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第302話 作戦会議


 漆黒のスライムを倒してから即座に後ろを確認してみると、俺がスルーした羽の生えた狼と金猿はラルフ、ヘスター、スノーの手によって全滅させられていた。

 最小限の攻撃で倒したし、すぐに二人とスノーをカバーする気満々だったのだが、毒によって弱り切っている魔物達じゃ相手にもならなかったようだな。


「手伝わせて悪かったな。お陰で時間を大幅に短縮できた」

「向かってきていた魔物も弱り切っていましたからね。【ファイアボール】を当てるだけで倒れるぐらいでしたから」

「そうそう! 瀕死の魔物を仕留めたってだけで、ほとんど何もしてねぇよ! つうか、それよりも……早くバハムートの洞窟の探索に移ろうぜ?」


 謝罪と礼を伝えたのだがまともに受け取ってくれるどころか、ラルフに至ってはバハムートの洞窟の中が気になってしかたがない様子。

 確かにぐだぐだやっていても仕方がないし、魔物の群れを倒したばかりだが洞窟の中の探索に移行するとしようか。


「ラルフの言う通りだな。さっさと洞窟の探索に移るか」

「クリスさん、陣形はどうしますか? 洞窟内の瘴気はあからさまに濃いですし、入口でこれでしたので中はもっと魔物で溢れ返ってますよね?」

「その可能性が高いだろうな。ラルフを先頭に進み、俺とスノーが索敵の陣形で行こうと思う。ソロでのダンジョンを経験しているし、一人でも魔物を抑え込めるだろ?」

「敵の強さは正直ダンジョンの比じゃねぇんだけど、まぁ任せてくれて構わないぞ! その代わり索敵は正確に頼むぜ?」

「絶対に不意だけは突かれないようにするから安心してくれ」


 陣形も決めたところで、ラルフを先頭に俺達はバハムートの洞窟の中へと入っていった。

 ロザの大森林東エリアの洞窟とは違い、入口も中も非常に広い作りになっている。

 更にスキルの実が生えていた奥地のように、洞窟内は光る水晶のようなもので照らされており、洞窟とは思えないくらい明るいのも大きな特徴の一つ。


 中は一切入り組んでおらず、明るい上に一本道のため迷う心配はないのだが……その分大量にいる魔物を避けることもできず、洞窟に入ってから常に連戦状態となっている。

 音が反響するのも厄介で、戦闘音を聞きつけた魔物が奥からどんどんとやってくるせいで、まともに先へ進むことができていない。


「意気揚々と洞窟に入ったはいいものの……まだ入り口が見えるぐらいしか進めてないぞ」

「もう一時間くらいは経ったよな? 戦闘しかしてないし、これじゃ探索どころじゃねぇぞ!」

「……これ、探索可能な場所なんでしょうか。倒しても倒しても奥から魔物が出てきますよ!」

「一度諦めるしかなさそうだな。今向こうからきた魔物を倒し次第、洞窟から一度避難するとしよう」


 バハムートの洞窟の探索を始めてから約一時間。

 攻略不可と見切りをつけた俺は、不本意ながら一時退散することを決断した。


 進んだ距離は百メートルにも満たないし、何の成果もあげられていない状況。

 モヤモヤしか残らない決断だが、入口付近からも魔物が湧いた瞬間にピンチになるため致し方ない判断だと思う。


 ひとまず襲ってきた魔物の処理を行ってから、洞窟の外へと逃げ帰ってきた俺達。

 他の魔物に襲われないよう洞窟から少し離れた岩陰に隠れながら、今一度作戦会議を行うことに決めた。


「想像していた洞窟探索とは全く違ったな。あんな洞窟じゃ、正直探索どころじゃない」

「魔物に負けないくらいの人を集めて、数の力でゴリ押すしかないと思うぜ? 洞窟内でしかも魔物が湧きやすい状況ってのがよく考えれば無理な話だって!」

「それでも狭ければなんとかできる気がするんですけどね。広いというのが逆に厄介になってしまっている気がします」

「ヘスターと同意見だな。狭くて入り組んでいれば、上手く立ち回って少数相手に戦うことだってできる。広くて一本道なのが攻略できるビジョンが見えない」

「クリス、ここからどうするんだ? バハムートの洞窟の探索は失敗に終わったけど、今回は収穫は大きいしこのまま帰還するのか?」


 ラルフのそんな質問に俺はしばらく考え込んでしまう。

 できる準備は万全に行ってきたし、一度戻ったからといって対策が取れるかといえばそうではない。


 魔物がはちゃめちゃに湧く広い一本道の洞窟では、ラルフの言う通り人数を集めて、数の暴力で対抗するくらいしかなさそうだからな。

 となってくると帰還する理由は皆無等しい訳で、帰還=バハムートの洞窟探索の一時諦めに直結する。


「…………帰ったところで事態が好転するとは考えづらい。それでずっと考えていたんだが、俺が一人でバハムートの洞窟の攻略を行いたいと思ってる」

「はぁ!? また一人で攻略するって言うのか? あんな洞窟を一人でだなんて絶対に無理だろ!」

「……いえ、そうとも言い切れません。クリスさんには【黒霧】がありますし、その他隠密スキルも複数持ってます。私達がいるからこそ、隠密行動が取れなかったという明確な弱点がありましたから」

「でもよ、仮に魔物に見つかったらどうするんだ? 大勢の魔物相手に一人で戦うことになるんだぞ!」

「その時も対処できると思ってる。洞窟内だからこそ、さっきのような【広範化】を使った毒攻撃も使いやすいからな」


 猛反発してくるラルフに対し、俺は的確にメリットを伝えていく。

 ヘスターは既に俺一人の方が攻略しやすいというのが分かっているのか、表情は曇らせつつも反論をしてこない。

 

「でも、リスクはめちゃくちゃ高いだろ? 一人で行かせるなんて俺にはできないぞ!」

「どちらにせよ、洞窟内の一定の場所からは猛毒で充満しているみたいだから、途中からは俺一人で行くことは決まってたんだよ。それが早くなったか遅くなったかの違いだ。それに……【剣神】に対抗するには、“ヴァンデッタテイン”が絶対に必要。このことはラルフにも分かるだろ」

「そりゃ……分かるけどよ」

「ラルフ。クリスさんを信じて送りだしましょう。――絶対に大丈夫ですよ。だって、クリスさんですから」


 感情的に渋るラルフに、ヘスターは笑顔を見せてそう言った。

 それでも中々首を縦に振らなかったのだが……しばらく考え込んだ後、ようやく決心がついたのか静かにゆっくりと首を縦に振った。


「悪いな。二人には常に心配かけている」

「本当だよ! クリス、死んだら一生恨むからな!!」

「安心しろ。絶対にヴァンデッタテインと共に戻ってくる」

「はい。お待ちしてます!」

「アウッ!」


 二人とスノーを岩陰に置き、今度は俺一人で先ほど逃げ帰ったバハムートの洞窟へと向かう。

 一生恨まれるのは怖いし、これは絶対に死ぬことはできないな。

 頬を思い切り叩いて気合いを入れつつ、俺は単独でのバハムートの洞窟攻略を開始した。



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