表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

273/540

第267話 ヘラクベルグ


 勝利を見届けてから、俺はホルダーから取り出した回復薬を頭からかけて回復を図る。

 【痛覚遮断】は基本的にメリットしかないが、どのくらいの怪我なのかが自分で把握できないのが唯一の欠点だな。


 体に全く力が入らないところをみるに、かなりの怪我な気もするが……。

 ヘラクベルグ対スノー、ラルフの戦闘を見れていたし、大した怪我ではないと信じたい。


「クリスさんっ! 大丈夫ですか?」

「ああ。今回復薬を使ったし、すぐに良くなってくるはずだ」

「私の回復薬も使いますか? その怪我を見るに、中級回復薬では完治しそうにありませんので」


 猛ダッシュで駆けつけてきたヘスターと、少し遅れてやってきたフェシリアとミエル。

 ヘスターのみならず、フェシリアとミエルも心配してくれているようで、如何にも高そうな瓶に入った回復薬を手渡してきた。


「……いいのか? この回復薬分の金は出せないぞ?」

「そこまでケチではありません。クリスがこの後足手まといになるよりも、回復薬を渡して回復してもらった方が楽と判断したまでです」

「そういうことなら、遠慮なく使わせてもらう」


 先ほどかけた回復薬のお陰で、眩暈も視界も若干良くなりつつあったが、俺はフェシリアから貰った回復薬を追加で頭からかけた。

 半分は直接摂取し、効くまでしばらく待とうと思ったのだが……。


「ん? おお! もう効き目が出てきた。眩暈も一瞬で治まったし、視界も良好になったぞ」

「まだ額の右辺りが腫れてる気がするけど、確かに治ってきてるのが目に見えて分かるわ。……これ、凄い高価な回復薬じゃないの?」

「流通数に限りがあるため、【月影の牙】で特別に卸してもらっている回復薬です。一本白金貨一枚の代物ですよ」

「白金貨一枚っ……! 本当にお金渡さなくて大丈夫なんでしょうか?」

「そんなに払いたいのであれば頂きますけど、払ってくれるのでしょうか?」

「ク、クリスさんのためにありがとうございます!」


 支払いを迫られヘスターが焦っているが、確かに一本で白金貨一枚ってとんでもない。

 というか、このロザの大森林の探索を通してこの回復薬一本分の報酬しか支払えないのだが、フェシリアは納得してもらえるのかが怖くなってきたな。


「クリス、大丈夫だったか? 甲虫の魔物はスノーがぶっ倒してくれたぞ!」

「ああ、見てたぞ。ラルフもスノーの攻撃の隙を上手く作ってたな」

「クリスが一人で持ちこたえてくれたお陰で、スノーが自由に戦えたんだよ。なぁ、スノー?」

「アウッ!」


 スノーは褒めてと言わんばかりに尻尾をぶんぶんと振っているが、流石に俺の体を心配してか飛びついてはこない。

 ただ、フェシリアの回復薬のお陰でもう体は動かせそうだ。


「みんな、迷惑かけてすまなかったな。回復薬のお陰でもう普通に体が動かせるようになった。この部屋で少しだけ休息してから――すぐに奥へと進もう」


 門番のようになっていたヘラクベルグが死んだことにより、奥へと続く道が空いた。

 奥の通路は天井まで蔦のようなもので覆われており、一面緑の如何にも怪しい雰囲気を放っている。


「この奥にスキルの実があるんですかね?」

「ここにきて異様に緑が増えているし、スキルの実が生えていそうな雰囲気がしているけど、本当に実在するのかしら?」

「実際に確認してみないと分からないが……ここまで苦労して来たからには、生えていてほしいところだな」


 俺の願望も多少混ざっているだろうが、この通路の奥はヘラクベルグと対峙した時からずっと気になっていた。

 この感覚が正しいのであれば、この通路の奥にスキルの実は存在するはず。


「俺にはあんま関係ねぇけど、なんかワクワクしてきた! 動けるなら速く行こうぜ!」

「ちょっと待て。何があるか分からないんだから、ある程度体調を整えてから進むのが得策だ。……ラルフも疲労で足が若干震えてるぞ」


 焦るラルフを宥めながら俺の気持ちを落ち着かせ、この開けた場所でしばしの休息を取る。

 俺はその間にヘラクベルグの死体へと近づき、倒れて動かなくなったヘラクベルグの調査をすることにした。


 タコの魔物はフェシリアの【ライトニングライジング】によって、灰も残らない形で倒してしまったが、ヘラクベルグに関してはボロボロながらも体がしっかりと残っている。

 首を刎ねられ絶命しているがまだ指がピクピクと痙攣しており、動くのではないかという若干の恐怖感の中、俺は死体に近づいて調査を開始した。


 青く艶やかな体は輝きを失っており、死んだことで黒緑色の濁った体色に変わっている。

 外皮の硬さは変わらずだが、改めて触ってみるととんでもない硬さを誇っているのが分かるな。


 剣で攻撃する隙を見い出せていたが、スキルが防御重視の状態で俺の攻撃が通っていたとは思えないし、攻撃せずに受けに徹したのは偶然ながらも良い判断だった。

 手首から肘にかけては盾のようになっていて、この部分だけ更に硬度が上がっているのが分かる。


 何かに使えそうだしこの部位は剥ぎ取るとして、魔力を溜めていた器官とかはないのだろうか。

 あの魔力量ならば、魔石でも埋まっていそうな感じもするが……外皮が硬すぎて体内を調べられないな。


 スキルを込めて思い切り斬れば、もしかしたら体内から何か出てくるかもしれないが、力加減が難しく全てを破壊してしまう可能性の方が高い。

 ゆっくりと時間をかけて調べる余裕があれば調べるのだが、この洞窟内にいる限りはゆっくりしていられない。

 

 胴体部分の剥ぎ取りは腕の盾のようなものだけに留め、次はスノーによって刎ねられた頭を確認する。

 生首は苦悶に満ちた見るに堪えないものだが、しっかりと直視して胴体同様に確認を行う。


 ……頭部分は特に気になる部分もなく、唯一気になるのは額から生えた剣のような角だけだな。

 利用できるか分からないが、魔力を通しやすそうな感じもしたし見るからに切れ味が凄そう。

 額ごとなんとか角を剥ぎ取り、こうしてヘラクベルグの調査を終了した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  ▼▼▼ 画像をクリックすると、コミックウォーカーに飛びます! ▼▼▼  
表紙絵
  ▲▲▲ 画像をクリックすると、コミックウォーカーに飛びます! ▲▲▲ 
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ