表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

361/540

第354話 二度目の王都


 『七福屋』のおじいさんにだけ軽く挨拶を済ませ、俺達はミエルと共にすぐにレアルザッドを後にした。

 心情的には長々と挨拶を交わしたかったところだが、向かう先は王都で生き残ることができれば半月ほどでレアルザッドに戻ってくることができる。


 絶対に生きて戻ってくるという自分への鼓舞の意味も込め、軽い挨拶程度に済ませた。

 ちなみにスノーについてだが、隠密で行動しなくてはいけない関係上王都に連れていくことは不可能と判断。


 ペイシャの森で待っていてもらうことにし、『アンダーアイ』を倒した段階で合流する予定でいる。

 言葉が通じないと俺達が捨てたと勘違いしそうだが、スノーは言葉が理解している節があったしすぐに待機の意味も理解してくれた様子。


 俺はスノーと共に比較的安全なペイシャの森まで向かい、この森で少しの間だけ自然での生活を楽しんでもらう。

 カーライルの森で自然には慣らしたつもりだし、飯に関しても最低限の準備はしておいたから恐らく問題なく過ごしてくれるはず。


「スノー、少しの間だがこの森で元気に暮らすんだぞ。やることを片付けたら迎えに来る」

「アウッ!」


 こうしてスノーと別れた俺は再びレアルザッドへ急いで戻り、ここからは無駄な戦闘を避けるため目立たないように慎重に行動する。

 裏通りで適当に買った汚いローブを羽織り、姿を隠して王都を目指して歩を進めた。


「夜で真っ暗な中を進むのって緊張しますね」

「追われている身だからな。景色も楽しみながら向かいたかったところだが、流石にそうはいかない」

「ローブで身を隠しているのも凄い違和感あるな! 裏通りで買ったから何か変な臭いもするしよ!」

「新品のローブで身を隠すのは逆に目立ちそうだから仕方がない。いい感じに貧相な見た目になってるだろ?」


 そんな感じで雑談をしながら夜の道を進んでいると、あっという間に王都へと辿り着いた。

 俺はラルフの怪我の治療を行って以来の王都。

 

 あの時も身を隠しながらだったし、碌に観光することもなく王都から去ったからほとんど印象がない。

 唯一の良い思い出といえば、『ギラーヴァルホテル』で食べた朝食くらいだろうか。


「表から入るけど大丈夫よね?」

「多分だけど入門に関しては大丈夫なはずだ。それよりも身を隠す場所だが良い場所はないのか?」

「さあ? 王都にいる期間は長いけれど、私はあまり詳しくないから」

「ミエルは見るからに良いとこの生まれっぽいもんな! 俺達が巻き込んでなけりゃ、隠れて行動するなんてことは無縁だったろうし仕方ない!」

「言われてみれば仕方ないけど……使えないな」

「クリスは一言余計なのよ! 適当に宿屋に泊まっててもバレないわよ。それよりもまずは『レモンキッド』を案内するわ」


 そうは言ってもクラウスも近い位置にいれば、『アンダーアイ』もすぐ近くにいる。

 普通の宿屋を取るのには抵抗があるのだが、良い潜伏場所がないのだとしたら仕方がない。


 半ば諦めの気持ちでひとまずは普通の宿屋を取ることに決め、ミエルを先頭に王都へと足を踏みいれた。

 入門検査を問題なく突破し、そのまま連絡を取り合う場所である『レモンキッド』という店へと直行。


「この店が『レモンキッド』か? なんかすごいところにある店だな」

「表向きはジュエリーショップ。王女様の息がかかっているから、この中なら何の心配もなく取引できるわ」


 王都のメインストリートにある建物の五階。

 特に看板とかは出していない店で、店自体は小さいながらもかなり繁盛している様子。


 王都に着いたのが明け方のため店はまだ開いていないのだが、ミエルは鍵を取り出すと躊躇することなく店の中へと入り、従業員専用の部屋へと進んで行った。

 従業員しか立ち入れない場所の先に、更に鍵付きの扉があり――その奥は豪華な作りの応接室となっている。


「基本的にこの部屋で話を行うから覚えておいて。お店に来る時は基本的に一人で来ること。できればヘスターに来て欲しいけれど、まぁクリスでもいいわ」

「随分厳重な造りの部屋なんだな。条件については分かったんだが、この部屋で寝泊まりさせてはくれないのか? ここなら他の奴らにバレることないだろ」

「絶対に無理。部屋から一歩も動かないっていうなら了承されるかもしれないけど、そうなると臭いも籠もるだろうし九割方無理ね」


 駄目元で頼んでみたのだが、流石に使わせてくれないか。

 今度こそは諦めて自力で宿を探すしかなさそうだ。


「他に何か質問はある? 馬鹿王女に伝えてほしいこととかがあれば今の内に言っておいて」

「『アンダーアイ』について知っている情報があれば教えてほしい。何なら情報を集めて欲しいと伝えておいてくれ。こっちでも集めるつもりだけど情報は多いに越したことはないからな」

「分かったわ。情報集めを了承するか分からないけど一応伝えておく」

「質問に関しては特にないな。二人もミエルに聞いておきたいとかはないか?」

「私は大丈夫です。クリスさんに従うだけですので」

「俺も大丈夫だ! 何を言っているか半分以上分からねぇし、首を突っ込むつもりはない!」

「それなら良かった。とりあえず三日後の深夜にここに集まりましょう。その時に色々と報告させてもらうわ」

「三日後の深夜だな。分かった。それまでは目立った動きは取らないように注意させてもらう」

「何度も言うようだけど来るのは一人だけよ。それじゃ私は戻るから」

「ああ。ここまでの案内助かった」


 『レモンキッド』を後にし、メインストリートに戻ったところでミエルとはすぐに別れた。

 さて……まずは宿探しだな。なるべく目立たない場所を探すとするか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  ▼▼▼ 画像をクリックすると、コミックウォーカーに飛びます! ▼▼▼  
表紙絵
  ▲▲▲ 画像をクリックすると、コミックウォーカーに飛びます! ▲▲▲ 
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ