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第295話 難航


 バルバッド山の探索を始めてから約一週間が経過。

 休養日を挟んでいたということもあるが、一週間の探索を行ってもバハムートの洞窟を見つけられておらず探索が難航している。


 とにかく八時間毎に瘴気が濃くなるというのが非常に厄介極まりなく、探索を始めたばかりの頃はインターバルが長いし特に気にすることもないと思っていたのだが……。

 帰路も考えると実質四時間ほどしか探索ができず、そのせいもあって思うように探索が進んでいないというのが現状。

 

 頂上を目指すだけならば四時間でもどうにでもなったが、中腹付近をあてもなく探索するとなるといくら時間があっても足らない。

 その事実をこの一週間の探索で嫌というほど思い知らされた。


 となってくると、残された選択肢は一つな訳で……。

 もう慣れ親しんだバルバッド山中腹の中継地点に身を隠しつつ、俺はラルフとヘスターに一つの提案をすることに決めた。


「ラルフ、ヘスター。俺から一つ提案があるんだがいいか?」

「別に構わないけど、改まってどうしたんだよ?」

「瘴気の濃い時間帯も身を隠さず動こうと考えている。正直、時間に追われているせいで探索が行き詰まっているからな」


 俺が二人にそう告げると、険しい表情を見せて黙りこくってしまった。

 中腹以降はただでさえ魔物との遭遇率がおかしく、瘴気が濃い時間となるとどんなものか想像もつかない。

 二人が躊躇う気持ちも分かるが……ここは探索に踏み出さなければジリ貧になるだけだ。

 

「瘴気が濃くなる時間帯に対応できるか正直不安だけど……今の探索時間じゃ見つけられないもんな」

「それに関しては私も薄々感じてました。厳しいとは思いますが、試さなくては一生バハムートの洞窟を見つけ出すことは不可能ですもんね」

「そういうことだ。ひとまずはこの中継地点付近で瘴気が濃くなるのを待って、戦闘を行ってみようと思っている」

「それで大丈夫だと判断すれば探索に踏み切るって感じか!」

「ああ。無理だと判断したらバルバッド山の探索は一時中止。自力を鍛える時間を取るつもりでいる」

「私は賛成ですよ。瘴気が常に立ち込めているこの状況には慣れてきましたし、クリスさんの【粘糸操作】は非常に強力ですから、瘴気時間にも対応できる確率は十分にあると思います」

「俺も賛成だ! そもそも瘴気の濃い時間に対応できなきゃ、バハムートの洞窟の探索なんて不可能だろうしな。よくよく考えりゃ、今までなんで身を隠してたのか分からねぇぐらいだ!」


 良かった。

 とりあえずは二人の了承も得られたし、これで瘴気の濃くなる時間を気にせず探索に移れる。

 まずはこの中継地点で瘴気が濃くなるのを待ち、いつでも逃げることのできるこの付近で腕試しを行う。


 ちなみにだが瘴気が濃くなる時間帯の情報は一切出回っておらず、どんな魔物やどれぐらいの頻度で魔物が生成されるのかも不明。

 逆算して考えると、これまで瘴気が濃くなる時間帯を探索して生存した者がいないという証明でもあり、とにかく危険だということだけは分かっている。


「クリスさん。そろそろ瘴気が濃くなる時間に入ると思います」

「了解。陣形を組みつつ外に出てみるとしようか」


 短くそう返事をし、ラルフを先頭に中継地点から外へと出ることに決めた。

 この一週間で何度も通った道のはずだが、瘴気が濃くなっていて風景の色合いが変化しているからか……酷く不気味に思える。


 まだ魔物は見当たらず、通常の瘴気から濃い瘴気へと変化したことによる微妙な間がある状態。

 少し開けた場所で立ち止まり魔物が出てくるのを待っていると、一分もしない内に次々と魔物が湧き始めた。


 濃い瘴気での初めての魔物は、小さな人型の魔物——ゴブリンだ。

 ただゴブリンと言っても普通のゴブリンではなく、漆黒の体に異様に引き締まった体。

 

 手には体と同じ長さほどの片手剣が握られており、背中には鉄の盾を背負っている。

 そして、何よりの相違点は黒い帽子のようなものを被っていること。


 ボルスさんから一度だけ聞いたことがあるが、あのゴブリンはゴブリンの最上位種と言われているブラックキャップだろう。

 ただのゴブリンだと甘く見てかかり、多くの実力派冒険者を殺してきた最強のゴブリン。

 そんなブラックキャップが目の前に十匹ほど一気に生成されている。


「あれは……ゴブリンか? ゴブリンなら、中腹付近でよく見かけるブルーオーガの方が強いんじゃねぇか?」

「いや、ただのゴブリンじゃない。ブラックキャップって言う最強種のゴブリン。体が小さいから攻撃が当てづらい上に動きも素早いから、決して油断してかかるなよ」

「初めて聞く名前ですね。――ここからは私も積極的に戦闘に参加します。素早いということでしたら動きを鈍らせることに専念しますので、足が止まったところをクリスさんとスノーで倒してください」

「分かった。ヘスターよろしく頼む」

「なら、俺は敵の意識を集めにかかるぜ! こっからは本気の戦いでいかせてもらう!」


 ブラックキャップの姿を見て、気合いを入れたラルフとヘスター。

 これまでも役割を決めて動いてはいたが、ここからは全員本気で魔物を倒すことだけに注力して動く。

 俺も体力を温存することは一切考えず、全力で魔物と対峙させてもらうとしようか。


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