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第337話 ローブの男の正体

 

 ただ場所の移動といっても、どこに移動するかがなぁ……。

 もちろん一番安全なのは、泊まっている宿屋『月花』の部屋。


 誰にも聞かれることはないし確実に安全なのは保障されているが、名前も知らない情報屋を部屋に入れたくないという気持ちが強い。

 逆にこの情報屋に俺の部屋の場所の情報を与えることになるし、部屋に招き入れるのは避けたいところ。


 となると、候補として残っているのは『七福屋』だが、おじいさんに迷惑をかけたくないし駄目だな。

 ッチ。情報屋なら場所も提供しろと言いたいところだが、文句を言ったところでどうにかなる話ではない。


「向かう場所は決まったのか?」

「……ああ。たった今決めた。俺についてきてくれ」


 残っていたご飯と肉野菜炒めを口の中へと掻きこみ、卵スープで流し込んでから俺は席を立って定食分の支払いを行った。

 ここから向かう場所だが、ヘスターとラルフが拠点として使っていた廃屋へ向かおうと思っている。


 人目がつかないし残っている選択肢が、あの廃屋ぐらいしかなかった。

 昨日あの建物で人が一人死んでいるし、動けないように足を斬った切り傷からの出血跡も残っているはず。


 隠蔽工作を碌に行っていない場所も避けたかったが……他に場所がないから仕方がない。

 ローブの男が死んだ部屋にさえ入らなければ、恐らく何も問題ないはず。


「ほへー。この廃屋で話をするってのか?」

「何か不満があるのか? 金さえ払えばどこでもいいんだろ?」

「不満は特にないが、不法侵入にならないかが心配でな。お前さんが所有している建物じゃないだろ?」

「大丈夫だ。長年誰も使っていないし、もし兵士に見つかったら全て俺のせいにしてくれて構わない」

「そういうことなら、まぁここでいいだろう」


 建物を外から見て渋った様子を見せた情報屋を説得し、周囲を一度見渡し安全を確認してから、俺を先頭に廃屋の中へと入った。

 ……昨日は気づかなかったが、改めて入ってみるとかなりの死臭を感じる。


 死臭といっても、強者が持つ気配と似たようなもので実際に腐った臭い等が漂っている訳ではない。

 それでも生と死に間近で触れている者ならば、すぐに勘付くものなのだが……情報屋の反応を見る限りは気づいていないようだ。


「中もかなりボロっちいな。ここで話をするってことでいいのか?」

「ああ。適当なところに座ってくれ。座りたくないなら立って話そう」

「……汚れそうだから立って話させてもらうわ」


 そう言った情報屋を横目に、俺は近くにあった椅子を引っ張りだして座る。

 汚れとかはどうでもいいし、立ってるとどうも落ち着かないからな。


「まずは情報料を先に渡しておく。移動料も込みで金貨一枚で構わないか?」

「おっ、随分と羽振りがいいじゃねぇか。金貨一枚なら情報を二つくれてやるよ。もちろん俺が知っている情報しか答えられないから、知らなくてもキレないでくれな」

「ああ。まず初めに聞きたいのは、双頭の蛇のタトゥーが彫られた人間についてだ。このワードから何か思い当たる人物はいるか?」


 何が一つの質問としてカウントされるか分からないため、俺はいきなり本題へと入った。

 双頭の蛇のタトゥーの人間について知っていれば、わざわざこの廃屋まで連れてきた意味がある。

 もし知らないようなら……話を切り上げて帰るまでだな。


「双頭の蛇のタトゥーが入った人物? もちろん知っているぜ。情報の一つはそれでいいのか?」

「構わない。知っているなら教えてくれ」

「双頭の蛇のタトゥーは、王都のチンピラ集団『アンダーアイ』の構成員がその証として彫っているタトゥーだな。かなり有名な話で王都に住む連中なら大抵は知っているぞ。なりすますために彫っている奴もいるくらいだからな。……まぁなりすましは見つかったら殺されているけどよ」


 『ザマギニクス』じゃなくて、『アンダーアイ』の方だったか。

 ……そういえば『アンダーアイ』のリーダーは、クラウスのパーティに加入しているんだっけか。


 そのことを考えれば、確かにあの黒ローブの男が『アンダーアイ』の構成員だった可能性は高い。

 すっかり忘れていたが、ミエルから『アンダーアイ』に気をつけろと忠告されていたことを今になって思い出した。


「双頭の蛇のタトゥーは、『アンダーアイ』の構成員である証なのか」

「入りたいってんなら止めておいた方がいいぜ。少数精鋭の極悪非道組織。最近は更にキナ臭い噂まで立っているからな」

「キナ臭い噂? なんだその噂っていうのは」

「……二つ目の情報としようかと思ったが、まぁこの情報は一つ目の情報のおまけとして教えてやるよ。あまりにも常識的な情報だったからな」

「それは助かる。それでキナ臭い噂ってなんだ?」

「人を殺して回ってるって話だよ。噂によれば【剣神】様と繋がっていて、その邪魔になる者を『アンダーアイ』が消して回ってるって噂だ。王都周辺の街に構成員を忍ばせているらしいし、実際にこのレアルザッドで見たって奴も多数いるからな」


 確かにキナ臭い噂だし、実際に自死した黒ローブの男がいたことから単なる噂ではなく本当の話である可能性が非常に高い。

 情報と先日の出来事を合わせて考えると、俺を狙って動いていた訳ではなく偶然俺が見つかってしまったって感じだろうか。

 ……レアルザッドに派遣していた人物があの男だけだったならば、見つかったのは本当にツイてなかった訳だな。



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