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第323話 ルーン


 昨日は帰ってくるのが夜遅い時間となってしまったが、買い出しをしなくてはいけないため朝に無理やり起床。

 そのままラルフ、ヘスター、スノーと共に、旅に必要な買い物を行った。


 買う物は事前に決めていたため、三人で手分けして店を巡ったためあっさりと買い揃えることができ、明後日の出発に対してこれで何の憂いもない。

 さてと、夕方前にして完全に空き時間となった訳だが何をしようか。

 俺が腕を組んで悩んでいると、後ろからラルフが声を掛けてきた。


「なぁクリス! 明日は一日中、エデストルで遊び尽くすんだよな?」

「ああ。エデストルを発ったら、もうそんな時間を作れるか分からないからな」

「最後の思い出作りか! 一日中観光したことなんてないし、なんかワクワクしてきたぜ!」

「夜は『ペコペコ』でワイバーンステーキ。これだけは決まってるから、他に行きたいとこがないか考えておいてくれ」

「了解! 先に宿に戻ってるヘスターにも伝えておくわ! クリスはまだ戻らないんだろ?」

「俺はちょっと寄り道してから帰る。昨日俺が買ってきた荷物についても確認しておいてくれ」

「あの大きな麻袋に入った奴か? 分かった! その荷物も見ておくわ!」


 ラルフは満面の笑みでそう言うと、スキップでもしそうなほど軽いステップで『ゴラッシュ』へと帰って行った。

 ラルフに話した通り、明日はエデストル最終日ということで三人で一日中観光する予定。


 昨日『ペコペコ』を連れて行こうと思った時に思いつき二人に話したところ、ラルフもヘスターも喜んで快諾してくれた。

 エデストルに来てからは遊ぶ暇もなかったし、最後の思い出作りとしては良い案だと思う。


 ……と、明日のことは後で考えるとして、これからどうするかを考えなくてはいけない。

 ラルフにああは言ったものの、これからどこに行くかまだ決まっていないんだよな。


 候補としては三つあり、一つ目はロザの大森林へ行くこと。

 明日は行けないだろうし、最後に散々世話になった挨拶も兼ねて訪れたいという思いがある。

 ただ時間的に本当に行って戻るだけになりそうだし、気分的な問題なだけで絶対にやらなくてはいけないことではない。


 二つ目はダンジョン街へと行って、【月影の牙】に会いに行くこと。

 会う目的としては、初代勇者の装備についての情報収集。

 

 ヒヒイロカネ冒険者なら知っている可能性も高いし、まだ会ったことはないが【剣聖】の適正職業持ちがいるみたいだからな。

 手に入れた装備について、何か知っている可能性が高いと思っている。


 最後の三つ目は『マジックケイヴ』に行くこと。

 こちらも初代勇者の装備絡みで、アーロンが言っていた“ルーン”についてを爺さんに聞くのが目的。


 ゴーレムの研究をしていた爺さんなら、確実にルーンのことを知っているだろうし……。

 ヴァンデッタテインのルーンについての秘密も解明してくれる可能性がある。

 その場で腕を組み、俺は必死に頭を働かせて考えた結果——。


「ゴーレムの爺さんのところに行くか」


 一番安定なのは『マジックケイヴ』に行くことのはず。

 ボソリとそう独り言を呟いてから、俺は『マジックケイヴ』を目指して歩を進めた。



 慣れた足取りで店の奥へと向かい、いつもの爺さんの作業部屋へと着いた。

 部屋からはモクモクと煙が立ち籠っており、中で何かしらの作業をしているのが伺える。

 俺は扉をノックし爺さんの準備が整うのを待ってから、部屋の中に入った。


「なんじゃクリスかい。最後の挨拶にでもしに来たのか?」

「いや、違う。今日も聞きたいことがあって訪ねてきた」

「この期に及んで聞きたいこと? 王都までの道を尋ねたいとかならワシの以外のところに当たってくれ」

「道なんかわざわざ聞きに来ない。……ルーンについて知っていることがあれば教えてほしいんだ」


 俺がルーンという単語を出すと、途端に目つきが変わったゴーレムの爺さん。

 爺さんにとっては一番の得意分野だし、誰かに語りたい欲は溜まっているだろうから……この反応を見る限り、爺さんの方から進んで解説してくれそうな感じだ。


「……なんで急にルーンについて知りたくなったんじゃ?」

「やっぱりルーンについて知っているんだな。俺がルーンについて知りたいのは、手に入れた武器にルーンが彫られていたからだ。使い方が自分でもよく分かっていないから詳しく知りたい」

「武器にルーン。……よし、分かった。そのルーンの彫られた武器とやらを見せてくれたら、喜んでルーンについてを教えてやろう」

「もちろん構わない。説明をよろしく頼む」


 俺はヴァンデッタテインを鞘から引き抜き、ゴーレムの爺さんに手渡した。

 元々見せるつもりだったし、これで何か分かればいいんだがな。


「剣についてはさっぱりじゃが、この剣は相当質の高い剣じゃな。疎いワシにも分かる。――ッ! 本当にルーンが彫られておるぞい! この石はヴァンパイアジュエル? なるほど! そういう仕組みなっておるのか!!」


 ブツブツと独り言を呟きながら、徐々にヒートアップし始めた爺さん。

 独り言は自己完結しているため何も読み取れないし、ひとまず落ち着くのを待つしかないようだな。


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