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第270話 帰還


「やっと森を抜け出ることができたわ! もう二度と森には入りたくない!」

「私も同感ですね。探索自体は意外と楽しめましたが、正直ダンジョン以上に過酷でした」


 スキルの実を採取後、東エリア奥地の洞窟から帰還を目指し、なんとか二日かけてロザの大森林を抜け出ることができた。

 休む暇もなく常に移動しっぱなしだったし、文句を垂れたミエルとフェシリアの二人に限らず俺達もヘトヘトである。


 幸いなことに奥地の洞窟では、タコの魔物とヘラクベルク以外は強敵と呼べる魔物と遭遇しなかった。

 すぐに来た道を戻ったからというのもあるだろうが、もし二体と同レベルの魔物が出現していたら……敗北していた可能性も十分にあっただろう。


「体の疲労感が凄まじいな! 魔法を使って足場を作ってた三人はもっと疲れてるだろ?」

「魔法を使う分にはそこまで疲れを感じないので、水没林でも休みなく戦ってたラルフとクリスさんの方が疲れていると思いますよ」

「そうなのか? 魔法ってめちゃくちゃ疲れそうな感じするけどな! 水を凍り付かせてる訳だし!」

「魔物と戦うときは色々と考えるから大変だけど、水を凍らせるだけなら何も疲れないわね。もちろん、魔力切れを起こしたら倒れちゃうけど」

「今回はスノーも含めてローテーションできましたので、魔力切れの心配がありませんでしたし比較的楽だったと思います」


 ローテーションを組めたってのも大きいだろうが、一番大きかったのは三人共に魔法のエキスパートだったってことだろう。

 ミエルも想像以上に魔法が使えたし、色々思うところがあったがフェシリアもヒヒイロカネランクの実力を見せてくれた。

 

 そして、【魔力回復】のスキルを持っているヘスターが誰よりも率先してくれたし、魔法ではないがスノーも足場作りに前衛でも戦ってくれたからな。

 一人でも欠けていたら、この探索は失敗に終わっていた可能性が非常に高い。


「何はともあれ本当に助かった。探索に協力してくれてありがとう」

「私はヴィンセントと約束したから参加しただけですので、お礼は別にいりません。ヴィンセントからキッチリと報酬を頂きますからね」

「私はお礼よりも物で欲しいわ。協力については私から申し出たことだけど、流石にこの探索をお礼だけで済ますってことはないわよね?」

「安心しろ。ミエルにもキッチリと報酬は支払う」

「なら、いいわ。報酬が貰えるならお互いにウィンだったと思うしね。馬鹿王女と馬鹿騎士とのダンジョン攻略よりも、気分的には全然楽だったしさ」


 俺は感謝の言葉と共に深々と頭を下げたのだが、反応がかなりドライな二人。

 誠意は言葉ではなく報酬でって感じなのだろう。


「よしっ! 無事に森を抜けられたことだし、後はエデストルに帰るだけだぜ! もう少しだけ気合い入れて進もう!」

「ですね。最後まで気を抜かずに行きましょう」


 ロザの大森林の中ほどの脅威があるとは思えないが、ラルフとヘスターの言う通り最後まで気を抜かずに帰還を目指すとするか。



 ロザの大森林を抜けてから、特に事件が起こることもなくエデストルまで帰還することができた。

 ミエルとフェシリアは、ダンジョン街へと戻るためエデストル前で解散。

 二人と別れた後は珍しく口数も少ないまま、俺達は『ゴラッシュ』へと帰ってきた。

 

「やーっと帰ってこれたあああ! ミエルとフェシリアさんの前だし気張ってたけど、今回は本気で疲れたぜ!」

「慣れない移動に強敵との戦闘。魔物の量も多くて、常に気が抜けない場所でしたからね。私ももう本当に疲れました」


 部屋に入るなり嬉しそうな声を上げたラルフと、声を上げる余裕すらないヘスター。

 スノーはというと吠えもせず、トコトコと自分専用のタオルの山に体を埋めて眠ってしまった。

 やはり全員限界ギリギリだったんだな。


「スノーいいなぁ。俺ももうベッドにダイブして眠りてぇよ!」

「順番にシャワーを浴びてから寝ろよ。滅茶苦茶汚れてるからな」

「だよなぁ。んじゃ、誰が初めに風呂に入るかジャンケンしようぜ!」

「いや、俺は最後でいい。やることもあるしな」

「いいのか? じゃあ、俺とヘスターでジャンケンしようぜ!」

「ラルフが先でいいよ。私も荷物をまとめないといけないから」

「よっしゃ! じゃあすぐに入って上がるから待ってくれ!」


 着替えを持って元気に風呂へと向かうところを見ると、ラルフはまだまだ余裕があるんじゃないかと思ってしまうな。

 そんなラルフを横目に、俺は今回採取したスキルの実を取り出し、調べてみることにする。

 

 大きさはヘスターの顔ぐらいの大きさ。

 腰のホルダーには入らず、四つ引っ掛けて持ち帰ってきたのだが、四つとも傷一つない状態で持ち帰れている。


「本当に凄い見た目ですね。臭いが大分落ちてるのが救いですよ」

「あの強烈な臭いのままなら、部屋の中には入れられなかっただろうな」

「……この実が本当にスキルの実だといいですね。私達の頑張りも報われますので」

「だな。俺はスキルの実だと思っているが、実際のところは調べてみないと分からない」

「クリスさんは、明日からスキルの実について調べる予定なんですか?」

「いや、シャワーを浴びたらすぐにでも調べに行く予定だ」

「えっ!? これから調べに行くんですか? 今日は体を休ませた方がいいですよ! 本当に倒れてしまいますから」


 ヘスターは大きな声を出し驚いた表情を見せたが、目の前にスキルの実がある以上眠れる気がしない。

 ヴィンセントとスキルの実を見せるという約束があるため、一個は確実に残しておかないといけないが、三個は自由に使っても問題ないということだからな。


 まずは今の能力判別を行ってから、スキルの実の効能についてを調べるつもり。

 ラルフやヘスターに負けず劣らず俺も疲弊し切っているが、スキルの実を調べるということであれば体はまだまだ動く。


「大丈夫だ。戦闘を行う訳じゃないし、教会へ行って能力判別してもらうだけだからな」

「……そういうことでしたら私も無理に引き留めはしませんが、倒れないようにくれぐれも気をつけてくださいね」

「心配してくれてありがとう」


 ヘスターとそんな会話をしていると、さっき風呂へと入ったラルフがもう上がった様子。

 本当に素早く洗って、即座に上がったみたいだな。

 あとはヘスターが風呂から出てくるのを待ち、ロザの大森林の汚れを落としてから――早速スキルの実と思しき実の効能を調べに行こうか。



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