表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

327/540

第321話 裏店


「はぁ……。最高に美味かった! ワイバーンステーキはいつでも美味い訳だが、クリスに奢ってもらって食べた今日のワイバーンステーキが一番美味かったぜ!」

「本当に美味しかったねぇ。私なんかほとんど何もしてあげてないのに、高いお肉をご馳走してくれてありがとう!」

「俺はルパート以上に何もしていないと思いますよ。ボルスの知り合いってだけで奢ってくれてありがとうございます」

「いやいや、ルパートにはポーション選び。ルーファスには修行に付き合ってもらったし、何より飛ぶ斬撃なるものを見せてくれた」


 ロザの大森林でヘラクベルグが使ってきた、魔力を込めた斬撃。

 あれを見てもあまり驚かずに済んだのは、直前の手合わせでルーファスが見せてくれたからってのも大きい。


「ポーション選びも勝手にやったことだしなぁ……。ねぇ、ボルス! 例の店にクリス君を連れて行ってあげようよ! 人に紹介するなって言われてるけど、クリス君はもう街を離れるしいいんじゃないかな?」

「えっ? 流石にまずいだろ! 俺達まで出禁になるかもしれないんだぜ?」

「俺も紹介して良いと思いますよ。ステーキ奢ってもらいましたし」

「……うーん。ルパートとルーファスが良いってんなら良いか! クリス、ちょっとついてこい! 最後に一軒だけ付き合ってくれ!」

「ん? 勝手に話を進めないでちゃんと説明しろよ」


 急に変な話の方向に切り替わり、俺は即座に説明を求めたのだが……ボルス達は特に説明をすることなく歩き出した。

 ルパートは例の店と言っていたが、一体何の店なんだろうか。

 話の流れを聞く限り、かなり怪しそうな雰囲気はあるけども。


「この店だ! まずは俺が入って聞いてくるから待っててくれ!」


 冒険者ギルドの近くにある『ペコペコ』を出て、ボルスさんが立ち止まったのは同じギルド通りにある商人ギルドの前。

 商人を仕切っているギルドなだけあり、かなり豪華な外観をした建物だ。


 冒険者ギルド以外のギルドは夜まで営業していることはなく、この商人ギルドも最低限の明かりしかついていない。

 扉の前に『CLOSED』の看板が出されているし、確実に営業していないはずなのだが……ボルスさんはドアノブをガチャガチャと回し始めた。

 

 回し方に何か秘密があるのか鍵がかかっていたはずなのだが、カチャリと開錠された音がしたと共に扉が開いてしまった。

 なんてことなさそうに入って行くボルスさんの背中をしばらく見つめてから、一緒に待ってくれている二人に目を向ける。


「盗みに入っていったとかじゃないよな?」

「違う違う! ちょっとした伝手があるから大丈夫だよ!」

「そうそう。ボルスは交渉に行ってるだけだから安心して大丈夫です」

「交渉って何の交渉なんだ。ここまで来たら教えてくれたっていいだろ」

「それは行ってみてからのお楽しみだよー! それに交渉に失敗したら教えられないしさ!」


 やっぱり何をしに来たのかは教えてくれないみたいだな。

 これ以上は聞くだけ無駄だし、ボルスさんの帰りを大人しく待っていると……扉が開き、ボルスさんが戻ってきた。


「いやぁ、糞ほど文句言われたけどなんとか許可貰えたわ! クリス、中に入ってくれ!」

「やっとか。一体何があるって言うんだ?」


 ボルスさんに誘われるがまま、俺は商人ギルドの中へと入る。

 中は薄暗く外から見て分かっていた通り、必要最低限の明かりしかついていない。


 そんな薄暗い商人ギルドの中を進んで行くと、一つの扉の前で立ち止まった。

 後をついて中に入ってみたが、何もないただの作業部屋のようにも思えたけど……奥の床が微妙にズレている気がする。


「あそこの床に何かあるのか?」

「流石、察しがいいな! あそこから更に下に行けるようになってんだ! いわゆる隠し部屋だな!」


 隠し部屋。なんとも心を擽られる単語だな。

 ボルスさんは床の扉を引っ張り上げてから、そこから下へと降りられるはしごを下っていった。


 俺もその後に続いてはしごを下りていき、商人ギルドの地下へと進んで行く。

 隠し部屋ってことから、非合法の香りがプンプンとしてきたな。


 地下室へと降り切ると、そこには……数十人の人で賑わっていた。

 カードゲームやサイコロなんかで遊んでおり、大量の金が見えることから――ここは賭場のようだな。


「商人ギルドの地下は賭場になっていたのか。まさか俺にギャンブルをさせるために連れてきたのか?」

「そんな訳ないだろ! 俺達の目的は賭け事じゃねぇよ! 左に進んだところにあるからついてこい!」


 ギャンブルで賑わっている場所を素通りし、俺達は左側に向かって進んで行く。

 熱気が凄い賭場から離れていくと、見えてきたのは大量に積まれた様々な物。


 本当に様々な物が置かれていて、家具やら道具やら武器やら本まであるな。

 賭場と大量の物。繋がりが見えないが一体なんなんだろうか。


「あそこがクリスに紹介したい場所だぜ! 商人ギルドの裏店!」

「裏店?」

「売れ残った物を引き取ったり、安く大量に買い込んでんだよ! そんでそれを博打の景品にしてんのさ! もちろん金も行き来しているが、外で買うよりも破格の値段で買えるからこの商品目当てで博打している奴もいるぐらいだ!」

「そんなのが商人ギルドにあったんだな。今まで聞いたこともなかった」

「この場所は他言禁止になっているからな! やってることは非合法だし、バレないように必死なんだよ!」


 ここがボルスさん達が俺に紹介したがっていた店か。

 正直、想像とは違っていたが……なんとなくレアルザッドの『七福屋』を思い出してワクワクしてきた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  ▼▼▼ 画像をクリックすると、コミックウォーカーに飛びます! ▼▼▼  
表紙絵
  ▲▲▲ 画像をクリックすると、コミックウォーカーに飛びます! ▲▲▲ 
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ