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第355話 宿屋探し


 あまり目立たない宿屋探しなのだが、条件が特殊すぎて難しいんだよな。

 このメインストリートにある宿屋の方が逆に目立たないのか、それとも街の外れの人目につかない宿屋の方がいいのか。


「身を隠すためにも宿屋を取りたいんだが、目立たない宿屋で思い当たるところはないか?」

「全くないな! そもそも王都なんて計三回しか来てないし!」

「私もありませんね。闇市場の宿屋か、クリスさんが取った『ギラーヴァルホテル』しか泊まってないんですよ。闇市場のところは人気も少ない宿屋でしたけど、確か『アンダーアイ』の拠点は闇市場にあるんでしたよね?」

「ああ。闇市場のどこかに『アンダーアイ』の拠点があるってことは聞き出した。だから闇市場は避けるとして……どこにある宿屋にするかが問題だな」


 二人にも尋ねたのだが、やはり思い当たる場所はないようだ。

 今の時間帯は明け方で、人が動き始める時間までには良い宿屋を見つけておきたいところ。


 『レモンキッド』の店の前で腕を組んで考えていると、ふと一つの候補地が頭を過った。

 宿屋ではないのだが、もしかしたら協力してくれるかもしれない場所。


「一つ思い当たる場所がある。宿屋じゃないんだけど行ってみてもいいか?」

「宿屋じゃない場所? 別に構わないけど、そこってどんな場所なんだ?」

「西地区にある孤児院だ。エデストルのシスターから教えてもらった場所で、そのシスターのことを伝えれば力になってくれるとのことらしい」

「へー、いいんじゃないでしょうか。身を置かせてくれる可能性は低いかもしれませんが、宿屋を紹介してくれる可能性はあると思います」

「だな! 変なところで繋がってくるもんなんだな!」


 ということで、俺達はひとまず西地区の孤児院へと向かうことにした。

 西地区は一般住宅が立ち並ぶエリアで、規模が全く違うのだが少しだけオックスターを思い出した。


 そんな西地区をくまなく歩いて孤児院を探していると、はずれの方に少し大きめの建物があった。

 少しだけ教会に近い建物なのだが、神聖な感じはなくオックスターの教会に似た雰囲気。

 建てられている看板には孤児院と書かれているし、恐らくこの建物で間違いないはずだ。


「この建物が孤児院か。ヘスターが居た孤児院もこんな感じの場所だったのか?」

「いえ、こんな立派な建物じゃなかったです。前にも軽くお話しましたが本当に酷い場所だったので、正直似ても似つかないですね」

「俺もチラッとだけ見たことがあるんだけど……国からの助成金を貰うために孤児院って名乗ってただけで、テントに子供を詰めてただけの感じだった! 飯も最低限で売り手が見つかれば売り飛ばす。レアルザッドの孤児院は最低最悪の場所だったぜ!」


 思い出して怒りが再燃してきたのか、拳を握り絞めて語気を強めたラルフ。

 ヘスターは割りと落ち着いているように見えるが、二人に孤児院の思い出を聞いたのはよくなかったな。


「改めて潰れて良かったんだな。嫌なことを思い出させて悪かった」

「気にしないでください。もう過去と割り切っていますから。それよりも誰かいないか見てみましょう」


 先に孤児院の敷地内へと入っていったヘスターの後に続き、俺とラルフも孤児院の敷地内へと足を踏み入れた。

 孤児院は建物があるだけでなく庭のような場所もあり、決して広いとは言えないが子供が遊べるようになっている。


 時間が時間なだけにまだ寝ている可能性が高いため、うるさくしないように注意しながら敷地内に起きている人がいないかを探していると……離れにある小屋から物音のようなものが聞こえた気がした。

 音を頼りに小屋へと近づき中を見てみると、そこには一人の婆さんが服を干している姿があった。


「おんや? こんな時間にどちらさんだい?」

「朝早くからすまないな。とある人から紹介されて、ちょっと顔を出してみたんだ」

「とある人? 一体誰のことかね?」

「名前は……そういえば聞いてなかった。『エデストルのシスターから紹介してもらった』って言えば伝わると言われたんだが、逆に思い当たる節はないか?」

「エデストルのシスター。なるほど、ジャンビエの知り合いだね。……名前を言わなかったのもジャンビエらしいといえばらしいよ。ちょっとついてきておくれ。中へ案内するよ」


 そう言うと婆さんは、作業していた手を止めて建物の中へと案内してくれた。

 追い返される可能性も十分にあったのだが、本当に伝わったみたいで良かったな。


 関係性でいえばそこまで濃くはなかったのだが、繋がりをくれた婆さんシスターには感謝しかない。

 ジャンビエと呼ばれていた婆さんシスターの顔を思い浮かべて感謝しながら、建物内の食堂のような場所へと通された。


 長い大きなテーブルに椅子もずらりと並んでおり、多くの子供たちがここで食事を取っていることが分かる。

 許可を貰ったため席に着かせてもらい、ようやく話の本題へと入ることになった。



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