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第268話 光り輝く洞窟


 本来ならば体を持ち帰り、オンガニールの宿主として利用したかったが、この巨体で重い死体を運ぶのはほとんど不可能に近い。

 それにオンガニールがこの外皮を突き破れるとは思えないし、死体ごと持ち帰っても無駄に終わるだろうな。

 もう少しゆっくりと調査したかった気持ちを残しつつ、俺はみんなを集めて出発の言葉をかけた。


「そろそろ行くか。体も少しは休まっただろ?」

「俺は大丈夫だぜ! 痙攣もこの通り完璧に治まった!」


 ラルフは軽くジャンプをしながら、もう体力が回復したということを見せてきた。

 一番ダメージを負っていたのは俺だが一番疲弊していたのはラルフだし、そのラルフが回復したとなればもう進んでも大丈夫だろう。


 俺、ラルフ、スノーが前衛。ヘスター、ミエル、フェシリアが後衛の陣形を再び組み直してから、洞窟の奥を目指して歩を進める。

 天井から無数に垂れる何らかの植物の蔦がふとした拍子に体に当たり、非常に進みづらい。


 進むにつれて洞窟の通路を覆うツタの量も増えていくし、面倒くさいから全て焼き払いたいところだが……。

 この先にあるかもしれないスキルの実まで焼いてしまったら洒落にならないため、ツタには十分注意しつつ慎重に進んで行く。


「足元にもツタが増えてきた。足がかかって転ばないように注意しろよ」

「大丈夫です。足元にも注意して進んでいますので」

「クリス! 上から伸びてるツタが首に絡まる感じで生えてるぞ! 下だけでなく上にも注意させた方がいい!」

「確かに、首に絡まった状態で転んだら首吊り状態になるな。上下共に注意を促すか」


 本当にツタの塊の中を掻き分けて進んでいる感じだ。

 根が深いようで簡単には千切れないし、一歩進むのでさえ結構な苦労を強いられている。


 そろそろしんどくなってきた時、ようやく通路の先が開けて広い場所が見えてきた。

 魔物の気配は感じないが、洞窟の中とは思えないほどの強い光が差し込んでいる。


「なんかめっちゃ光ってないか!? 魔物が光らせている訳じゃないよな?」

「魔物の気配はしないな。光ってる原因は分からないが、多分大丈夫だと思う」

「多分ってこえーよ。後ろの三人に魔法を試し打ちしてもらうのはナシか?」

「ナシだな。目当ての実がすぐ近くにあるかもしれない。ここで魔法を放つのなら、もっと前からツタを全て燃やしてもらってた」

「だよなぁ……。てことは、この先が危険だとしても行くしかねぇってことか!」


 光っている原因は分からないが、魔物ではない限り大丈夫なはず。

 意は決したようだが少し渋っているラルフの前へと出て、まずは俺から光り輝く場所へと抜け出た。


 洞窟はここで終わり外へと抜け出る――差し込む光の具合からその可能性が高いと思っていたのだが、通路を抜けた先もまだ洞窟の中だった。

 この凄まじい光量の原因は……水晶か?


「クリス、そっちは大丈夫そうか?」

「大丈夫だから入ってこい。光る水晶がありとあらゆるところにあるだけだ」


 俺の言葉で安全だと分かったようで、スノーとラルフが俺に続いて通路から抜け出て、少し遅れて三人もツタの通路から出てきた。

 丁度そのタイミングで、暗い場所から光量の多い場所へと出たせいで目晦まし状態となっていた目が慣れ始め、広い輝く洞窟の内部が正確に見え始めた。


 足元は完全な黒土で様々な植物が生えており、その奥は水の張った泉のようになっている。

 これが噂に聞く地底湖といったものなのだろう。

 

 そしてその地底湖の中心付近には、輝く水晶で囲まれた浮島のような場所があり――。

 その浮島にはまるで木のような大きさの茎が生えていて、その木のような茎の先からはカラフルで奇抜な形状をした実が成っていた。


「クリスッ! あの実ってよ!」

「ああ。恐らくだが、スキルの実である可能性が高い」

「あれがスキルの実……。本当に実在していたんだ。おとぎ話の類かと思っていたわ」

「でも、洞窟までの道中と同じように水で阻まれていますね。足場を作っていきますか?」

「そうだな。三人共、よろしく頼む」


 ようやく目の前に見えたスキルの実。

 俺がクラウスと戦うためのラストピースともいえる植物。


 自分の心臓が高鳴る音が聞こえ、色々な感情が渦巻くせいで変な汗も噴き出てきたが……。

 一度気持ちを落ち着かせるために大きく深呼吸を行う。


「なんだか出会ってから一番動揺していますね。タコの魔物やヘラクベルグと戦った時よりも、感情が高ぶっているんですか?」

「そうかもしれないな。俺にとっては死と引き換えにでも、スキルの実を欲していたと言っても過言ではない」

「……それは流石に過言だと思いますよ。死んだらスキルの実を使うことすらできませんし」

「いや。スキルの実が手に入らなければ、俺に生きている意味はないんだよ。決して過言ではない」


 フェシリアは理解できないようで首を捻っているが、まぁ経緯を知らなければ何を言っているか分からないだろうな。

 クラウスに殺されかけてペイシャの森に逃げ込んだあの時から、俺の目的はクラウスへの復讐を果たすこと。


 そして【剣神】であるクラウスに追いつくためには、スキルの実は必要不可欠な代物なのだ。

 そのスキルの実が手に入らなければ、俺の生きていく上での目的は達成不可となり――生きている意味がなくなる。

 ……ラルフやヘスターが聞いたら悲しむだろうが、俺はそのためだけに生きてきたからな。

 

「ふぅー……。よし、スキルの実の採取に行こうか」

「了解。帰り道を除く、この探索最後の大仕事ね」

「足場作りは任せてください」


 俺達は長い長いロザの大森林東エリアの探索の末、ようやく見つけたスキルの実の採取へと動いたのだった。



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