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第349話 電撃


 ウッドがやられてブチ切れているダインは、怒りの雄たけびを上げながら一直線で俺の下へと駆けてきた。

 動きは速いが先ほどと比べると遅く、怒りによって冷静さを欠いている様子。


 俺もラルフとヘスター、スノーが殺されたら同じような状態になり得るため大きなことは言えないが、この状況で無策で突っ込んでくるのは甘すぎる。

 鉄の剣に切り替えようと思ったが、ダインのこの動きを見る限りはヴァンデッタテインで対応することが可能と判断。


 ウッドを斬り殺したヴァンデッタテインを構えたまま、駆け寄ってくるダインの動きを注視していると――俺の間合いに入る直前でダインの姿が変化したように見えた。

 体全体に電気が走ったかのように黄色く発光し、髪も一気に逆立っている。


 その姿に嫌な予感を覚えた俺は、目で捉えるのを止めて先ほどと同じように目を瞑って耳で捉えにかかることを決めた。

 【聴覚強化】のスキルを発動させると、バチバチといった火花が散るような音が聞こえ、正面から聞こえていたその音が急に背後から鳴ったのを確認し、ほとんど感覚だけで振り向きながら斬りかかる。


「――ッチ、これでも振り切れないのかッ! だけど僕に触れたら終わりだ!」


 目を開けると、ダインの短剣の先に体全体に纏っていた電気が集約しており、目が眩むほどの強烈な光を放っている。

 仕掛けは分からないが高エネルギーというのは触れなくとも分かるため、このまま剣を振り下ろすのを一瞬躊躇ったが、一撃で殺してしまえばダメージが大きかろうと無問題。


 懐に潜り込むように腹部を狙って短剣を突き刺しにかかっているダインの動きに合わせ、俺はヴァンデッタテインをそのまま振り下ろした。

 電気の帯びた短剣の刃とヴァンデッタテインがぶつかったが、ウッドの時と同様に武器の差が歴然すぎたのか、さっき以上に何の感触もなくダインの短剣はへし折れた。


 その瞬間、ヴァンデッタテインを通して意識が飛ぶような強い衝撃が走り、体が電気によって硬直仕掛けたが――気力と気合いだけで耐え、体重を使ってヴァンデッタテインを最後まで振りきる。

 短剣を握っていた左腕ごと胸部から腹部にかけてを斬り裂き、そのまま倒れた俺の下敷きとなった。


 確実に致命傷を負わせたとはいえ、まだ絶命しているかどうかが分からない。

 体の下からは生暖かい血の感触を感じるものの、早くこの状態から抜け出さなければ攻撃を食らう可能性がある。


 【痛覚遮断】を使用して痛みを強制的に抑え、俺はふらふらになりながらもなんとか立ち上がった。

 痛みはなくとも痺れは残っているのか、なんとも言えない変な感覚だな。


 ……っと、それよりもダインがどうなっているのかの確認が先決。

 俺の下敷きとなって倒れたダインを確認してみると、ヴァンデッタテインの刃は心臓まで達していたようで絶命していた。


 深くまで斬り裂いた感触はなかったのだが、体が小さいため思っていた以上に深くまで斬れていたらしい。

 パブロの血にウッドの血。

 それから二人以上にべったりと体に付着したダインの血で、俺の体は真っ赤に染まっている。


 まるで悪魔にでもなった気分だが、そんなことを考えたくないほど疲労感が半端ではない。

 体も思うように動かないし、このまま倒れて眠ってしまいたいところだが……。

 俺は無理やり体を動かしながら、背後に控えさせていたヘスターとラルフの下へと向かった。


「圧勝でしたね。ほとんど剣を交わすことなく一方的な勝利でした」

「……いや、かなりギリギリの戦いではあった。俺の都合で待機させて悪かったな」

「気にしないで大丈夫で……いえ。頼って貰えなかったのは少し寂しかったです」


 ラルフに続き、ヘスターも少し悲しそうな表情でそう呟いた。

 いつものようにラルフが騒ぐこともないため場が少し凍り付く。


「ラルフにも悪いことをしたな。ただ『アンダーアイ』は極力俺が仕留めたいと思っている。そこだけは二人にも分かってほしい」

「謝罪なんていらねぇんだよ! 俺もヘスターもクリスに怒ってんじゃねんだからな!!」


 そう言いながらも俺の顔の前まで近づき、怒鳴ってきたラルフ。

 言っていることに矛盾を感じざるを得ないが……まぁラルフが言わんとすることが分からない訳ではない。


「どう考えても俺にキレてるけどな」

「……この話はあとでにしましょう。この残骸を片付けることを優先させなくては大事件になってしまいます」

「だな。二人にも手伝いを頼んでいいか?」

「死体の処理だけなんて気乗りしねぇが……我儘も言ってられないからな! クリスが頼むって言うなら手伝ってやるよ!」

「助かる。まずは着替えたいから、宿屋に戻って俺の着替えを取ってきてくれ」

「おいっ、死体の処理じゃなくてパシりかよ!!」

「この状態じゃ、戻れないどころか動くことすらできないんだから仕方ないだろ。頼むから行ってきてくれ」

「分かったよ! その代わり、全てが終わったら一度話し合いだからな!」


 ラルフはそう言うと、走って宿屋『月花』へと向かってくれた。

 残った俺は死体を廃屋へと担ぎ込み、ヘスターは二人の血痕の処理を黙々と行ったのだった。



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