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第322話 掘り出し物


 安く買って、安く売っていると言っていたが、はたしてどれくらい安く売られているんだろうか。

 売れ残った物を中心だろうから、本当に良い物は売られていないだろうが気になる。


「ローク! さっき話した通り、商品を売ってくれ!」

「本当にすぐに戻ってきましたね。渋々ながら許可は出してしまいましたから、好きなだけ見て行って頂いて構いませんよ」


 山積みにされた商品の前に陣取っている、眼鏡をかけたTHE商人という感じの人に声を掛けたボルスさん。

 小太りだが話し方に知性を感じるし、ボルスさんとは違って勉学に長けた人なんだろうな。


「ロークさん、ありがとうございます! ゆっくり見させて頂きますね!」

「今日はルパートさんも一緒でしたか」

「ルーファスもいますよ! ……ほら、ルーファス」

「どうも」


 ボルスさんに続いて、流れのままルパートとルーファスも挨拶を行い……全員の視線が俺に向けられた。

 誰か適当に紹介してほしかったところだが、これは俺から自己紹介を切りだすしかなさそうだな。


「ボルスさんに紹介されてきたクリスと言う。よろしく頼む」

「ええ。ごゆっくり見て行ってください」


 よし。ロークの許可も下りたことだし、早速山のように積まれた商品を見ていくとするか。

 四人横並びとなり、目に付いた商品を手に取っては戻していく作業を行っていく。

 どうやら三人も俺のために動いてくれているようで、自分のよりも俺に合った物を探してくれているようだ。


「クリス君! ちょっとこれ見てよ! ポーション結構買い込んでたし、これいいんじゃないの?」

「それは……水筒か? わざわざ水筒に入れ直してポーションを飲めってことか?」

「水筒は水筒だけど、飲みやすいように長いストローがついているんだよ! ポーションを取り出し、蓋を開け、飲むって動作が一気に解消される! 結構よくない?」


 確かに便利そうには思えるが、買うかどうかはかなり微妙なラインだな。

 俺一人なら絶対買ってないし、その説明を受けたから少し興味が出たって感じだ。


「興味が少し出てきたって感じで、欲しいとまでは思わないな。ちなみに値段はいくらなんだ?」

「銀貨一枚! 替えのストローも三十本付いているみたいだよ!」

「…………買おうかな。この値段なら買いな気がしてきた」

「気に入ってくれて良かった! じゃあ捌けて置いておくね!」


 銀貨一枚は安いな。もし使いづらくて使わなくなったとしても、銀貨一枚なら惜しくない金額。

 ……なるほどな。売れ残りなだけに、この水筒みたいに使えるのか使えないのかギリギリのラインの商品がいっぱいあるようだ。

 なんだかんだ言って無駄な出費が増えそうな予感がビンビンしているが、しっかりと本当にいらない物は買わないように精査しよう。

 


 それから約二時間ほど、俺は夢中になって商品の山を漁りまくった。

 三人も絶え間なく商品を勧めて来てくれるというのもあり、この大量の山の半分は見ることができたと思う。


「クリス、捌けた商品は全て購入ってことでいいのか? ロークに会計してくるからよ!」

「ああ。これ全て買わせてもらう」

「了解! ここで少し待ってろ!」


 ここまで集中して買い物したのは初めてと言えるほど、頭をフル回転させながら商品選びをしていた。

 程よい強敵との戦闘後のような、気怠さに混じった妙に清々しいこの感覚。


「クリス君、どうだった? かなり良いお店だったでしょ?」

「最高に楽しませてもらった。二人とも一緒に選ばせて悪かったな」

「別に気にしなくていいですよ。掘り出し物を探すのは俺も嫌いじゃないんで」

「そうそう! 私もかなーり楽しめたよ。ステーキのお礼も兼ねてるし、クリス君も楽しかったなら良かった!」


 二人も笑顔でこう言ってくれたのは良かった。

 完全に俺のためだけに時間を使わせていたからな。


「査定が出たぞ! 合計で金貨五枚だとよ! ちゃんと払えるか? 払えないなら俺が足らない分を払——」

「大丈夫だ。最近は依頼ばっかりこなしていたから金はある。俺が買った物だし俺が全額しっかり払う」

「……そうか。性格上どうしても奢りたくなっちまうんだが、クリスは俺よりも冒険者ランクも実力も上だからな! ここは先輩風吹かすのやめさせてもらうぜ!」

「店を紹介してくれただけでありがたいからな。三人共本当にありがとな」


 感謝の言葉を伝えつつ、俺は袋から金貨を五枚取り出してボルスさんに手渡した。

 一見すると金貨五枚だと高そうにも思えるが、正直想像できないほどの格安価格。


 量で言えば肩で担ぐような大きな袋がパンパンな訳だし、しっかりと精査しただけあって変なものはないからな。

 ……まぁ使えるかどうか微妙な商品も多いけども。


「それじゃ今日は帰るとするか! わりぃな、夜なのに付き合わせちまって! 楽しかったぜ!」

「本当に良い一日だったよ! クリス君、改めてごちそうさまでした!」

「楽しかったです。ごちそうさま」

「こっちこそ楽しかった。……全てが終わったら、またエデストルに顔を出す。その時はまた良くしてくれ」


 こうして、ボルスさん達との食事会と突発で行った買い物が終わった。

 ワイバーンステーキで奢った分以上の元を取らせてもらった気がするし、何より最後にボルスさん達と買い物することができて良かった。

 買った商品については、明日ゆっくりと確認するとしようか。



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