力に関しては問題ないと認められたみたいね」

「それなら良かった。ただ、次同じようなことしてきたら今度は寸止めじゃすまないからな」

「分かっているわ。それよりも本題に入りましょう。グダグダ話しているとすぐに夜が明けてしまうから」


 そっちから仕掛けておいて酷い言い草だが、確かにとっとと本題に入りたい。

 アーシャ呼びについても少し気になるところだが……こっちの報告の前にまずはシャーロットの話から聞くことにした。


「そっちから話を始めてくれ。ミエルから色々と聞いているだろ? その返答も含めて話を聞きたい」

「分かったわ。まず『アンダーアイ』から潰すって話についてだけど……私もその案には賛同する。クラウスの指示か分からないけれど『アンダーアイ』が私の動きをずっと監視していて鬱陶しかったし、クラウスの首を取るのには絶対にミルウォークが邪魔になるのは目に見えているから」

「賛同してくれたのは意外だな。どう説得しようか悩んでいたけどあっさり解決した」

「私としてはクラウスをやってくれれば何も問題ないし、無駄な騒ぎを起こしたくないから気持ちとしては反対なのだけどね。この件は仕方なくよ仕方なく」

「賛同してくれたのなら理由はなんだっていい。それで『アンダーアイ』の情報については調べてくれたのか?」

「いえ、全く。闇市場に拠点があるということぐらいしか知り得ていないわ」


 『アンダーアイ』の情報に関してはシャーロットにも期待していたのだが、まさかのほとんど情報なしか。

 この三日間、部屋に籠もらず情報集めに徹して正解だったな。


「期待していたんだが情報なしか」

「ええ。でも、戦闘に関してなら期待してくれていいわ。お父様に掛け合って、このアーシャ率いる王国騎士団の三番隊全てを貸していただけることになったから」


 だからこの話し合いの場に三番隊の隊長、副隊長がいたのか。

 ギルモアと軽くやり合った限り、戦力として大きな期待ができるかと言われたら首を捻らざるを得ないのだが……。


 何よりも王国騎士を味方につけて堂々と動ける点は大きい。

 クラウスとやり合う以上、俺達が悪党側として動くことになるのを当の昔に覚悟していたぐらいだからな。


「王国騎士団と共に戦えるのはありがたいな。戦力としては一切期待していないが、『アンダーアイ』とやり合う免罪符ができる」

「んだとッ! 副隊長を押さえ込んだからっていい気になってんじゃねぇぞ!」

「純粋な戦力として期待できないのは私も分かってるわ。実際に訓練を見たところ、『アンダーアイ』とまともにやり合えるのはこの三人だけ。だからこの場に連れてきたの」

「うえっ!? 王女様までもそんなことを……」


 シャーロットは実際に戦えるだけに色々と見えているのは助かる。

 三番隊がどれぐらいの数がいるのか分からないが、戦力として見られるのが三人だけってのは心もとない気もするが……。

 まぁ元々『アンダーアイ』は俺達だけで潰す気でいたしな。


 戦えるのが三人増えただけでも良いことだし、免罪符を貰えただけでもありがたい。

 それにしても……さっきからずっとうるさいブルースも戦えるってのは意外だったな。



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