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第300話 単独行動


 瘴気時間の魔物との戦闘はヘスターの宣言通り、俺が特別な何かをすることなく終わった。

 あっさりと――までは言えないが、精査した情報を元にヘスターが的確に魔法を放っていき、ラルフとスノーがヘスターの仕留め損ねた魔物を倒すという形で倒し切ることに成功。


 唯一、トロールの上位種だけは手こずる様子を見せたため俺が加勢し、前回と同じように粘糸でぐるぐる巻きにしてから、【硬質化】を使って捕縛することによって倒した。

 俺の仕事は本当にそれだけで、後はほとんど何もせずに体力を温存することができたため、ここからは予定通り単独での洞窟の魔物撃破を行うだけ。


「お疲れさま。本当に俺が何かすることもなく、魔物たちを片付けてくれたな」

「ぜぇー、はぁー。……クリスの手は煩わせないって約束したからな! 本気で疲れたけどよ」

「トロールだけ手伝わせてしまったのが心残りですが、約束は果たせたと思います」

「ああ。お陰様で洞窟の魔物に全力を尽くせる。洞窟付近の魔物の気配も消えていないことだし、ここからは俺の仕事だな」


 相当な数相手の魔物に対して単独で挑むことになりつつも、決して無謀な戦いを挑む訳ではないというこの状況は、初めてペイシャの森に辿り着いた時には想像もできなかった光景。


 死ぬ可能性がある恐怖もあるが、それ以上にワクワクした気持ちで二人の体力が回復するのを待ち――俺はいよいよバハムートの洞窟を目指して歩を進める。

 ラルフ、ヘスター、スノーには離れて待機してもらい、本当に危険になった場合のみ助太刀をお願いした。


 まぁここまでお膳立てしてもらって、そんな恥ずかしい真似はできないため完璧に決める。

 瘴気時間をやり過ごした場所から約十分ほど進んだところで……なだらかに下へと続く大きな洞窟が見えた。

 あれがバハムートの洞窟の入口か。そして、その入口付近に跋扈する魔物も見える。


 一人でロザの大森林に籠もってはいたが、魔物の群れに一人で向かって行くのは初めてということもあり、心臓がやけに高鳴り始めた。

 それに加えて、視界に捉えた魔物は見たことのない魔物ばかり。

 

 金色の猿のような魔物が多数に、羽の生えた狼のような魔物。

 それから頭に一本角を生やした小人のような魔物に、漆黒のスライムのような魔物と本当に多種多様。


 特に漆黒のスライムは毒が効かなそうだし、これは一筋縄ではいかない可能性があるな。

 頭の中でシミュレートしていたことを体に刻み込みつつ、俺は能力上昇と隠密スキルを発動させ――魔物の溜まっている場所へと一気に駆けだした。


 数にして約三十体前後。

 物凄い速度で近づく俺に気づいた魔物を確認してから、間髪入れずに索敵スキルと【黒霧】のスキルを発動させた。


 洞窟内は一気に何も見えない漆黒の霧に包まれ、いきなりの変化に焦った魔物たちの叫び声のようなものが鳴り響く。

 無数上がったの叫び声のせいで音から情報を得ることは難しくなってしまったが、俺には【深紅の瞳】があるため魔物のおおよその位置は把握できている。


 この暗闇の中で闇雲に攻撃が行われたとしても躱すことのできる位置取りをしつつ、俺は魔物達の群れの中に飛び込み――まずは【広範化】を発動。

 そこから間髪入れず、ヴェノムパイソンの毒ポーションを飲み干した。


 シャンテルが作ってくれた強力な毒ポーションで、俺には身体能力上昇の効果が付与されるのに対し、毒の耐性がないものに対しては痺れ作用や呼吸不全、幻覚や痙攣を引き起こさせる正にこの場で使うのにうってつけのポーション。

 カルロ戦以降は使いどころを渋り、もったいない精神で使わずにいたが……まさかここで予想以上に役立つことになるとは考えてもいなかったな。


 【野生の勘】や【音波探知】も駆使しつつ、様々な魔物の【広範化】適用範囲に入っては毒ポーションや有毒植物を摂取していく。

 感覚としては一切戦っている感じがないのだが、毒の効果は絶大のようで魔物達の叫び声はうめき声のようなものに変化し始めている。


 予想通り、漆黒のスライムには一切効いていないようだが他の魔物には効いているようだし、【黒霧】が晴らされる前にこのまま退却するとしようか。

 自身でも驚くほどあっさりと仕事をやり遂げた俺は、魔物達の下を離れてラルフ達の下へと戻って毒が回るのを待つことに決めた。


 戻る際も絶対に気を抜くことはせず、【変色】で皮膚の色を黒に染めつつ隠密スキルを使い、絶対に気づかれないように注意を払いながら洞窟の入口から離れた。

 攻撃の絶対届かない位置まで退却し、待機しているラルフ、ヘスター、スノーが視界に入ったことで、俺はようやく体の力を抜け安堵の息が漏れる。


 いつも以上に体の力が入っていた俺だが、【黒霧】のせいで戦況がどうなっているのか見えなかったからか、二人とスノーは俺以上に体を強張らせているのが分かった。

 そんな怖い顔をしているみんなの下へ、俺は軽い笑みを浮かべつつ合流したのだった。



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