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第344話 誘い出し


「俺は……フライ定食にするぜ! クリスは何を頼むんだ?」

「日替わりA定食」

「私は野菜炒め定食で」


 料理を決めてから店員を呼び、注文をお願いする。

 どれほどの毒を盛られるのか分からないが、大袈裟に倒れれば向こうからアクションを起こしてくるだろう。


 俺は二人と何気ない会話しつつも、ハンドサインで何が起こっているのかを説明する。

 ラルフは一瞬凄まじく驚いた表情を見せたものの、俺が狙われていることを伝えていたお陰ですぐに状況を飲み込んでくれたのは助かった。


 注文してからしばらく待っていると、料理が完成したようで店員が運び込んできた。

 料理がこちらに到着すると同時にラルフにはトイレへと向かわせ、俺とヘスターで先に料理に手をつけることにした。


 とは言ったものの、本当に料理を食べるのは俺だけでヘスターは食べたフリだけ。

 どの料理に毒が盛られていることまでは分からなかったため、一切口にしないように言い伝えてから、俺は一気に運び込まれた料理を口の中へと掻きこみ――そして、心の中で一分間を数えた後に盛大に倒れた。


 机をひっくり返す勢いで前のめりに倒れ、俺の横にいたヘスターもピクリとしないまま一緒になって倒れる。

 俺達が盛大に倒れた音を倒れた音を聞きつけ、心配そうに店員がすぐに駆け寄ってきたのだが……。


「お客様大丈夫ですか? 大丈夫でしたら返事をしてください! ……ふぅー、良かった。早く呼んできて! トイレにもう一人いることも伝えてよ!」


 俺達が倒れているフリをしているとも知らずに店員同士で何やら会話を交わし、奥にいる“誰か”を呼びに向かった。

 さて、一体誰が店の奥から出てくるのだろうか。


「もう倒れたって本当か? 徐々に効いてくる毒のはずなんだが……本当に倒れてやがる。もう一人はトイレに行ったんだっけか? お前らが取り押さえろ」

「えっ? 毒を盛れば解放してくれるって! 私達にはそんな力はありませんよ!」

「ッチ、使えねぇな。なら誰も入ってこないように見張ってろ」


 店の奥から出てきた男は店員にそう告げると、俺の下までやってきて顔を覗き込むようにしゃがみ込んだ。

 ……相手は一人だけか。やはりと言うべきかこの男からは一般人と同程度の力しか感じない。


「本当に毒が効いているのか。さて、トイレにいるもう一人はどうするか。ダグラスダインに頼むか? でもなぁ……狙いはコイツ一人だけだし、とっとと攫ってズラかるか。女の方は高く売れそうだし――ヒッヒッヒ、連れて行くとするか」


 気色悪い独り言を呟いた後、俺を運ぼうと掴んできたため……ここらが倒れたフリをする潮時だろう。

 ダグラスダインとやらも引っ張り出したかったが、こいつから直接聞き出せばいい。

 黒ローブの男の件もあるし、話すかは分からないけどな。


「残念だったな。倒れたフリだ」

「はっ、えっ? クソッ! あいつ、しくじりやがったのか!」


 掴んできた手を逆に掴み返し、俺は黒幕の男を床へと押さえつけた。

 ずっと目を瞑っていたため姿はここで初めて見たのだが、この男も黒のローブを身に纏っている。

 黒ローブは『アンダーアイ』の特徴的な装備品のようだな。


「ひとまず腕を一本折らせてもらう」


 そう宣告してから押さえつけていた右腕をそのまま躊躇なくへし折った。

 悲痛な叫び声が店内に響き渡ったが、顔を床に押さえつけて音を最小限に留めされる。


「あとは俺一人で大丈夫だから、ヘスターはラルフと合流して周囲の警戒に回ってくれ。この男は以前二人が使っていた廃屋に連れ込む」

「分かりました。二人で手分けして警戒と廃屋までの安全確認に回ります」

「よろしく頼む」


 物分かりの良いヘスターが外に出たのを確認してから、俺は襲ってきた男の顔面を床に何度も叩きつけ、今度は自殺できないように事前に処置を施す。

 鼻が潰れ、口がだらしなく開いたところに手を突っ込み……奥歯に仕込んであった毒薬を回収。


「これで自死はできないぞ――って聞こえてないか」


 戦闘能力を感じ取れなかっただけあり、軽く痛めつけただけで意識が半分飛んでいる。

 力を隠していたのではなく本当に力がなかったようだ。


 索敵能力に長けている俺にとっては非常に厄介な人間だし、そのことを考えて力がない人間を組織の一員にしているということ。

 俺を待ち伏せしていて尚且つ、店の奥にいながらも小声で会話をしていたことからも、この男の頭がキレることには間違いないからな。


 『アンダーアイ』への俺の中での評価を心の中で一段階上げ、俺はすぐに【粘糸操作】と【硬質化】の合わせ技で捕縛。

 男の意識が飛んでいる内に、先に外へと向かわせていたヘスターの誘導の下、俺は店員以外の誰にも見られることなく廃屋へと連れ込むことができた。



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