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第269話 スキルの実


 洞窟外の濁りきっていた水没林の水とは違い、綺麗なコバルトブルーの水が一面に広がっている。

 光り輝く水晶も合わさり、まさに絶景と言える湖だ。

 足場を作らずとも、水も透き通っているしこのまま泳いで渡れそうな感じもするが、念を入れるに越したことはない。

 

 ヘスターとミエルが前へと立ち、湖に手をかざしながら魔法を唱えると、湖の一部分が氷付いていく。

 先導しながら足場を作っていってくれる二人の後に続き、俺達もその後を追ってスキルの実が生えている浮島を目指して進んでいった。


 水没林のことが頭にあるため水中からの攻撃をどうしても気にしてしまうが、索敵スキルに反応がなかった通り魔物はいないようで、一切襲われることがないまま俺達は小さな浮島へと辿り着いた。

 ヘラクベルクとの戦闘でみんな警戒心が強くなっていたし、少し拍子抜け感は否めないが安全に越したことはない。


 浮島に足を踏み入れてからは俺が先頭となり、念願のスキルの実の目の前へとやってきた。

 何重にも絡まりあって、天井近くまで伸びている極太の茎。

 その茎の先は枝分かれしており、その枝分かれした先にカラフルで奇抜な形状をした実が成っている。


「少し離れた位置からでも確認できたし、高い位置に生えているとは思ってたけどよ……茎をよじ登らないと採取できなくねぇか?」

「茎ごとぶった斬ったら湖に落ちてしまうだろうしな。魔法を実付近に当てて落とすことも考えたが、こっちもキャッチに失敗したり湖に落ちたら台無しになる。よじ登るの確実だな」

「クリスさんが登るのですか? ヘラクベルクとの戦闘で怪我を負っていましたし、落ちたら危険ですのでラルフに行かせた方がいいと思うのですが……どうでしょうか?」

「おい、ヘスター! 俺なら落ちてもいいってことかよ!」

「クリスさんが落ちるよりはいいでしょう。ラルフは耐久力が高いですし、仮に落ちても大丈夫ですよ」

「いや、俺が登る。下から実の位置を教えてくれればいい」


 何やら揉め始めた二人を止め、俺が登ると伝える。

 元々俺が登る予定だったしスキルの実が噂通りの危険な植物だとすれば、ラルフに採取させるのは怖い。

 ……まぁ、まだこの実がスキルの実かどうかは分からないけどな。


 実の正確な位置は下から指示を受けるにしても、一度大まかな実の位置と数だけは把握しておく。

 かなり散らばっている感じで、計四個のスキルの実が成っているのが分かる。

 【肉体向上】【身体能力向上】【能力解放】を発動させてから、俺は太い茎に手を伸ばして登り始めた。


 複数の茎が何重にも絡まり合っているお陰で見た目以上に非常に登りやすく、俺はスラスラと一気に茎をよじ登っていく。

 登る前に発動させたスキルもいらないくらいだが、落ちた時の保険のために解除せずに発動させておくか。


「クリスさん! 枝分かれした右側の先です! 今右手に触れている枝ですよ!」

「細くなっているから気をつけろよ! バランス崩しそうになったら実は落としていいぞ! 俺がキャッチしてやるからよ!」


 下から大声で叫ぶヘスターとラルフの言葉に従い、俺は一気に実の成っている場所へと向かって行く。

 足を置く場所がないため腕だけでぶら下がるように進んで行くが、茎部分は頑丈で俺の体重で折れることもなさそうだし、これは苦労なく採取できるだろうな。


 腕だけとなっても進むスピードを落とさず、あっという間に実の成っている位置まで辿り着いた。

 遠くからでもこの実が異様だということが分かっていたが、近くで見るとよりその異様さが分かる。

 

 カラフルな一つの実というよりも、色々な色の小さな実が集まって一つの実となっている感じだ。

 色だけでなく形状も一つ一つ違うし、なんともいえない気味の悪さを感じる。

 

 ただ、その不気味さも相まって普通の植物とは一線を画している。

 実を見てそんな考察をしつつ果梗部分を切って採取し、俺はホルダーの中へと入れた。


 残る三つの実も下からの指示を仰ぎながら茎部分を上手く移動し、あっという間に生えていた全ての実を採取し終えた。

 ちなみに四つとも全て同じような実であり、この実がスキルの実であるならば同じスキルしか会得できないかもしれないな。

 唯一の懸念点といえばそこだが、特殊スキルが手に入るのであれば一種類だったとしてもスキルで大幅強化に変わりない。


「心配してたけど、危なげなかったな!」

「的確な指示で助かった。お陰で楽に採取できた」

「それで……成っていたのはスキルの実だったのですか?」

「それはまだ分からない。実際に色々と調べてみないといけないが……。俺の勘は十中八九スキルの実だと言っている」

「ちょっと見せてほしいんだけどいいかしら。見るくらいなら体に危害は及ばないわよね?」

「見るくらいなら多分大丈夫だと思うぞ。念のため少し離れた位置から見てみろ」


 俺は植物の真下まで出迎えてくれた四人とスノーに、採取したスキルの実を取り出して見せた。

 臭いも中々キツいし、見た目も到底食べれるものではない。

 そのことを実際に見て察したのか、スキルの実のおぞましい見た目に四人共引いたような顔をしている。


「苦労して採ったのがこの実かよ! ぜーったいに不味いの確定してるだろ!」

「別に美味いから採取しに来た訳じゃないからな。俺は不味くとも一向に構わない」

「これがスキルの実じゃなかったら笑えないわね。……それじゃ目的も果たしたことだし、とっとと帰りましょ。早く帰って体を綺麗に洗って、ふっかふかのお布団で眠りたいわ」


 ミエルもこう言っていることだし、長居はせずにさっさと帰るとするか。

 ここまでが丁度探索の中間地点。

 ここから来た道を帰らなければいけないことを考えると……森での探索をし尽くした俺でも、少しだけ憂鬱な気持ちになるな。



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