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第343話 違和感


 シャノンのポーション屋を出てからは、二人が紹介する店を計六軒回った。

 どこの店も楽しく、俺は十分すぎる一日を過ごすことができたのだが……。


「もうこんな時間かよ! まだ回りたい店あったのに!」

「本当ですね。昨日組んだ予定では、あと六軒は回れる予定だったんですけど」

「マリッサの婆さんが長話したからだろ! 全然物足らないぜ!」

「いえ、マリッサさんよりもゴードンさんの方が長話していました」


 ……と、まぁこんな感じで二人は全然物足らなかった様子。

 このまま二人の口喧嘩を聞いていても良いが、パン屋以降飯を食っていないため腹が減った。

 さっさと宥めて飯屋に誘導するとしよう。


「また別日に行けばいいだけだし言い合うのはその辺までにして、飯を食いに行こうぜ。流石に腹減った」

「クリスがまた付き合ってくれるっていうなら……別にいっか! 確かに腹減ったな! 夢中になりすぎてご飯食ってなかったし!」

「一応、途中にご飯屋さんを組み込ませていたんですけど、そこまで辿り着かなかったんですよね。裏通りのいつもの定食屋さんは閉まっていると思いますので、表通りでご飯屋さんを探しますか?」


 まぁ表通りならまだまだ営業しているところばかりだし、表通りから探すのが一番良いだろうな。

 そう思いヘスターの案に賛同しかけたが、一つ気になる場所が頭に浮かんだためそちらの提案を行うことにした。


「なぁ一つ気になる場所があるからそっちに行ってもいいか?」

「気になる場所ってどこだ? 俺は料理が美味い店なら大歓迎だぜ!」

「料理自体は……まぁ普通ってところだ。ヘスターから教えてもらった情報屋のいる定食屋なんだが」

「クリスさんの情報を漏らしていないかどうか気になるってことですか? 私は別に構いませんよ」

「ああ、そう言ってくれて助かる。ラルフもそこでいいか?」

「うーん、まぁいいぜ! 明日は表通りの店巡りだもんな?」

「そのつもりではいる。エデストル最終日みたいに色々回るつもりだ」

「なら全然いい! ご飯の楽しみは明日に取っておくからよ!」


 二人の賛同を貰ったところで、先日訪れた情報屋のいる定食屋に向かうことに決めた。

 食べた日替わり定食もまぁまぁ美味かった訳だし、俺の情報が漏れるとしたらあの情報屋から。


 牽制も兼ねて行きたいと思っていたから丁度良い。

 俺達は早速、情報屋のいる定食屋に向かって歩を進めた。



 例の定食屋へと辿り着き、俺は手を伸ばして中へと入る。

 普通に客も入っており、前回訪れた時と何も変わらない感じに一瞬思えたのだが……何とも言いづらい強烈な違和感を覚えた。


「へー! 中々良さそうなお店じゃん! 種類も多いしよ」

「……ヘスター、何か気が付いたか?」

「分からないですが、私達が入った瞬間に場が凍り付いた気がします」

「いらっしゃいませ! 好きな席に座ってちょうだいね!」


 何も気づいていない様子でメニューを見ているラルフの後ろで、俺とヘスターで静かに会話を行う。

 やはりヘスターは一瞬流れた変な空気感に気が付いたか。


 俺が一度情報屋を利用したことがあるから、店員が気を張ったのではないかと思ったのだが……。

 店全体が凍り付いた感じがしたから、そんな感じではないんだよな。

 

 ただ、索敵スキルを発動させたが引っかかる点はなし。

 思い過ごしの可能性もあるため、ひとまずは適当な席について様子を窺おう。


「ラルフ、そこのテーブル席でいいだろ。座って注文しようぜ」

「えー! 奥の広い席の方がよくないか?」

「いいんだよ。飯を食うだけだし、入口から近い方が俺はなんとなく好きなんだ」


 本当に何も気づいていないラルフを納得させ、いつでも外へ行けるように入口から近い席について様子を窺う。

 向こうに怪しまれないようヘスターにはラルフと普通の会話をしてもらい、俺だけが店内の様子を探ることに決めた。


 【魔力感知】と【生命感知】からでは何の反応も感じられなかったため、【聴覚強化】を使用して店内の音を全て拾い上げる。

 客の反応も固くなった印象があったが、流石に世間話のようなものしかしていない。

 次に俺は店の奥の音を必死に聞き分けることにした。


「……来ました。あの……が例の男です。だから助け……」

「……だな。注文した……にこの毒を……こい。そうしたら……」


 店の奥だと言うのにかなり小声で話しているのか、途切れ途切れしか聞こえなかったが怪しさしか感じない会話が耳に入ってきた。

 やはり俺とヘスターが気づいた違和感は正しかったようだ。


 【魔力感知】と【生命感知】では反応を示さなかったため、戦闘能力は皆無に近しいと思うのだが『アンダーアイ』の構成員で間違いないはず。

 少数精鋭と聞いていたため手練ればかりだと思っていたが、俺が思っている以上に多種多様な人材がいるようだ。


 正確かどうかは分からないが料理に毒を盛るような会話をしていたため、そのことを逆手に取っておびき出してやるとしよう。

 クラウスは俺が【毒無効】持ちなのを知っているはずなため、その作戦のガバガバさには少し引っかかるが……とりあえず実行あるのみだ。


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