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第313話 治療師ギルド


 翌日。

 普通に歩くことができるくらいまで回復した俺は、ラルフ、ヘスター、スノーに守られながら、エデストルへの帰路へと着いた。


 ヘスターが話していた通り、バルバッド山の瘴気はすっかりと薄くなっていたのだが、魔物自体は普通に生息しているため結構な数の魔物に襲われた。

 今思えば、索敵ぐらいは俺がすれば良かったのだが、麓の魔物は大した強さでもないからスノー任せにしてしまったんだよな。


 そんなこともあって戦闘は結構行ったものの、特に苦戦する相手もおらずあっさりとバルバッド山を下山。

 随分と久しぶりにも思えるエデストルへと帰還したのだった。


「ようやく戻ってこれた。人で騒がしいのが懐かしく感じる」

「クリスにとってはそう感じるだろうな! それで、ここからどうするんだ? 腕の怪我を診てもらいに行くのか?」

「いや、一度『ゴラッシュ』に帰って風呂に入りたい。色々と汚れているし、この状態で治療師ギルドに行っても迷惑をかけるだけだからな」

「そりゃそうか! 負い目もあって言いづらかったけど、今のクリス相当臭いからな!」

「負い目を感じてるなら、今も口に出すな」


 笑顔でそう言ってきたラルフに、思わずイラッとしてしまう。

 バルバッド山を登り、バハムートの洞窟の探索。


 そこからバハムートと死闘を繰り広げ、命からがらバハムートの洞窟から脱出。

 脱出した後も帰還することなく中継地点で三日間過ごした訳だし、臭いということは俺自身が一番分かっているが……。

 面と向かって、それも笑顔で言われると少しイラッとくるんだよな。


「わりぃ、わりぃ! まぁクリスだけじゃなく、ヘスターも臭い訳だし気にしなくていいと思うぞ!」

「…………本当にラルフはデリカシーってものがないですね。クリスさん、一回この馬鹿をボコボコのギタギタにしませんか?」

「いいね。特訓と生じて二人でぼっこぼこにしてやろうか」

「おいっ、ちょっと待てって! 軽い冗談だろ!」


 俺達から逃げるように、物凄い急ぎ足で『ゴラッシュ』へと駆けて行ったラルフ。

 そんな後ろ姿を見てばかばかしくなり、ヘスターと軽く笑い合う。

 なんてことのないいつものやり取りではあるんだが、バハムートの洞窟で死を覚悟した俺にとっては……いつも以上に楽しいと思えるやり取りだった。



 『ゴラッシュ』へと戻り、シャワーで汚れを洗い流してスッキリした俺は、部屋でゆっくりしたい気持ちを抑えてすぐに部屋を出た。

 バハムートとの戦闘で負った傷のほとんどは、回復ポーションと【自己再生】のスキルのお陰で治癒したのだが、左腕だけは未だに動かせないまま。


 【狂戦士化】で意識を失っている間に無理やり使ったことも関係しているのか、俺が思っている以上に状態が悪いようなのだ。

 本当に心の底から【狂戦士化】を使ったことを後悔しつつも……今は後悔しているよりも治癒をすることが先決。


 ラルフの動かなかった足が闇医者の手で治ったぐらいだし、治療師ギルドにいけば治療してもらえるはず。

 傷の具合を見ても、ラルフの古傷よりかは格段にマシなはずだしな。


 そんなことを考えながら、俺はエデストルのギルド通りにある治療師ギルドへと足を運んだ。

 ちなみにラルフとヘスターもついてくると言ってきたのだが、二人には今日の夜に行う宴会のための買い出しに行ってもらい、治療師ギルドへは一人でやってきている。


 早速中に入ってみたのだが、中は予想よりもかなりの人で溢れており、特に爺さん婆さんが多い印象。

 受付をするのにも列に並び、やっとのことで受付を行ってもらえることになった。


「こんにちは。診察券はございますでしょうか?」

「いや、ここには初めて来た」

「初めてのご来院ですね。それではこちらの用紙にご記入をお願いしてもよろしいですか? 記入が終わりましたら持ってきてください」

「分かった」


 俺は受付嬢から用紙とペンを受け取り、一度受付から離れて空いている席へと着く。

 渡された用紙は簡単な受診理由を記載するもので、俺は左腕についてを詳細に用紙に記入した。


 記入し終えた用紙を持って再び受付へと戻り、手渡し用紙の代わりに番号札を受け取る。

 かなりの人がいたことから分かってはいたが、約一時間ほど待合室で待った後にようやく俺の番号札が呼ばれた。


 案内されるがまま診察室へと入ると、中には白衣を着た如何にもって感じの治療師が座っていた。

 ラルフの付き添いで一度来たことがあるが、今回は自分のことだからか変に緊張してしまうな。


「こんにちは。今回の受診理由は、怪我により左腕が動かなくなったから――ということで大丈夫ですか?」

「ああ。多分折れていて、そのせいで動かないんだと思う」

「分かりました。少し診させて頂きます」


 治療師は椅子から立ち上がると、俺の左腕を軽く動かしながら診察を始めた。

 魔法のようなものも使いながら、腕を数分間触診したところで再び椅子へと座り直した。


「左腕を診させて頂きましたが、かなり酷い怪我のようですね。それに変な折れ方をしているのに、そのまま回復の仕方をしていることもあって……思うように腕が動かなくなっているようです」

「それで、ちゃんと動かせるようにはなるのか?」

「ええ、もちろんです。このまま完全に治ってしまっていたら怪しかったのですが、この段階なら治療できますので安心して大丈夫ですよ」

「そうか。それなら治療の方を頼みたい」

「分かりました。治療方法が二種類ございまして……固定具を使って正しい位置に固定しつつ薬等でゆっくりと回復を促すパターンと、複数人の回復魔法によって一気に回復させてしまうパターンがあります。前者は時間がかかりますが安価で治療が行えまして、後者はすぐに治りますが高額の治療費がかかってしまいます。どちらが良いとかございますでしょうか?」


 治癒が遅くなるが安価か、一瞬で治る代わりに高額な治療費がかかる。

 気持ち的には一瞬で治してほしいが金銭的な余裕はないため、前者の治療方法でお願いするか。

 【自己再生】もあるし、固定具で固定した状態で回復を図れば動かせるようになるんだもんな。


「前者でお願いしたい」

「分かりました。それではすぐに治療に当たらせて頂きますので、奥の部屋まで来てください」


 俺は治療師に指示された通り、奥の部屋へと向かい――かなり強引に腕を矯正させられ、強烈な痛みが生じる状態で固定具によって無理やり固定されるという地獄のような治療を施されたのだった。


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