第284話 武器探し
「ああ! 青色のオーガと戦った場所か! でも、今更なんでバルバット山に行くんだ?」
「バルバット山を登った先に、『バハムートの洞窟』って場所があるって聞いたの覚えてないか? そこには『ヴァンデッタテイン』なる初代勇者が残した伝説の剣が眠っているらしいから、その伝説の剣を狙いたい」
「思い出しました! 以前、クリスさんが依頼掲示板の前で話していましたね。……確かに『七福屋』の店主さんから杖を譲り受けた私以外は、装備が心許ないとは私も感じていました。クリスさんかルインのどちら一方でも、その伝説の剣を扱えれば大幅な戦力強化になると思います」
「初代勇者が残した伝説の剣……『ヴァンデッタテイン』! いいじゃねぇか! エデストルに来たばかりの俺らじゃ攻略は無理だったけど、今の俺らなら『バハムートの洞窟』だろうが攻略できるだろ!」
思っていた以上に賛同してくれたみたいで良かった。
ダンジョン攻略を即座に拒否したし、ラルフは渋ったりするんじゃないかと思ったが……まぁそんな性格じゃないか。
「二人とも賛成してくれたみたいで良かった。ただ、依頼掲示板に張られて放置されていた通り、『バハムートの洞窟』の攻略難度はヒヒイロカネランクで間違いないはず。しっかりと準備した上で攻略に臨もう」
「ですね! ダンジョン五十階層の攻略よりも、攻略することに明確な利がある上に今の私達の実力を図れる場所。流石はクリスさん。いい選択だと思います!」
「俺も燃えてきたぜ! そうなってくると情報とかも集めないといけねぇな! 流石にロザの大森林よりかは情報も集めやすいと思うけどよ!」
「依頼をこなしつつ、手分けして『バルバッド山』と『バハムートの洞窟』の情報も集めていくか」
合意を得たことで、今後のやるべきことが定まった。
恐らくだが、これがエデストルでの最後の大仕事になるだろう。
『バハムートの洞窟』の攻略が終われば……いよいよ王都へと戻り、クラウスとの最終決戦へと望む。
「クリス、どうした? 急にすげぇ怖い顔になってんぞ!」
「クラウスとの決戦が近づいてきたなって思っただけだ。『バハムートの洞窟』を攻略したらやるべきことはなくなるからな」
「あまり考えないようにしていましたが、目的はクリスさんの弟への復讐ですもんね。……少しだけ複雑な心境です」
「俺もだなぁ。少し前とは比べられないほど、全てが順調で楽しい毎日だからよ! ずっとこのままの日々が続いていけばいいと思っちまってる」
「悪いな。俺の我儘に付き合わせてしまう」
「クリスさんは謝らないでください。そのことを承知でパーティを組んだ訳ですし、そのことを目標に掲げてたからこそここまで強くなれたんです」
「そうそう! 誰一人欠けずにクラウスをぶっ倒せば、そっからはこの生活がずっと続くんだしな! ……絶対にクラウスをぶっ倒して見返してやろうぜ!」
「ああ。最後までよろしく頼む」
俺の頼みに二人は力強く頷いてくれた。
復讐の話をした後とは思えないほど良い雰囲気になり、このまま明日に向けて早めの就寝といきたいところだが……。
肝心のことをまだ話し合っていないため、俺は話し合いを再開させる。
「――と、話がまとまった感じになったところで悪いが、肝心なことをまだ話していないから続けさせてもらうぞ」
「肝心なこと? 今後の予定以上に大事な話なんてあったか?」
「俺のスキルについてだよ。スキルの実で得たスキルの説明するための話し合いでもあったからな」
「そういえば、スキルについては何も聞いていませんでしたね。やっぱり凄いスキルだったんでしょうか?」
「ああ。スキルの実で得たスキルは全て特殊スキルだった」
「全部特殊スキル!? やっぱりスキルの実ってとんでもない植物だったんだな!」
「その反動で【毒無効】持ちの俺ですら死にかけたけどな。とりあえず軽く説明しながら見せられるスキルは見せていく」
部屋の中では見せられるスキルは限られているし、【自滅撃】は見せられる場面があるかどうか怪しいところだが、二人には事細かに説明しておきたい。
何か新たな気づきもあるだろうし、【広範化】に至っては何一つ分かっていないからな。
「一つ目は【硬質化】ってスキルだ。俺が触れたものを硬くさせることができるスキル」
「……え? なんだそれ? 効果がそれだけなのに使えるスキルなのか?」
「相当使えると思うぞ。ラルフ、ちょっと手を出してみろ」
首を傾げながら腕を出したラルフの手に触れ、【硬質化】のスキルを発動させる。
一瞬にしてラルフの腕はカチカチに硬くなり、最初は驚いた様子を見せたラルフも面白そうに自分の硬くなった腕を触り始めた。
「すげー、これすげーな! こんなに硬くなるのか!」
「防御面でも使えるし、【硬質化】を使ってから殴れば威力も上がる。剣にも盾にも影響を与えられるからな」
「このスキルがあれば、俺も強くなれるってことか! 確かにスキルについて色々と知っておかなきゃならねぇな!」
「いや、そんな万能ではないぞ。さっきも言ったが俺が触れてないと効果は発動しない」
「使いどころは限られるけれど、強力なスキルってことですね」
「ああ。その認識で問題ない」
一つ目のスキルから大盛り上がりだな。
他者に干渉するスキルはほとんど持ち合わせていなかったし、ラルフにとっても新鮮だったようだ。
ただ、【硬質化】は基本的にはラルフやヘスターに使う予定はないし、覚えてもらいたいのは【自滅撃】を除く他の二つのスキル。
二人に見てもらうと意味では、ここからが本番といっても過言ではない。